「定年ひとり起業」を読んで

本日は大杉 潤さん著作「定年ひとり起業」を紹介します。

元々大杉さんの「定年ひとり起業」3部作のうち、生き方編から読み始めましたが、この方のアプローチの仕方が他者の考え方も沢山紹介しながら、意見を述べている点が、斬新だと感じました。

そこから、マネー編、そして本書と読み進める中で、著者の考え方を強く反映しているのが本書であることに気づき、再度書評を書くことにしました。

(途中出版社の方が私の書評に関するツイートに興味を抱いて頂いたのもきっかけとしてありますw。)

大杉さんは、日本興業銀行に22年間勤めた後、新銀行東京創立のために転職、その後も2度転職されたとありますが、在職期間中の会社からの評価に対しては納得が行っていなかったそうです。

そこで、57歳の時に独立、その後8年以上経ち、フリーランスとして継続出来ている生活術、マネープラン、そして例によって独立自営を果たした人、その著書などを紹介しています。

目次

序章70歳まで働く時代がやってきた!

第1章「定年ひとり起業」とは?

第2章定年再雇用のワナ

第3章「定年ひとり起業」のマネープラン

第4章全公開!大杉潤「定年ひとり起業」への道

第5章「定年ひとり起業」ケーススタデイ

第6章「定年ひとり起業」という選択

第7章アフターコロナは「幸福学」で働く

➀70歳、そして75歳年金受給開始年齢引き上げの想定

まず著者は、2020年70歳就業確保法が成立した翌月に年金制度改正法が成立し、老齢年金の「受給開始時期の選択肢」が拡大されたこと、つまり65歳を基本としながら、60-75歳の間で選択できる制度に拡大変更されたことを指摘しています。

この背景を著者は「年金受給開始年齢が70歳からに引き上げられる布石」と予測しているそうです。

更に著者の予測では、人口構成の歪みから考えても1985年以降に生まれた人は、過去の引き上げ時期から計算すると年金受給開始が75歳になるのではないかと想定しています。

この70歳、若しくは75歳以上働き続ける必要があることを意識すると、定年再雇用によって同じ会社で働き続けることがベストなのか

それ以外に「定年ひとり起業」という選択肢があることを一つ目のポイントとして挙げています。

②「定年ひとり起業」とは

定年ひとり起業の特徴は以下5つ挙げられるそうです。

1.会社員(または公務員)として働いた経験を長く持った上で50代または60代というタイミングで独立起業する

2.個人事業主として開業するか、ファミリーカンパニーを設立して独立し、原則として自分ひとりで事業を行う

3.自宅を事務所にするなど初期投資を最小限に抑え、借金もしない、家族以外の従業員を雇わないという低リスクの事業形態とする

4.厚生年金を確保した上で、年金プラスアルファの収入(月5から10万円程度)を目指す規模の事業からスタートし、好きなことを仕事にしてストレスなく働く

5.会社員時代の経験・知識・スキル・人脈をフル活用し、足りないリソースは外部に業務委託する形で規模を拡大せずに「長く働くこと」を最優先に事業を運営する

1については、大企業の中でも経営幹部になれるか否かも見えてくる中、50代から人生後半の戦略を練った方が良いと著者は言います。

そして大切なのは、会社を離れても個人の力で会社に貢献できるようなスキルを磨いたり、会社にとって必要な業務やリソースを考え抜いたりすることを真剣に意識的に行う。

その結果、会社にぶら下がってなんとなく定年までを過ごすというマインドを一新できるといいます。

2の原則として、「ひとりで事業を行う」ことがとても大切だそうです。

経営責任は一人で担わなければ、失敗しても成功しても事業はうまくいかないそうです。

3の原則として、とにかくリスクを取らない

事務所は自宅の一角、人件費も人を雇う規模まで事業を拡大しないことが大事だと言います。

4の原則として、目指す収入を月5~10万円程度にして小さくスタートし、年金+αとして収入を得ることで、ゆとりある老後生活が送れるそうです。

5の原則は、以上1から4の原則を総括するもので、「長く働き続ける」ことを最優先させること

この5原則を満たすうえで、長く続けるためには、

1.「極端に言えば、お金を払ってでもやりたい仕事であるかどうか

若しくは

2.「会社の中では当たり前だったこと、業界の中では常識だったことをまったく違う業界やジャンルの人たちに教えたり、伝えたりする仕事を創り出す」とうまく行くケースが多いそうです。

