「企画「いい企画」なんて存在しない」を読んで-エンタメの世界を知ろう

本日は、以前このコラムで紹介した「スキル」スキル | すがわら あつし (ironman1977.com)の作者 高瀬 敦也さんの「企画「いい企画」なんて存在しない」を紹介します。

実は、スキルという本を読み、明らかに別の業界で、自分とは全く違った発想をお持ちだと感じ、スキルで紹介のあったオンラインサロンに入ってみたところ、早速高瀬さんとの1On1が実現しました。

前回のスキル以上に、高瀬さんの本業に近い、「企画」。

「いい企画」なんて存在しないってどういうこと?と本を読む前からわくわくしながら、読み始めました。

目次

序章 企画とは何か

第1章 生まれる企画

第2章 人と企画

第3章 伝わる企画

第4章 進む企画

第5章 企画を受け取る

第6章 企画力の正体

①企画とは決めること

企画とは、天から与えられた感性でセンスのあるアイデアを思いつくこと、企画業は良いアイデアを思いつくことが仕事。

この考えは誤解だそうで、現代のように誰もが簡単に発信できる時代ではなく、企画するという行為が、マスコミなど特定の業種、職種についている人だけが行うものだと認識されていたが故、企画はアイデアが全てという誤解が生じたのではないかと高瀬さんは感じているそうです。

一方、現代は、企画を発信する場所も、企画する人も増えて競争が激しくなっており、インターネットを中心に誰もが企画を発信することができるようになった。

考えたことはどんどん実行し、その中で「小さくても成果を出した人が生き残っていく」という構図であることから、「私はアイデアしか出しません」という姿勢でいると、生き残りが難しくなってしまうそうです。

また、いい企画が思いつかないと悩む人が多いそうですが、「当たる確率」と「バズるエネルギー」にはトレードオフの関係にあること。

「バズる」という現象は、企画の尖った部分が「人の狭くて深い感情にブッスリとハマることによって生まれるもの」。

一方、当たる確率を高めようとする行為は、企画の尖った部分を丸くして、より多くの人に嫌われなくすることだそうです。

更に言うと、企画は実際に世に出してみるまで、当たるかどうかは分からない。

つまり当たる企画を生むには「いい企画ができない」と思い悩むのではなく、ひとつでも多く企画を世の中に出すことが大事なのだそうです。

②「企画」とは人生そのもの

例えば、明日は何もせずダラダラする日と決めれば、それも企画。

どこにランチに行くのかや職業や生き方の選択も企画。

「何となく仕事をしている」という人は、一度、仕事についてのスタンスを「決めてみる」。

例えば「面倒くさい上司を我慢しながらでも、自分はサラリーマンとして生きていくんだ」と決めれば、同じように愚痴をいう瞬間もサラリーマンっぽいと少しだけ楽しくなるそうです。

つまり、たとえ同じ状況でも「自分で決めたかどうか」「企画したかどうか」によって、幸福度は大きく変わるそうです。

尚、高瀬さんは、これからの時代は「決める」という行為が価値を持つようになる。

AIが面倒な部分を次々に解決してくれる中、決めるのは人間であること。

企画もあらゆることをビッグデータつぃてAIがいくらでもつくることができるようになる中、企画の価値が当たる確率如何に関わらず「人間が決めた」という事実から生じることになると予測しています。

日常のあらゆる選択をすべて「責任を持って決める」こと、そのこと自体に価値が生まれるそうです。

尚、身近な行動や予定を「自分の企画の実現だ」と感じることが大切であるとともに、仕事として企画を行う場合、マネタイズとセットで考える癖をつけることが大切だと言います。

マネタイズのメリットの一つは、起業や組織の力、お金を使ってやりたいことを効率的に実現させ、スケールできること。

二つ目にマネタイズできないと「続かない」こと。

③「企画」と「コンテンツ」と「メデイア」の関係

この世のすべてのものがコンテンツになるが、人々がこれはコンテンツであると認識されなければコンテンツにならない。

反対に言えばこれをコンテンツ化しようという意図そのものが企画と言える。

例えば石ころに「足裏健康くん」という名前をつけるとコンテンツになるが、そもそも石ころもコンテンツだと石ころに名前を付けようとするプロセス自体が企画によるもの。

更にメデイアは、意図をもってコンテンツを発信し続けた結果として出来上がるものとして考え、いくつものコンテンツを発信してそれがメデイアと認識されるまでが企画という場合もあるそうです。

④インプットしまくるだけで一流の企画者に

一般的にインプットというと、新聞を読んだり、映画を見たり、既に編集されたコンテンツを摂取することだというイメージがあるかもしれませんが、高瀬さんは人と雑談したり、知らない街を歩いたり、新しい発見につながるものは、すべてインプットに内包されるそうです。

