「高収益企業の”池クジラ”戦略」を読んで

本日は、強くて愛される会社研究所代表理事 西浦道明さん著作、ビジネス社出版「高収益企業の”池クジラ”戦略」を紹介します。

コンサルテイングファーム アタックスグループには、「強くて愛される会社研究所」というものがあり、長年にわたりベンチマーク企業に対する調査研究活動を通して「会社の業績と社員の働きがいを両立させ、かつ、有事に動じない会社」の共通点・法則を発見しているそうです。

この本では、21社の事例を通じて縮小する経済・業界にあっても、池クジラ戦略に取り組み、長期安定利益を獲得し続けている会社を紹介しています。

尚、池クジラとは、大企業と棲み分け、特定市場(池)で獲得する、圧倒的なナンバーワンやオンリーワンのポジション(クジラ)のことだそうで、「池クジラ」戦略とは、その池で圧倒的なポジションを築き上げた結果、同業他社と価格競争する必要がなくなる経営戦略のことだそうです。

更に、ビジネスモデルだけでなく、「強い社員力」そのためには、経営者が、人を大切にする魂を持っている「理念経営」で実現しているそうです。

理念経営では、一人ひとりの社員が、誰かの指図にしたがって動くのではなく、自分の頭で考えて判断して行動するそうです。

目次

第一章 縮小経済でも伸びる「強くて愛される会社」代表事例‐五社の経営

第二章 強くて愛される会社へ‐”池クジラ”戦略で、なぜ「人を大切にする経営」をも実現できるのか

第三章 どうすれば”池クジラ”戦略で、業績アップを実現できるか(ノウハウ、仕組みづくり)

第四章 愛される会社の「社員力の強さ(働きがい)」を磨き上げる方法

第五章 戦略は強いリーダーシップによって成功する

①縮小経済でも伸びる「強くて愛される会社」代表事例‐五社の経営

代表的な池クジラ企業、一社目は東海バネ工業という大阪府にある金属ばね設計・製造・販売を行う会社です。

この会社は最適な設計・最適な品質の単品生産で、従業員86名の規模ながら、明石海峡大橋の土台を支えるばねや東京スカイツリーの揺れを抑制するための精神用ばね等に使われているそうです。

ちなみに、バネ業界は国内では3000社存在し、市場規模は3500億円。

そのうち85%は自動車、家電、情報通信業向けの大量生産。

残り15%が熟練作業者に依存する多品種少量生産の小規模ばねメーカーという構図だそうです。

大量生産の市場は激しい価格競争化にあり、多くのばねメーカーがコスト削減の名のもとに際限ないコストダウン要求が行われ、疲弊しているそうです。

一方、東海バネ工業では、

「先発メーカーがやらない、やろうとしない”特定市場”にターゲットを当て、単品で、手間がかかり、高精度が要求される特殊ばねをメイン」とし、

「こんなばねを作ってほしいという、顧客の声にとことん対応する」

ことだったそうです。

具体的には、やらないと決めたのは、①価格競争しない、②微量より多い注文を受けない、③納期を守れない注文は受けない、④工作機械に依存しないの四つです。

そのため「単品バネでお困りの方のお役に立つ」というミッションを掲げ、平均受注ロット5個という多品種超微量、完全受注生産体制を整えているそうです。

そのために「在庫」「職人」「納期」の三つのことに徹底してこだわる。

在庫は、種類豊富なばね材料が、常時約2000種類、500t社内に保有していること。

それは同社の受注件数が年間二万五千~三万件あり、大部分が完全受注生産で、いつ注文が入るか分からない。

注文は不定期で、三年ぶり、五年ぶりが日常、長いもので三十年ぶりの注文という事例もあるそうです。

この不定期な注文にしっかり対応するため、十分な在庫を確保しているんだそうです。職人については、多品種微量は手作りが中心。

手作りを実現させるために取り入れているのが、職人の育成とIT技術の活用。

同社には、設計図面に従った適正な許容応力を持つ高品質ばねを製作する資格を認定する「金ばね製造技能士」の資格保持者が数多くおり、日本一難易度が高いと自負する社愛資格制度も構築し、更に工場内に若手に対する技術継承の場も完成。