但し、その為にも、

1.低コストの販促手段であるインターネットによる「専門家としての情報発信」

2.世の中のニーズに合った経験・知識・スキルのブラッシュアップ

をすることが大事であると指摘しています。

尚、ある程度の退職金と厚生年金の確保が出来、一方60代に比べてより体力・気力が充実してて試行錯誤に耐えられる50代が良いのではとアドバイスしています。

③マネープランは「人生プラン」

「そもそも自分はそんなに長く働きたくない」と考える人も多いでしょうが、「定年ひとり起業」によって、老後資金の不安がなくなるマネープランを立てることが出来る、この立て方を説明しています。

そのためには

1.何歳まで働くのか

2.何歳から年金を受け取るのか

3.どんなライフスタイルを送るのか

一般的なサラリーマンだと、退職後は年金生活となり収入が低位フラットになりますが、「定年ひとり起業」の提案は、雇われる働き方ではなく、自ら仕事を作って稼ぎ続けることにより、現役レベルのフロー収入をできるだけ長く獲得し、維持し続けようということだそうです。

この毎月の収入を生活費を払っても余剰が出て、積み立て投資ができるくらい稼ぎ続け、その状態を長く続けることが理想的だそうです。

上記が可能になれば、何歳から年金を受け取るのかについて、繰り下げ需給により年金額をアップさせるという選択肢が可能になるそうです。

ちなみに、筆者は現在フリーランスとして個人事業で仕事をしているため、厚生年金には加入していないことから、再雇用されている方とは異なり、幾ら稼いでも厚生年金は一切カットされず支給されるそうです。

また、基礎年金については、75歳まで繰り下げ需給を選択すると、通常の184%相当増額され、受け取れるため、特に長生きする可能性の高い奥様の基礎年金の繰り下げ、自分自身の繰り下げも実行しているそうです。

また、お金の運用という面では、つみたてNISAを活用して、インデックス投資を行い、「お金を寝かせて増やす」、特に日本が人口が減少し、経済成長も難しくなると予測し、外貨建てのインデックス投信による国際分散投資が重要だと考えているそうです。

この定年ひとり起業の最大のメリットとしては、最初からフリーだった事業家に比べて、会社員として積み立てた有利な厚生年金を貰いながら、終盤で国民年金にシフトして更なる年金の増額を狙い、且つ定年のない働き方をして何歳まで働くかを自ら決めることができる点だそうです。

④「定年ひとり起業」というライフスタイル

大杉さんは、現在

1.企業研修の講師、

2.中小企業の経営コンサルテイング、

3.個人コンサルテイング(キャリア、ブランでイング)、

4.テレビ、ラジオ、Webメデイアでの情報発信、

5.ビジネス書の執筆・出版

を軸に稼いでいるそうです。

特に企業研修の講師を事業のメインに据えてから、安定した売上、利益が出るようになったそうです。

主なメリットは、

1.好きな仕事ができる。

2.働く時間や場所の自由度が大きい。

3.経費の範囲が広く、節税の手段も多い為、手取り収入を増やしやすい。

ことだそうです。

特に仕事内容、働く場所や時間、今後の事業計画などすべてを自分で決めているという感覚「自己決定感」が仕事は楽しいものと心の底から思えるようになったそうです。

また、大杉さん始めシニアの方々で生き生き仕事をされている方は、

1.ミッション(なぜ存在するのか)、

2.ビジョン(何を実現するのか)、

3.戦略(どのように実現するのか)

を個人で作り、ライフワークを持って活動しているそうです。

⑤私の所感

本書を読んで、大杉さんがサラリーマン時代に相当苦労されたという雰囲気が伝わってきます。

2002年には、メガバンク合併があり、最初に入社した超一流の邦銀を退社。

そこから転職を何度か繰り返し、結論として、フリーランスという立場と、年金受給の組み合わせで人生の後半、好きなことを仕事に出来ている実感が伝わってきます。

従って、お金に関する計画の立て方など戦略が細かく実践的だと感じます。

また、大杉さんの特徴は、ビジネス書を1万冊以上読んできて、更にそれをアウトプットに活用しているということ。

この才能が花開き、世の中のニーズに合ったと本書を読んで理解できると共に、私自身も真似できるのではないかと感じました。

サラリーマンで長年会社に勤めている人は、是非こちらの本も読んでみることをお勧めします。