「2030年の東京」を読んで-2030年までにコミュニティー作りかな。

本日は、河合雅司さん及び牧野和弘さん著作 祥伝社親書「2030年の東京」を紹介します。

河合さんは、日本の人口減少の問題を取り扱ってきたジャーナリスト、牧野さんは不動産プロデユーサー。

東京においても2025年から人口減少が始まることで、見えている世界が変わってくることを前提に本を書いています。

これまで東京だけは、若い人が移住し、人口流入が続くという見方が、いよいよその地方からの移住する若い人がいなくなるという現実にさらされるとあります。

この本を読んで、少しやるべき活動を変えていかないといけないと感じたため、今回紹介させて頂きました。

第1章 仕事はこうなる

第2章 家族はこうなる

第3章 街、住まいはこうなる

第4章 暮らしはこうなる

第5章 老後はこうなる

➀産業構造と働き方の変化

これまで人口が減り始めたのに東京一極集中が続いてきたので、今や東京都には総人口の11.1%が集まり、都内総生産は全国の19.8%(2018年度)を占める。

この「東京モデル」が破綻しかかっていると著者は言います。

東京に本社を置く製造業の多くが、1980年代後半の円高時代、人件費の安い海外、主にアジア地域に製造拠点を移し終わっており、みんながオフィスに集まって働く必要性がなくなっていること。

特に2030年頃になると、人口激減の影響が色濃く現れ、圧倒的な労働力不足に陥る。

一つには成長が期待される分野へと産業構造を集約化すること。

また働く人すべての人がそれぞれのポジションに応じて職能をアップしていくこと。

特に何もかも集中させて事を運んできた「集積の経済」や総合百貨店的にあらゆる産業を抱える経済構造ではうまくいかない。

従来のような量的拡大一辺倒での成功は不可能であり、東京一極集中が変わっていくと著者は想定しているようです。

また、コロナ後のテレワークの普及により、企業の側からすれば大勢の社員を都心に集めなくてもビジネスができ、利益が上がることが認識されたため、都心で高い賃料を払ってオフィスを借りたり通勤定期代が削減すべきコストとして上がってくることを指摘しています。

特に自宅に居ながら多くの国の人が参加するミーティングも出来ることから、フィジカルな移動という「死んだ時間」を「生きた時間」に変えさせる意味を重要視すべきだといいます。

更に情報通信端末でコミュニケーションが十分に取れるため、使いこなせば労働時間の大幅短縮が可能となる。

そのことで、新しいことをやることで労働生産性の向上に寄与することを上げています。

雇用の流動化は、副業・兼業の広がりによる経験が定年後の再就職などに有利に働くこと。

また、従業員構成のピラミッドが今後さらに崩れると、年功序列による賃金制度が持たなくなり、給与水準の高い中高年が組織に占める割合が大きくなりすぎて総人件費が膨張する。

管理職や特定の部門を対象としてミッションを与え、人事評価を行う「日本流ジョブ型雇用」が確実に増えると著者たちは想定しています。

更に言えば、名乗り出て任せるに値する能力があると判断されれば、課長や部長に抜擢されるが、与えられたミッションをこなせなければ降格もあり得る。

組織に対して成果の請負をして、自分の能力を評価してもらう形式となる。

その際、自分の「得意なこと」「できること」を見つけることが大切であり、それはこれまでこなしてきた仕事を棚卸することで分かるといいます。

ある業界の商品企画力やマーケテイング能力が他の業界でも役に立つ。

仕事には共通項が意外と多くあり、各自でスキルアップすることが雇用の流動化を促すことは確実で、若いうちから定年後のことを考え、再就職先や新たな仕事を求めてスキルアップをしておかなければならない。

その際、週4日テレワークになれば、1日往復3時間、1か月で約50時間、1年間で600時間になる。

この時間をスキルの再構築に充てることで、大きな差ができる。

尚、資格取得に時間を費やすのではなく、自分の専門領域を広げて「今就いている仕事の隣、またはその隣の仕事」を知る。

たとえば経理職ならば、他社の財務戦略や経理にまつわる法律などを実例として学ぶほうが、有効なスキルアップだといいます。

とにかく自分が所属している会社でしていないことを他社で行っていたら、どん欲に学ぶ。

まずは具体的な内容を知ることから始まり、時代の流れや業界の中でどこに位置するのか、どのような経営戦略に基づくのかと発展させていくことで、他社・他業界の知識を如何に身に付け、新しい発想や考え方を取り入れやすくする。