「いい企画を考えるにはどうしたよいか」と問われた時には「とりあえず当たっている作品には目を通しておいた方が良い」とお勧めするそうです。

尚、インプットしておきたい情報が世の中に大量にある中、効率的にインプットするには、「他人の思考を借りる」ことだそうです。

世の中に1000個のコンテンツがあったとして、他の人のフィルタを通ってきたほんの10個のコンテンツだけであればチェックできる。

人は「自分が興味がある情報」や「好きなものについての情報」に関しては、敏感なアンテナを張ることができるが、興味のない情報に関しては、幾らインプットしてもなかなか頭に入ってこない。

仕事として企画業をしていくうえで、多様なジャンルの情報を「ラクに」収集していくことは、とても重要なテクニックで、「最近しゃべってないな」と感じる相手であれば、自分にとって新しい情報を持っている確率が高いため、お互い新鮮な会話となりやすいし、有意義な時間になる

また、マスメデイアや影響力のあるネットメデイアの一部は半歩遅れの情報を提供するそうで、レイトマジョリテイが主たる顧客であることから、自分が興味がなかった分野の情報は基本的に遅れて届く仕組みとなっている。

このように現場でないと感じられない情報は価値が高いことが多いそうです。

更に自分が情報ターミナルになることで、自分のところに「感情がマージされた情報が集っている状態」は企画者にとって優位になるそうです。

この情報ターミナルになるためには、まずは情報の発信者となることで、情報が発信されているところに集ってくる性質があるそうです。

情報発信というと硬く聞こえるかもしれませんが、「私は今これに興味がありますよ」「私が好きなのはこれですよ」と自分の心の現在地を発信することで、情報が自然と集まってくる状態を作っておけば、集った情報を元に、また新たな企画にすることができるそうです。

さらに企画者として高みを目指すとき「ほかの人が知らないレアな情報」や「社会的価値の高い情報」が集る状態になっていたい。

このような情報感度の高い人は、みんな「時間」への意識が高く、「相手の時間を無駄にさせたくない」という礼儀のようなものがあるそうです。

⑤「量が質を生む」もう一つの意味

尚、企画は100本つくったうち、1本通ればいいくらいのものだそうです。

また、量が質を生むとはよく言ったもので、本来は質を高めるには量をこなす必要があるという意味の格言ですが、近年の民主化されたコンテンツシーンにおいては、コンテンツに量があれば質を感じる人とマッチングできるとも解釈できるそうです。

企画実現の機会を待つのではなく、まずくても良いのでどんどん世に出していく。

それは必ず実績となり、自分がやりたい企画を実現させるチャンスが広がっていくはずだそうです。

⑥企画の要は「人起点で結びつける」こと

企画は何かと何かの結び付けによって生まれるものが多くありますが、「人起点で結びつける」という視点は、一見結びつかないもの、自分が興味が湧かないテーマの企画でも「自分が好きな人で、かつそのテーマに興味がある人」に相談することで、企画になるそうです。

また、企画を考える上で、人はゴシップ好きであること、嫉妬に敏感であること、損をしたくない生き物であること。

そして近年のトレンドとして「孤独」と「デフレ」があること。

孤独には、社会の個人化による影響やSNSによる虚像の可視化など、様々な社会背景があること。

またデフレについては、良いものには価値があり、相応に高いという当たり前がまかり通らない空気があること。

頑張っても報われないという感覚を感じやすくなるのはデフレの揺らぎの中で感じやすくなることから来るそうです。

そんな波に揺らぐ現代の生活者に必要な、本質的なメッセージは「希望」

「未来はきっとよくなる」「あなたの将来は明るいんだ」と感じさせることが「企画者である自分自身のお腹のそこに持っておくべき大義だ」と高瀬さんは考えているそうです。

⑦伝わる企画

すでに知られている、いわばフリが効いているものというのは、「人々の感情が既に結びついているもの」だと言える。

そこに少しのギャップを与えることで人の感情を大きく揺さぶることができる。

今の時代は小さなコミュニテイ同士が互いに発見し、仲間を見つけやすくなったため、「みんなが知っている」ことに必要性がなくなる。

このような「みんなが知っている」ことが少なくなることから、それが貴重となり価値が上がっていく

企画を考えるうえでも「みんなが知っている」ということは上手く利用することをお勧めしています。

例えば、場所の名前から土地にまつわる感情を自然と想起したりもあります。

一方、自分をペルソナにして「自分はこれさえあれば生きていける」「それだったら絶対お金を使っちゃう」といったことを掘り起こすことで「ニッチな趣向の人に伝わる生活者目線の考え方」として利用できるようです。

その他、メデイアに取り上げさせることを目的にしたプロモーション企画を考える時は「画になるかどうか」を意識すること。

他にも企画と親和性のある世界観を持ち込むこと(例えば新入社員相手に先輩社員が会社のことを教える研修があった場合に小学校の教室でと加えると、イメージが湧くなど)。

もしくは企画とは無関係な世界観の土台に築く(例えばラーメン特集を「宇宙船で太陽系を旅するという世界観で表現する、宇宙人が最もハマった地球の食べ物はラーメンという謎エピソードを持ち込む)ことで、とりあえず特徴のある企画となったりします。

更に、ダジャレを使う、パワーワード(肉、回転すし、カニ、巨大、若返り、桜、黒、最新、美女、イケメン、ダイエット、北海道、沖縄、ハワイなど)といった理由なく人が興味を持つワードだそうです。

