本日は、株式会社コンカー代表取締役社長 三村 真宗さん著作「みんなのフィードバック大全」を紹介します。
この本を紹介しようと思ったきっかけは、職場の改善という視点に立った時に、どうしても個人に焦点を当て、成長しないと、改善には繋がらないと私自身も考えていること。
また、一つの会社に勤めながら、どうやって一つの会社で働くことへのモチベーションを保ち続けるかという視点で、役に立つのではないかと感じたからです。
読んで改めて、コンカーという会社が「働きがいのある会社」女性ランキング、若手ランキングで1位になる理由が分かりました。
日々理想に向けてフィードバックが行われ、社員一人ひとりが成長している実感が生まれる。
この文化を受け入れることに、人によっては最初は強い抵抗感があると思いますが、定着すると、凄く良い企業文化になると感じました。
三村さんは、1969年まれ、日本法人の創業メンバーとしてSAPジャパンに入社。その後マッキンゼーに入社。現在株式会社コンカー代表取締役社長に就任とあります。現状Xでも日々発信しており、私はフォローしています。
三村真宗📘フィードバック大全 (@Masa_Mimura) / X (twitter.com)
第1章 フィードバックとは何か
第2章 ポジテイブフィードバックをマスターする
第3章 ギャップフィードバックをマスターする
第4章 コーチャビリテイを身につける
第5章 経営戦略としてのフィードバック
➀フィードバックは、時代の変化に対応する相互作用型学習
三村さんが在籍したマッキンゼーというコンサルテイングファーム。
この会社には、成長意欲の塊のような人物ばかりで、またお互い気づいたことを率直に言い合っており、個人主義ではなくお互いにかなり深いつながりを築こうとしていたし、フィードバック文化はその象徴だったそうです。
・ファームの使命は、クライアントの価値を最大化すること
・そのためには、個々のコンサルタントの成長が不可欠
・だからこそファームに属する全員がすべてのコンサルタントの成長にコミットする
と考えられていたように感じたそうです。
この考え方を三村さんは、コンカーに持込、「高め合う文化」を作ったそうです。
この「働きがいの源泉は、成長の実感にある」という信念があるそうで、社員同士が相互に影響し合い、刺激し合うことで成長を加速させるという考え方を組織文化として定着させようと考えているそうです。
また、終身雇用制が崩れつつある今、優秀な人材は、自分自身の成長に対する焦燥感と、より成長できる職場に転職したいという強い意欲を持っているそうです。
このような状況だからこそ、経営者として会社全体にフィードバック文化を根付かせることを目標とすべきだと三村さんは言います。
②フィードバックの5つの概念
三村さんが導入したコンカー流フィードバックにおける5つの基本的な考え方。
一つ目は、「後ろ向き・責める気持ち」ではなく、「建設的に・成長を願って」がフィードバックを実施する際のマインドとして絶対に不可欠であるということ。
フィードバックをするときに「相手の成長を願う気持ち」があるかどうか。
これがすべての大前提であり出発点だそうです。
二つ目の概念は、「ギャップフィードバック」と「ポジテイブフィードバック」二つを使うことだそうです。
特に相手の長所や強味を伝えたり、努力や成果を認めたりするフィードバック。
わかりやすくいえば、ほめることも相手の成長に繋がるそうで、これをポジテイブフィードバックと言っているそうです。
ギャップフィードバックのみならず、ポジテイブフィードバックもバランスよくできていること。
一般的に欧米人はこれがうまいそうです。
三つ目は、上司から部下だけでなく、全方向に、です。
上司から部下だけでなく、部下から上司、横方向に当たる同僚同士、さらに他部門の上司・同僚・後輩といった関係においても、積極的にフィードバックをするよう勧めているそうです。
尚、全方向のフィードバックを実践するうえでは心理的安全性がとても重要で、日常の言葉遣いも大切だと考え、三村さんは仕事中は誰に対しても敬語を使って話すようにしているそうです。
四つ目はフィードバックの受け止め方だそうです。
フィードバックをしずらいのは、「相手が気を悪くしたり反発したりするのではないか」という相手側の反応に不安を感じる人の方がはるかに多いことが分かったそうで、受け手側のスキル、耳の痛い話を受け止める心構えを高める必要があると考えたそうです。
この受け手側の能力をコーチャビリテイとコンカーではいうそうです。