更に職人技の機械化にも取り組んでいるそうです。

「いいものを安く、より早く」という昭和の高度成長時代の少品種大量生産時代の経営思考から、「いいものを適正価格で」

つまり「商品・サービスの量を表す売り上げではなく、社員が苦労して生み出してくれた、商品・サービスの質ともいうべき「価値」を顧客から正当に評価していただく」というビジネスの考え方に切り替える必要がある。

東海バネの場合、引き受け可能な納期どおりに、要望通りの品物が完璧に仕上がって届けられることが、本当の顧客満足という考え方に立っているそうです。

このような手間暇がかかり、非効率すぎて、同業他社がやろうとは思わないことを、徹底的に突き詰めてきたことで、同社は結果として、競争を避けるビジネスモデルを確立できたのだそうです。

次の会社は、徳武産業、この会社は高齢者シューズの製造・販売を行う会社だそうです。

もともと香川県に10社程度あった手袋やスリッパをつくっている仲間を集め、同社だけでも1か月10万足、地域全体では60-70万足の学童用シューズの縫製を担うまでの一大縫製団地を作り上げたそうです。

その後、大手通販会社からルームシューズのOEMを請負、旅行用スリッパ、ルームシューズ、旅行用ポーチなどを作っていきますが、通販会社の方針が変わり、売り上げが大きく下落。

そこから、①下請けをしない、②どんな難しい要望にもノーと言わない、③特許を取らないという3つを決めたそうです。

一つ目の下請けをしないために取り組んだことが、高齢者用ケアシューズの開発。

ある老人介護施設を運営する友人から「お年寄りがとにかく転倒する」ことで相談があり、二年に渡り、500人もの高齢者にモニタリング調査したり、友人の施設経営者にニーズ調査を依頼。

その結果、転倒などの悩みを抱えている高齢者は、腫れた足のサイズに合わせて大きめの靴を買い、腫れていない片方の靴のつま先には、詰め物をしたりして、無理に靴を履いていることで転倒していることが分かったそうです。

更に「明るい色の靴が欲しい、左右サイズ違いの靴が欲しい、踵がしっかりしている靴がほしい」などいろいろなニーズがあがってきた。

その声を知り、徳武産業は、左右サイズ違いの靴と同一価格で販売したり、片足だけを半額近い値段で販売するという誰も考えもしないやろうともしないものだったそうです。

やらないと決めたことの二つ目である、どんな難しい要望にもノーと言わない。

その結実とも言うべきパーツオーダーシステムによって、顧客の不安、不満を一つ一つ解消していくために集められたあらゆる声をまとめ、多くの顧客の共通する靴幅などのニーズを定番化させようと考案する中で生まれ、これにより足・歩行に悩みを抱える高齢者のそれぞれの特殊事情に対して、ほぼ注文通りの靴をつくることができるようになったそうです。

その結果、セミオーダーメイドではあるものの、価格面で量産品近くまで引き下げることに成功したそうです。

最後に同社が高齢者用向けケアシューズという市場を作り上げたにもかかわらず、特許を取るということで市場を独占せず、多くの同業者の参入を容認することとしたため、今では、同業他社が次々と高齢者用ケアシューズに取り組み、あゆみシューズは業界のスタンダードになっているそうです。

この考え方の背景には、母親が46歳でこの世を去り、親孝行出来なかった分、お年寄りに喜んでいただきたい思いでいっぱいで、すべてのお客様に対して、自分の親に接するのと同じくらい真心を込めて接したいと素直に思えるそうです。

徳武産業では、商品発送時に、もう少しお年寄りから意見を聞こうと、アンケートはがきを入れ、加えて自社の靴を履いてくれる顧客に何らかの形で恩返しをしたいと考え、すべての商品を発送する際に、社員の手書きのメッセージカード「まごころハガキ」を入れているそうです。

「私たちは、あなたに寄り添いながら、あなたが歩く応援をさせていただいています。頑張ってくださいね」という思いを込めて、メッセージを書く。

アンケートに答えてもらった顧客には、その誕生日に合わせてプレゼントすることにし、そこに社員が手書きしたメッセージを同封して送っているそうです。

この社員と顧客の交流により、はがきへの感謝やアンケートへの返信を含め、年間二万通を超えるお礼状が届くことで、社員のモチベーションを最大限まで高めてくれているそうです。