また、最強のパワーワードは、「今」だそうで、「なぜ今なのか」を説明できるようにしておくことが大切だそうです。

昔当たった企画を分解して「主体となる人」「主体となるもの」を今に置き換えると、当たる可能性が高いようです。

尚、高瀬さんが瞬発的に企画の回答を求められる際、「人が理屈抜きで興味を抱く普遍的な要素」、それが「お金、食、性(モテ)、ナショナリズム」だそうです。

⑧企画は「世に出すこと」で価値が出る

企画は世に出してこそ価値がある。

何かを企画し、責任を持って世に出し、「自分が企画しました」と自信を持って言える人は意外なほどに少ない。

企画というフィールドにおいて、飲み会を企画し実行した人と飲み会に参加し盛り上げた人。

どちらが価値が高いかといえば、飲み会を企画し実行した人だそうです。

企画を世に出すことと企画を実現することは分けて考えているそうで、長く続けて10年後に確固たる地位を築くイベントにすることが目的なら、毎年の風物詩として定着させていくことが企画となる。

どこまでが企画の実現なのかを企画者と発注者で共有することが大事だそうです。

企画を実現するためには、まずは世に出さなければならない。

自分ひとりで世に出せる企画は、すぐに世に出し、反応があってから次のことを考えたほうが結果的に当たる可能性が上がるそうです。

まず「こういう風に企画をやりたいなあ」とまだ何も決まっていない段階から、半分雑談、半分プレゼンの気分で色々な人のリアクションを探っていく。

「おもしろいね」と言ってくれる人がいたら、次は「企画に巻き込む人」を決めていく。

協力してくれる仲間を見つけ「いざ具体的に企画内容を決めていこう」という段階に入ったら、まずブレストの予定を2人ですることをお勧めするそうです。

尚、企画に人を巻き込むうえで、いちばん大切なことは「相手の頭に企画の映像を浮かばせる」ことだそうです。

何よりもまず、「自分の考えていることは、思っている以上に伝わらない」そうです。

相手に企画の映像を浮かばせるのに役に立つのが、企画書で、自分がその場にいなくても、自分の企画を誰が代弁したとしても、自分のイメージを正しく伝えてくれる「共通言語」だそうです。

⑨最後に―企画力を法人営業に喩えると

高瀬さんの企画力を分解すると、「インプット力」、「結びつけ力」、「多産力」、「巻き込み力」、「やり切り力」の5つの分解できるとあり、その解説がずっとされてきました。

企画力という観点では、自分がこれまでやってきたこととは縁遠いと感じながらも、自分が仕事にしているプロジェクトを受注するまでの法人営業の工程で考えると、何となく当てはめやすい気がします。

まずは大量に情報をインプットする。

人の情報を元に効率的に収集することから始まり、誰かの相談事項、現地に足を運んだ時の空気感を知ることで、尖った情報をインプットすることは大事な営業情報の取得になること。

そして人を中心として結びつけることを意識すると、プロジェクトの成案化がより具体化する。

これも、私が携わるインフラの事業でもその通りで、どの機能、人を組み合わせることで、プロジェクトが推進するかが変わってきます。

更に、高瀬さんの場合は、そのゴール作りから始める中で、人から見出すということをしているのだと感じました。

多産力は、一案件を追いかけるのではなく複数案件、複数国で狙っていくことで、成案化の確率を上げる。

巻き込み力は、社内も社外も上から下まで情報を提供することで、社内外を巻き込んでいく。

成案化させるためには、先回りする力も含め、何が起きても、どんな方法でも、とにかく企画というボールを実現というゴールまで無理やりにでも運んでいく力。

生み出すものは、全然違うにせよ、何となく企画を作るという行為がどういうものか理解できました。

私がこの本でもう一つ気になったのは以下の記述です。

高瀬さんが「逃走中」というテレビ番組を企画した経歴は過去の実績でしかない。

むしろ、いろいろなテレビ番組を企画した後、会社を複数経営し、Youtubeチャンネルもやるし、SNSを使ったプロモーション企画もするアプリやWebのサービスも作って運営している。

漫画や絵本の原作を書いたり、Tシャツブランドやオーダーメイド家具事業をやっていたり、日本酒のプロデユースもしている。

つまり、独立後の実績の方が、「何でもできる」という実績になり、「他には何が出来そうか」という期待を他人から受けられる。

手掛けた企画の幅の広さを示すことによって、「これまでの企画と分野は違うけれど、この人ならうちの会社の企画もできそう」という印象を与えることができるそうです。

何をしてきたか(何ができそうか)の方が社会的価値が高くなった背景には、1か所にいると情報量が減るため、世の中と乖離していく。

何をやったか、何ができそうかの違いは、変化に順応できるかどうかの違いだそうです。

この何でも体験し、出来るようになる感覚が今一番求められていると感じました。

特にエンタメ業界にいらっしゃる方は、様々なヒット商品を生んだ高瀬さんのノウハウが詰まった本だと思いますので、是非読んでみてください。