その為に、積極的に他の世界の人たちとつきあうことがこれまで以上に大切だといいます。

②単身高齢者の増加と女性の暮らしやすさ

今後の東京は、単身者の急増が予測される。

単身者というと、若年層を想像するかもしれないが、2030年の単身者は、東京で高齢化した人と、子供が東京に移住し、先行して人口減少の波に洗われた地方で一人暮らしの高齢者の生活が成立しにくくなり、東京圏に集まってくるそうです。

例えば埼玉県の鳩山ニュータウンは2020年の高齢化率は45.9%。

2030年には53.6%になると予測されている。

住民の顔ぶれが80歳以上の高齢者ばかり。

その状況で毎年のように襲う豪雨や台風、近い将来に想定されている直下型地震にどう備えるか、災害弱者である高齢者をどう守るかが喫緊の課題だそうです。

また、高齢者の収入は、現役時代より圧倒的に少ないこと、収入が少なければ働くことで解決できた現役世代と違って、倹約するしかない。

必然的に我慢してでも安いものを求めることになることから、河合さんが日本がデフレから脱却できない大きな要因の一つと考えているそうです。

企業が急増する高齢者に合わせた価格帯に商品サービスを提供する

コスト削減のために若い世代の賃金水準が下がる

低価格帯商品は低収入となった若い世代にも歓迎される

企業はさらに低価格帯の商品サービスを強化する

若年層の低収入がいつまでも続く。

若い世代の所得の再分配、そして高齢者の老後資金の不安の払拭が上のループから抜け出すために必要だといいます。

これから高齢者になっていく世代は、現在の年金受給世代に比べ、将来老後の生活が苦しくなると見られている。

それはすなわち、年金受給額の水準も退職金額の水準も、現在の年金受給世代に比べて低くなるようです。

一方で、女性にとって東京は世界の各都市と比べても、住みやすい都市なんだそうです。

性差にまつわる差別意識が少なく、近所にコンビニもあるし、職業はもちろん、働き方、生き方など、選択肢が多いことを上げています。

③鉄道会社のビジネスモデルの破綻

日本が鉄道社会であり、電車に乗って働きに行く、遊びに行くスタイルが世界で最も多い。

とりわけ東京では山手線の内側に地下鉄網をめぐらせ、渋谷、新宿、池袋など山手線の他0観なる駅に郊外から東京にやってくる私鉄を受け入れ、都心につなげることで巨大都市東京の発展が可能となった。

一方、コロナ禍によるリモートワークの普及により、オフィスへの交通利便性を絶対条件とする住まい選びに変更の余地が出てきたのではないかと牧野さんは予想しています。

また、従来の私鉄沿線開発モデルは崩れ、郊外へ線路を伸ばすのではなく、都心への利便性を向上させる動きにかじを切った。

今後、沿線に有名な観光ポイントや売り物になる景観や歴史など、観光、リクリエーション、買い物などで沿線を人が回遊しないと鉄道会社の経営は厳しくなる。

今後の郊外開発の境界線として、国道16選より内側では、比較的都心にアクセスしやすく土地も余っているところでの都市開発に限定されるのではと予測しています。

更に、これから生き残る街は、都心への利便性が高く、通勤に便利、あるいは自然が残っていて癒されるなどではなく、街にどのような機能が実装されているかが問われるといいます。

その際、鉄道路線沿線上のある駅には医療施設を集中させる、ある駅には文化施設やエンタメ関連ショップを集中させるといった特化した駅を取り揃えて一つの路線で生活機能のすべてをまかなえるようにすると多くの人が必然的に鉄道を利用するのではないかと河合さんは提案します。

例えば駅の上に高層ビルを立てるなら、そこにクリニックを複数誘致したり、デイサービスを受けられる施設を設置したりという発想の転換だそうです。

なお、例えばスマートシテイという地域の機能やサービスを効率化、高度化し、企業や生活者の利便性・快適性の向上を目指す都市として、柏の葉キャンパスがテーマを打ち出しています。