3社目はメーカーズシャツ鎌倉。

この会社は、ビジネスシャツの業界で、世界80か国以上で年間70万着以上を売り上げる企業なんだそうです。

ビジネスシャツ業界は、一着1000円以下から数万円と幅広く、紳士服専門店で購入する客層は全体の6-7割。

価格帯は1000-3000円。

もう一つはシャツ専門店や百貨店で、オーダーシャツを求める層。

その購入額は1万円~2万円ですが、高級シャツの全体に占める割合はわずか数%。

この数%のユーザーに対して、既製品で従来のオーダー品の二分の一~三分の一の価格て提供しているそうです。

会長の貞末さんは、53歳での会社立上前、アパレル企業4社に籍を置きましたが、全て倒産。

そこで潰れる会社には絶対したくないと常にそう考えるようになったそうです。

そこでビジネスマンとしての冷徹な見方から、

①シャツが必需品として一年中売れる、

②シャツは年齢を問わず、流行も非常に少ない、

③自分が買わないシャツは作らない、

④公平な取引に徹しておれば安全性は高い、

⑤シャツは生活に潤いを与えることから人々のニーズは高い。

そこで、自分の作るシャツは①最上質の生地(80番手双糸以上の生地)、②縫製を国内の熟練職人による巻き伏せ本縫い、③ボタンは天然高瀬貝を巻き上げたものにしたそうです。

そして、シャツ・ユーザーのうち、わずか数%の人たちに対してのみ「こだわりのシャツ」を絞り込んで提供していたそうです。

また、無駄なコストを省くために、①生地生産者や工場と直取引をすること、②工場から店舗に直接納入される製造小売り携帯、③在庫を持たない多品種少量生産体制、④感度の良い商品の市場投入、⑤下請け業者への現金決済。

これにより原材料を安く仕入れ、驚きの低価格を実現させたそうです。

更に、①無理に出店して規模拡大を追わない、②メイドインジャパン以外は扱わない、③値引きもバーゲンセールもやらない、④広告宣伝流行らないと決めたそうです。

お客様の7割がリピーターとして定着頂いた際に、毎年買いに来ていつも新鮮でいいなと思ってくれる。

つまり、商品そのものの機能よりも、それを購入または使用することによって得られるメリットを感情的に表現することが大事と考えるそうです。

また、社員の値打ちは、お客様の利益に貢献しているか否かが重要な判断基準であり、お客様の利益に貢献していれば、その社員は何物も恐れる必要はない。

お客様のためになっていない社員が社内にどれだけいるかが、企業が高コスト体質になっているかどうかを判断するポイントだと伝えているそうです。

また社員をコストとしてしか観ない雇用形態では、社員が自分が大切にされているとは思わず、頑張ろうとは思わないと考え、非正規雇用の採用から全員正社員に切り替えたそうです。

メーカーズシャツ鎌倉では、社員一人ひとりが高い当事者意識をもって、顧客の利益に貢献し、「ありがとう」の言葉をもらうことで、自分がいかに誇れる職業に携わっているか強く認識するそうです。

4つ目は、株式会社さくら住宅だそうです。

この会社は、神奈川県横浜市、鎌倉市、逗子市エリアを拠点にリフォーム、耐震補強、新築、増築、改築を行っているそうです。

1997年6月に会長の二宮さんが50歳で独立を決意し、創業したのが始まりで、「リフォームを通じて社会のお役に立つ会社になる」を企業理念に、同業他社が手間がかかる割に儲からないからやらない小工事を進んで引き受け、その後の大口工事や生涯顧客化へとつなげる顧客満足第一の経営を展開しているそうです。

なお、二宮さんは大手住宅メーカーに勤務。

一方で、自分の会社が売った新築戸建てのクレーム対応に会社が答えず、独立を決意したそうです。

創業当初はキッチンと水回りを一括でリフォームするという、セット商品を看板に掲げ、販売したそうですが、一年目は赤字。

一方、二年目から22年間黒字を達成するようになった理由にやらないことを明確に決め、やるべきことに全力を注ぎ込んだのだそうです。

①小工事を断らない、②遠方の工事をやらない、③価格競争をしないという3つだそうです。

ある顧客が洗面台の鏡が錆びて交換したいという依頼に対して、利益が上がらないことはわかっていたものの喜んで鏡の交換をしたところ、次々とほかの新規顧客を紹介。

電気の修理、商事の張替、水漏れ、柱の補修などからアフターフォローという概念が薄い業界構造を反面教師として、さくら住宅はリフォームした家を定期的に巡回し、不具合がないか聞いて回ることにしたそうです。