五つ目は、組織的な取り組みとして、経営戦略、組織文化として取り組む姿勢だそうで、社員個々人の自主性のみに頼るのではなく、経営者やリーダーによるトップダウンの取組も重要だそうです。
③ポジティブフィードバックの効用と効果
ポジティブフィードバックをすることによって「好ましい行動の強化」そして、「好ましい行動への転換」が挙げられるそうです。
例えば、仕事の期限が超過する傾向にある同僚が期日通りに仕上げた際に、ポジティブフィードバックをすることで、ギャップフィードバックと同様の効果が得られます。
更にお互いの良い関係の構築にも繋がります。
また、このフィードバックの目的は、
1.相手に長所や強みをもっと伸ばしてほしい、
2.もっと努力し続けてほしい、
3.もっと自信を深めてほしい
という気持ちから行うという考え方だそうです。
尚、リアルタイムに、こまめにすることが大切で、仕事が発生するあらゆる機会を活かして、相手の「ほめどころ」をポジティブフィードバックする習慣をつけることで、こまめにフィードバックしてくれる人として感謝され、経緯を持たれることにさえつながるそうです。
また、フィードバックする対象は、上司にでも誰でもすればよいし、口頭、メール、文章、他人の前でもポジティブフィードバックであれば、問題ないそうです。
更に、何故よかったかも付け加えることで、相手が自分でも意識していなかったような本質に辿り着ける可能性もあります。
また、フィードバックをした際に、次のゴールを与えると更に伸びる可能性があるそうです。
④ギャップフィードバックには「軽め」と「重め」がある
相手の課題や弱点を伝えるギャップフィールドバック。これには、「気づきのギャップフィールドバック」「改善要求のギャップフィールドバック」に分け、気づきの場合は、相手の要改善点に気が付いたらタイムリーかつ頻繁に行い、気軽に実施するものだそうです。
一方、改善要求の場合は、見過ごすことのできない重大な問題や課題を本人に伝え、改善を求めるフィードバックをいいます。
このフィードバックを行うにあたり、松本さんは6つのRight(適切さ)を満たす必要があると言います。
一つは、➀適切な機会に行うことだそうで、大きな出来事の直後に心がオープンになる、そのようなタイミングで相手の頑張りを認め、ポジティブフィードバックと共にギャップフィードバックも実行すること、
次に②適切な環境でということで、口頭なのかメールなのか、1対1なのか他者がいる前なのかを意識すること、
また、③適切なトーンで、つまり温かいトーンで、敬意を払いつつ伝えること、
更に④適切な雰囲気で、つまり普段からポジティブフィードバックを積極的に行っておくことで、いざというと時に問題点を伝えられるように心の距離感を縮めておくことだそうです。
次に、⑤適切な関係性で。伝え手・受け手双方の関係性に左右されることから、日ごろから信頼し尊敬しあえる関係性を築いておくことが大切だそうです。
最後に⑥適切な動機で行うこと。
相手を追い込んだりやっつけたりしようとするのではなく、心から成長を願う適切なモチベーションで実践することで、このフィードバックが初めて活きるそうです。
⑤「ソラ・アメ・カサ」のフレームワークの活用
「ソラ・アメ・カサ」のフレームワークは、松本さんがマッキンゼーに在籍していた当時に習った思考のフレームワークだそうです。
ソラは事実や事象。空を見上げると雨雲が多い。
これが事実であり事象だそうです。
アメは、課題や問題。
空に雨雲が多いという事実から推察して雨が降るかもしれないという風に課題を特定すること、更にカサは改善案や打ち手をいいます。
雨が降るかもしれないという問題があるので、雨に濡れないように傘を持って出かけるという打ち手に繋がります。
松本さんは、世の中には、課題が特定されていないのに、打ち手をソリューションと称して提案したがるコンサルタントや企業が存在していると感じているそうです。
このギャップフィールドバックを伝える際にも、伝え手と受け手で「ソラ」と「アメ」が合意していないのに、伝え手がいきなりこう直すべきだと結論づけても、受け手は戸惑うばかりだそうです。
従って、既に表面化している問題となる表層課題を事実やデータ、悪い影響を共有すること。
次にアメのステップで表層課題を起こしている根本的な原因は何なのかを特定すること。
これが深層課題となります。
このソラとアメの過程を丁寧に相手と共有することで、初めて「カサ」の部分、どのような打ち手を取るか議論することになります。
ソラの部分は以下を意識するそうです。
➀事実をベースに、
②具体的に、