こういった住まいの小さな困りごとを解決すれば、顧客との信頼関係が築けることに深い気付きを得て、近隣住民の小工事を積極的に受注し、顧客との信頼関係を構築し、その顧客から次々とリフォームを受注し、深い顧客満足を得る現在のビジネスモデルが出来上がったそうです。

2017年度の同社の受注総件数は1841軒、うち1986件が大口工事(平均単価112万円)、小工事は755件(4万3千円)だそうです。

売上高12.5億円のうち、大口工事は12.2億円、小工事は今でも0.3億円に過ぎないそうです。

次に遠方の工事はやらない。

提供エリアは自社の各店舗から30分圏内でいける地域都市、本社のある横浜市栄区の4000世帯のうち、5軒に1軒は何かしらのリフォームを手掛けた世帯であり、そのリピート率は95%、平均年齢は約70歳と顧客の生涯顧客化にも成功しているそうです。

一方、困っている顧客の要望に応えられないため、その地域のよく知る信頼できる同業を紹介しているそうです。

そのために「全国リフォーム合同会議」を立上、現在の加盟企業は27社。

リフォーム業者としての「あるべき姿」や「考え方」を徹底的に議論するそうです。

尚、値引きを要求する顧客がいた場合には、きっぱりと断るそうです。

さらに、さくら住宅には、「お客様株主制度」があり、株主数156名のうち、88名がお客様株主だそうで、新たなに株を保有したいという希望も多く、20名に待ってもらっているそうです。

そして株主総会では、顧客が株主として登場、更に取引先や職人、仕事の付き合いで親しくしている人々など200名以上が参加し、総会内での株主からの質問も、業績や配当に関する質問は殆どないそうです。

さくら住宅では、どんな小さな工事でも迅速に対応して顧客の住まいの困りごとの解決に貢献することで、自分がいかに誇れる職業に携わっているかを強く認識しているそうです。

5つ目が、株式会社吉村。

1932年7月創業。

三代目の橋本社長は、2代目社長の長女。

日本茶の茶葉のパッケージが95%の業務なんだそうです。

なお、茶葉消費量は2014年に1146グラムから2019年に791グラムへ30%超減少。

また、2003年に茶葉が6138円、茶飲料が4627円だったものが、2019年には、茶葉が3780円、茶飲料が7845円と大逆転しているそうです。

そんな中、橋本さんは消費者座談会を開催する中、今後起こりうることを少しずつ予感し、若い世代にも受け入れられるカジュアルギフトにお茶もシフトしていくといった声を業界に発信。

「日本茶が売れなくて困るのは、パッケージ印刷業だけでなく、お茶屋も同じ。それなら日本茶を売るために、一緒に知恵を絞り汗を流しあう間柄になる」と変えたそうです。

その中で、茶葉をカジュアルギフト化するという方向性に活路を見出し、デザインに工夫を凝らし、大きなお茶の袋ではなく、オシャレな個包装にして販売することで成功したそうです。

橋本さんがやらないと決めたことは、①量産しない、②単なるパッケージ印刷はしない、③下請けも安売りもしないという3つだそうです。

通常パッケージ製造というのは、数万枚単位での発注となるのが一般的な中で、吉村では100米からの超ロット対応の生産体制に大きく舵をきったこと、またマーケテイング調査や店頭のデザイン、ユニフォーム、POPなどの販売促進、海馬支援、次世代への取組(給茶スポット、お茶Bar、T-1グランプリ)などを展開し、「顧客の茶葉の販売をフルサポートする」というサービスを付加し、「繁盛支援業」に転換したそうです。

更に小ロット適量生産のため、パッケージ政策に必要なすべての工程を内製化、自社デザイナーの採用など、独自のデザインによる個包装を提案できるようにしたそうです。

②池クジラ5つの必須要件

上記5例から、5つの必須条件を著者は抽出しています。

一つ目は、業界の非常識にあえて挑戦し、非常識であるがゆえに、他では得られない自社独自の価値を生み出していること

2つ目は、社会的課題の解決に挑戦し、それを求めていた人々に貢献していること、

3つ目に価格競争とは無縁の世界で、値引きする必要がなく適正価格を支払ってもらえること、

4つ目は有事に強い事業構造が出来上がっていること、

5つ目は社員が自立できる行動環境が整備できており、社員が自ら考えて判断して行動していること。

一方、大企業は業界全体を狙い、競争優位はシェア獲得、価格曲想、差別化戦略をし、圧倒的且つ豊かな経営資源を武器に戦います。

一方、中小企業は、大企業が狙わない、業界では非常識で手間のかかる特定の分野、市場を狙い、大企業とは競争を回避し、非価格競争で勝負をする集中戦略を取り、限られた少ない経営資源で戦います。

どの産業分類の業界にも、業界の「リーダー」は存在し、業界で最大の経営資源を持つ企業がいる。

また、リーダーとシェア争いをしている「チャレンジャー」も存在する。

一方、その他大勢の企業は、フォロワーという地位に甘んじ、収益力は低い。

そこでリーダー、チャレンジャー、フォローという3つの括り以外に、「池クジラ」というくくりがあるんだそうです。

尚、4つ目の有事に強い事業構造として、都度顧客との関係を築き、その時々に応じて収益を挙げていくフロービジネスに対して、継続的に顧客と関係を結び、継続的な収益を挙げていくのがストックビジネス。

このストックビジネスまで行かなくても、「顧客を財産(ストック)」と考え、「ストック的ビジネス」に持っていくのがお薦めだそうです。

ストック的ビジネスとは、顧客から厚い信頼を得て、ファンやリピーターになってもらうことを言い、何がファンか、何がリピーターか、顧客の自社内における位置づけをしっかり定義し、そうなってもらうための仕組みづくりが大切だそうです。

一つにはリピーター率を上げること、一方、顧客の数を増やすことです。

これまで取り上げた5社はそれぞれを達成しています。

5つ目の社員の自律に関してですが、社員が自律できる行動環境が整備されていること、つまり、今現在の自分の能力を超える仕事に兆戦した結果、その仕事が面白くて楽しいなら、その社員が大いに成長する。

経営者が「会社のオーナー」になる一方、社員が「仕事のオーナー」になる。

そのためには、顧客からの感謝状や満足度を挙げる活動をする。

また「社員への利益還元」の仕組みにより、アワーカンパニ‐(われわれの会社)となる。

この社員全員が会社のオーナーになった会社を作り上げることで、高い自立促進思考をもたらすことができるそうです。

尚、ある宮崎のコープでは、正規非正規関係なく、顧客に役に立つと思ったことを商品の交換、値引き、返品等の判断をいつでも、どこでも、全社員の誰でもやっていいんだそうです。

その背景には、八百屋のおやじさん、おかみさんが景気の変動や野菜の不出来で売り上げが減ったり、近くにスーパーができて利用者が減ったりしても言い訳せず、顧客に喜ばれるように自分たちができることを一生懸命やっている。

そして目先の利益ではなく先々を考え、ずっと商売として成り立ち続けるよう日々工夫、努力を続けている。

この感覚をコープ宮崎も大切にしているそうです。

③どうすれば”池クジラ”戦略で、業績アップを実現できるか(ノウハウ、仕組みづくり)