③偏った主観や負の感情を拝して,
④他人の意見ではなく自分に県や感じ方を伝えること
⑤人と課題を切り分ける、
⑦決めつけない、
⑧事実誤認や対話拒絶なら中断する、
また、「アメ」の部分では、以下のステップを考えるそうです。
➀深層課題を掘り下げる、
②なぜを繰り返してみる、
③質問しながら思考を手伝う、
④じっくりと言い分を聞く、
⑤共感を示す、
更に「カサ」の部分では、
➀改善案を自分で考えてもらう、
②沈黙しても辛抱強く待つ、
③傾聴する、
④受けてが改善案を求めるのを待ってから助言する、
⑤求めが無ければ、改善案が必要か確認してから助言する、
⑥求めが無ければ改善案が必要か確認してから助言する、
⑦今後のアクションを合意する、
⑧改善後のイメージを想像してもらう、
⑨幾つも指摘しない等あるそうです。
兎に角詳細まで具体策が書かれているので、実際に活用したい方は是非本をお読みください。
⑥フィードバックの受け手としての能力、コーチャビリテイ
フィードバックをするのに大切なことは、実は受け手のコーチャビリテイ、つまり他者からの助言をちゃんと聞き入れる能力のことだそうです。
平たくいうと他者からの助言を、スポンジの世に素直に受け止めて事故の栄養分にし、早いペースで成長し、髙成果を上げる人だそうです。実はフィードバックには、
Aすんなり心にはいってくるもの(20%)
B多少なりとも抵抗をかんじるもの(70%)、
C事実や信条に反していて受け入れがたいもの(10%)と3つに分かれるそうですが、
このAとB、特にBの耳が痛いものを聞き入れられるかがポイントだそうです。
このコーチャビリテイが高いか否かは、成長したいという意欲と逃げたいという気持ち(忌避)のどちらが上回っているかだそうで、忌避の理由(傲慢と怠惰)、その対処法についても、本書で詳しく記載しています。
⑦経営戦略としてのフィードバック
コンカーでは、5年後の会社のあるべき姿として2つの大きな目標を掲げているそうです。
・全世界のコンカーの中で米国法人に次ぐナンバー2の事業規模になる
・国内IT企業で最も働きがいのある企業になる
その戦略として、
(外部からの有能な人材の獲得+内部からの有能な人材の流出抑止)×人材ポテンシャルの最大化=ヒトによる競争力の最大化
と定義しているそうです。
この戦略を遂行する上でのカギとなるのが、「働きがい」だそうです。
尚、コンカージャパンの業績はフィードバック文化を取り入れてから、上がっていったそうですが、松本さんの感覚として、「働きがいを高めることに愚直に取り組み続けた。その結果が業績の成長に通ながった」そうです。
尚、働きやすさとやりがいの二つを両立してこそ、働きがいに繋がるそうで、
➀経営者としてフィードバックを組織文化にすることを決意し、社員に宣言して具体的な活動を始めた上で、
②研修によりフィードアックのあるべき姿合わせ、
③フィードバックの実施状況を定期的に可視化、
④実践をたたえ、
⑤採用基準に価値観の重視、コーチャビリテイの観点に重きを置いて評価、
⑥フィードバックを恐れない組織風土を作る
という進め方だそうです。
更に社内の声を幅広く吸い上げるコントストラクティブフィードバック制度により、定期的に言う仕組みを作り、
➀会社へ、②他部門へ、③上司へ強みと課題、打ち手の案を伝えるそうです。
このコンストラクテイブフィードバックは、部門別に可視化され、また会社に対しては、経営陣で合宿を開催して議論。
その結果をオフサイトミーテイングで全社員に向けて発表。
また、他部門に対するフィードバックは各部門が改善策を考え、各部門の本部長から全体会議で対策を発表。
上司に対しては、上司の上司に当たる本部長が引き取ってから本人に伝えるという運用だそうです。
また、部門間連携調査(他部門との連携のしやすさ)、相棒調査(他部門で共同している社員の評価)、感謝の手紙、その他対話篇などの制度もあるそうです。
⑧自分の所感-お互い高め合う文化の醸成は素晴らしい
三村さんのこの本、凄くいいですね。
会社の強みをオープンにしていくことってなかなか勇気がいることだと思いますが、書籍化して、世の中に出していることが素晴らしいと思います。
得てして人は、自分の業績を上げたり、また組織単位でしか考えられないものですが、会社全体、そして個人に焦点を当てて改善し、働きがいを作っていく仕組み作りは、是非私の会社でも対応してみたいと感じました。
詳細は、この本に沢山書いてありますので、自分の会社の社員お互いを高め合いたい、働きがいのある会社にしたい方は、是非本を読んで頂ければと思います。