まず、

1.やらないことを決めているか。

つまり、視点は目先でいいのかという課題があります。

稼ぐ力の高い会社は、目先の売上に翻弄されず、長期的視野に立って、自社の独自コア能力を磨き、ファンづくりを徹底している。

中途半端なことはせずに、池クジラを完成させるまでやり切っている。

ファンをつくるためには、企業として、相当レベルの高い、独自コア能力を身に付けなければいけない。

「それがあるからファンができる」という能力です。

そのために、まず「何をやらないのか、やらないことをしっかり決める」ことが大切だといいます。

東海ばね工業では価格競争はしない。

微量より多い注文は受けない。

納期が守れない注文は受けない。

工作機械に依存しない。

徳武産業も価格競争はしない。

メーカーズシャツ鎌倉でも、規模の拡大は追わない。

値引きもバーゲンセールもやらない。

広告宣伝もやらない。

さくら住宅でも、同業他社が嫌がる小工事を断らない。

一方、遠方の工事はやらない。

吉村では、量産はしない。

下請けにはならず安売りもしない。

つまり池クジラ戦略を突き詰めた結果、やらないことを決めた。

そのお陰で目先に翻弄されなくなっているそうです。

また、

2.深く満足させるべき顧客は誰かを選んでいるか。

池が小さいということは、顧客が特定されていることであり、その顧客を他の誰にもできないくらい、深く喜ばせる必要がある、

ファンになっていただく必要がある。

そのためにその特定の顧客を喜ばせることができるかを突き詰める必要がある、

どうすれば顧客を喜ばせる能力を、さらに一層磨くことができるか、

事業の本質をとことん見極めること、

特定市場の顧客には、商品・サービスそのものではなく、提供する価値を買っていただくことになるため、

ファンになっていただける顧客とは一体誰なのか、厳密に定義する必要があるんだそうです。

東海ばね工業は多品種で微量の難易度がきわめて高いばねを求めている企業並びに個人。

徳武産業は、足に何らかの不自由を抱える高齢者や障碍者の人。

メーカーズシャツ鎌倉は、今まで高級なオーダーシャツを購入してきたオシャレなビジネスシャツのユーザー。

さくら住宅が対象とする顧客は、気持ちよくこまめなリフォームにも迅速に対応してくれる地元住民。

吉村の対象顧客は、構造不況の真っただ中にいる全国8000社の緑茶の卸売り、販売業者。

このように五社とも、自分たちの対象として深く喜ばせようと考えている顧客をしっかりと定義している。

3.どうすれば顧客に深く喜んでもらえるか。

特定の顧客を、ほかの誰にもできないくらい深く喜ばせるためには、ファンになっていただく顧客が何を価値と考えているかを知る必要がある。

そのために、顧客が認める価値を、こちらで勝手に創造したり憶測するのではなく、実際に、その顧客の声に耳を傾ける必要がある。

顧客が惰性になっているため今のところ気づいていないが、このままではだめで、正さなければならないものは何か。

そのために必要なわれわれの能力は何か。

顧客が日頃言っていることは何か、等々知らなければならない。

東海バネ工業にとっては、最適価格と納期スケジュールを提示した上で、単品でも微量でも細かいニーズにも応えて求める仕様を満たす高品質のばねの機能。

徳武産業にとっては、高齢者のニーズをよくわかってくれながら介護ニーズを反映させた靴による、転ばない、はける、歩ける、居場所を特定できること。

メーカーズシャツ鎌倉にとっては、オーダーシャツと同等の品質でありながら、驚きの低価格で提供される自分の身体にぴったりフィットするオシャレ。

さくら住宅は、手間暇惜しまず迅速に対応してくれる、自分の家のかかりつけ医のような親身な住宅リフォーム。

吉村は、情報と経験をベースにしたパッケージ政策による茶葉の促進販売。

5社とも自分の提供価値が何かをしっかりと定義しています。

4つ目に独自コア能力(明確な強み)を築いているか。

自社においてどのような条件が整えば、同業他社が手に入れたくてもなかなか手に入れることができない、自社の独自能力を手に入れることができるのか。

東海ばね工業では、熟練職人の技術を解析し、データベース化したことが決定的に重要で、このデータベースのお陰で、受注管理システムから納期と見積価格を顧客に即座に回答出来るようになりました。

さらに約2000種類の適正在庫を持つことで、過去にオーダーのあった類似の注文に対して即座にものづくりに対応することができる。

結果として営業の省力化にも成功する。

バネ職人たちは、同業他社ではやれないきわめて難しい特殊事情のばねに挑戦し続けているため、高い技術力が身についている。

徳武産業は、足に何らかの悩みを抱えている人には、片足販売も必要だという革命的な発想から一歩踏み出して、パーツオーダーシステムを考案。

更にお買い上げいただいた靴に「まごころハガキ」を添えて送っていることで、年間二万通の令状を顧客からもらえる仕組が社員の心の中に育っている人由来の事業価値の厳選なんだそうです。

メーカーズシャツ鎌倉は、SPAモデルを採用し、最高技術を持つ国内縫製工場と連携できたこと。

また、「サイズ売り」という販売手法による多くの体系の顧客にフィットしていることも仕組由来の事業価値の源泉だそうです。

さくら住宅は、小工事でも黒字化できる施工管理力を身に付け、完成工事台帳をうまく活用しているため、すべての工事を黒字化する現場管理能力が育ったそうです。

更にお客様株主制度で、ファンの顧客を株式化する制度が整ったことは決定的で、顧客から絶対の信頼を獲得し、次々と新規顧客を紹介してもらえる仕組が出来上がったそうです。

吉村では、小ロット適量生産のため印刷システムをはじめとする一貫生産体制を整備、自前でデザイナーを整備。

更に関係するすべての人から現場社員が把握した情報を五分間会議を通じて全社員で共有することで、ボトムアップ方式でノーベル起案を仕組として行っているそうです。

共通していたものは、独自コア能力には「仕組由来」と「人由来」という二種類のものがあり、二つの観点から自社の独自コア能力を構築し、事業価値の源泉にするといいそうです。

5つ目が短期利益に惑わされず、長期安定利益を追及しているか

目先の利益にこだわればこだわるほど、「長期安定利益」は遠ざかって行ってしまう。

長期安定利益は社会的課題を解決するからこそ、そうした課題を抱えている誰かが喜んでくれるからこそ、長期に渡り安定して獲得できるものなんだそうです。

長期安定利益とは、①社会的課題である困りごとを見定め、②その課題を抱えている見込み顧客を絞り込み、③見込み顧客に直接聴いて提供する価値を確認し、④その価値を生み出すために何が必要かを見極め、⑤資金を集めてヒト・モノ・情報に投資し、⑥自社独自のコア能力である事業価値の源泉を築き上げ、⑦事業活動を通じて顧客の課題を解決し続けることにより、⑧結果的に得られる、長期に渡って安定した利益を言うんだそうです。

長期に安定した利益を獲得するには、事業をじっくり構想して覚悟を持って育てる必要がある。

長期視点から構想して計画を練り、必要な投資をやり続けることが必要。

事業も社員も長期視点から時間をかけて育成。

ファン・顧客や安定した事業基盤を長期視点から、時間をかけてじっくり育てていく。

目先の浮利を追わず、社会のお役に立とうと考え、長期安定利益を結果として追及する事が正しい池クジラ戦略であり、マイルストーンというべき定性的、定量的な経営目標を掲げ、そこから達成しようと考えることが長期安定利益への近道なんだそうです。

安定した利益が長期に渡って確保されているなら、ビジネスパーソンに精神的な余裕が生まれ、経済的な余裕があれば、時間的な余裕を創り出すことができる。

6つ目に池クジラ構築に向けて、仕組み化しているか。

池クジラ戦略を成功させるために、通常仕組化が必要となり、高いレベルで維持するには、仕組を構築し、うまく運用し続ける必要がある。

そのために、

①社員が経営理念やビジョンの意味を深く理解し、共感するための仕組化が行われているか、

②自社の商品・サービスに求められる価値を顧客の声から分析する仕組化は行われているか。

③見込み客に、の商品・サービスの良さや優れた点を理解してもらう仕組化は行われているか。

④時流を見据えた、新事業、新商品・サービスを開発する仕組化は行われているか。

⑤顧客が期待する商品・サービスを、効率的・効果的に提供する仕組化は行われているか。

この5つの仕組化が大切なんだそうです。

7つ目に、自社の池クジラのレベルをチェックしているか。

実際に、自社収益率が低かったり、社員が疲弊しているようであれば、長期的に収益力が低下する可能性が高い。

自社の池クジラは完成しているのか、中途半端なままで未完成なのか、現在の池クジラ戦略の課題は何なのかを定期的に確認すると良いそうです。

また、いかに立派な池クジラのビジネスモデルであっても、その運用が上手に出来なければ効果は発揮されず、結局池クジラ戦略としては、未完のままかもしれない。

更に仕組ができた後も運用の手を抜いては行けず、結局は社員力次第となる。

「社員を通して目指す成果を実現すること」が経営となります。

できれば、経営理念、財務アタマ、池クジラ、仕組化、社員力、さらに社員力を構成する五つ要素である信頼、自律、規律、サポート、ストレッチに関しても定期的にサーベイ、フィードバックするといいそうです。

そのため、池クジラに関する質問項目として、

①顧客は誰かを明確に絞り込んでいるか、

②自社の商品サービスに明確な強みがあるか、

③自社の商品サービスの良さを見込み客は明確に認識しているか。

④自社と決めた市場で、ナンバーワンあるいはオンリーワンか、

⑤自社が戦うと決めた市場は、大企業が参入してこないニッチな分野か。

⑥自社が戦うと決めた市場は、業界では非常識な分野か、

⑦自社が戦うと決めた市場は、十~二十年先までの時流に合致しているか。などがあります。

④愛される会社の「社員力の強さ(働きがい)」を磨き上げる方法

社員が、輝いて仕事をする強い社員力の会社にするには、まず魂のこもった経営理念・ビジョンが必要であり、会社に浸透し、社員の使命感を育み、社員の行動規範にまでなれば、経営理念、ビジョンは目的を達成したといえる。「会社は何のためにこの世の中に存在するのか」「会社は社会にどのように貢献するのか」という会社の「あり方」について明示したものが経営理念となります。

裏返して社員の立場から見ると「自分はこの会社で何のために働くのか」という社員が「働く目的」に繋がる。

また、ビジョンは、経営理念を受けて会社はどのような顧客を選び、その人たちに、どのようなほかでは得られない価値を提供するのか、その結果、自社は、社会においてどのような「お役立ち」をするポジションを打ち立てるのかについて明示するものです。

従って、経営理念・ビジョンは、社員の仕事に対する使命感を育んでくれるものとなります。

更に社員が自律的に仕事をする際の行動規範になる。

つまり社員が経営理念・ビジョンを拠り所に、自ら考えて判断して仕事をする限り、経営者も上司も誰もそのサインに文句をつけることができない。

この理念経営を実施している会社では、経営理念、ビジョンが社員の働く目的と社員の行動規範の二つの役割を果たすそうです。

なお、本書のお勧めするサーベイとして、①経営者は、事業を通して社会貢献と社員の幸せを考えている、②経営者の思いは、経営理念、ビジョンに強く込められている、③経営者は、経営理念、ビジョンに込めた思いを幹部、社員に浸透させている、④経営者の行動は、率先垂範して経営理念、ビジョンを体現しているかなどだそうです。

⑤戦略は強いリーダーシップによって成功できる

会社は真の稼ぐ力がなければ存続できない。

仕事は厳しいのは当たり前で、なぜなら顧客に喜んで仕事の対価を支払ってもらわなければならないからです。

社員は顧客の期待を超える成果を上げようと努力しますが、顧客によっては「自分はお客だ」ということで横着な考えを持ち、無理な要望を出してくることがある。

こうした状況を避けるには、できることはできる、できないことはできないと、顧客と対等な立場で交渉する必要がある。

この対等な立場を実現するためには強い商品力が必要となる。

そのために人を大切にする魂を持つ経営者の長いとは、仕事から活力を得て輝き、熱意にあふれ、没頭している状態にて仕事に取り組んでもらいたい。

そのためには「会社は何のためにあるのか」「社員は何のために働くのか」に対する心の底からの思い」をカタチにした経営理念が必要です。

「この仕事はこういった意義のある仕事だ」と自分が尊敬する経営者や経営幹部から何回も何十回も力強く語りかけられ、語り合って、ようやく社員にそんな気持ちが芽生えるぐらいのため、まず人を大切にする「魂」を持つことが必要だと言います。

ワークエンゲイジメントを実現させる経営者の頭の中には、①社会に価値を生み出そう、②社員に働く目的を示そう。とあります。

⑥自分の所感

中小企業の戦略を考えたことがなかった。いや、No.1企業の市場を如何に多くとるかしか意識してきませんでした。

この本で書かれる様々な実例、物凄く良かったです。

さて、少なくとも自分の事業に取り入れられるものを物色しないと、本を読んだ意味がないですね。

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