更に、辻堂、藤沢から鎌倉、葉山あたりの地元を誇りにする風習がある都市も「街プライド」が強く、子供が成長して出て行っても、他所へ引っ越さないんだそうです。

④高齢者向けエンタメマーケットと治安の悪化

東京の中心部はオフィスに埋め尽くされ、大人が楽しめる社交場やエンタメ系の催し物が少ない。

特に年配の女性たちが「主役」になれる場がない。

そこで、高級ホテルのレストランなどに行く。

2030年の高齢者が過去のように集団で宴会をしたり、旅行に行ったりせず、同じ趣味、嗜好を持つ、気の合ったもの同士で食事をしたり、イベントに出かけたりするのではないかと見ています。

一方、ワンルームマンションや空き家が増える地区では、賃借人を選べなくなり、外国人が5-6人も入るケースが出たり、犯罪抑止力も衰えるなどすることで、犯罪者がまぎれたりすると、良質の賃貸人が出ていき、怪しげな人物や犯罪者ばかりが住むマンションとなる。

このように古くなって修繕ができない、住民間のコミュニケーションも取れない物件はスラム化し、街が一旦ローアークラスに席巻されると、アッパークラスが出ていくのが世界共通の原因だそうです。

⑤定年延長のリアル

牧野さんが調べたところでは、現時点でまったくハードルを設けずに無条件で定年を延長している企業はない。

例えばソンポジャパンは70歳定年を打ち出したが、望んだ社員100名のうち、社が提示した条件をクリアしたのは30人程度だったそうです。

企業からすれば労働生産性をあげるために40台の社員でも篩に掛けたいのに、60歳以上の社員を無条件で雇う余裕などないというのが本音なんだそうです。

定年退職後も働くことについて、「働けるうちは働き続けたい」と言う人が多くなっている一方、働き続けたい側は、できれば同じ会社でこれまでやってきた仕事を続けたいし、なるべく給与水準が下がらないようにしてほしい。

一方、企業側は、総額が決まっている人件費はなるべく若い優秀な人材の確保やリスキリングに投じたく、定型業務に高齢者を回すことが矛盾となる。

結局は現役時代に突出したスキルを身に付けている人や、他にはない特殊な人脈を持つ人は高齢者ではなく戦力として評価されやすい。

2030年には70歳まで働くことが珍しくなくなったとしても、ほとんどの人は現役時代より収入が少なくなる。

現在の高齢者同様、公的年金を主柱として、その不足分を働いて補う人が大勢と考え、老後の対策をする必要がある。

老後の生活設計の中で最も重要なポイントは借金を定年後に持ち越さないこと。

子供への教育費も背伸びをしようものなら、老後資金を貯められなくなる。

固定費の見直しにより家賃水準を下げられるエリアへ引っ越す。

更に老後資金が足らなければ、自衛手段を講じる。

①働けるうちは働くこと、

②可能な人は資産運用すること、

③自分でできることを増やして家計支出を抑えること。

どんなことでも業者や他人に依頼すればサービス料を取られる。

しかし若いうちから様々な経験を積んで自分でできることを増やしておけば、無駄な出費は減らせる。

さらに河合さんが進めているのが「スキルの交換」

例えば大工仕事が得意なおじいさんと裁縫が特異なおばあさんが近くに住んでいると、それぞれが得意とするスキルを交換する形で助け合えば、業者にお金を払わないで済む。

こうしたスキルの交換の仕組みを地域全体に根付かせておくことだそうです。

昭和30年代くらいまでは東京でも味噌や醤油を貸し借りしたり、自分の庭の雑草を取るついでに隣の雑草をむしっていた。

多くの人が貧しかったので当たり前のことだった。

こうした庶民同士の緩やかな絆をある程度取り戻していくしか残された手はないと河合さんは考えるそうです。

④日本の分岐点

河合さんは、2030年ごろまでは、それほど厳しい時代になるとは考えておらず、豊かだった時代の遺産を食べていけば、まだ何とかやっていける。

むしろ2030年以後高齢者が増え続け、東京に食料やエネルギーを供給してきた地方では人口減少が顕著となり、東京も高齢化が進み小手先の改革では意味をなさなくなる。

高齢者人口のピークを迎える2040年代初頭こそ、日本にとって当面最大の正念場となると考えているそうで、それに向けた改革は2030年からスタートさせないと間に合わない。

と考えるそうです。

⑤私の所感

東京の人口がこれから減るという事実。

そして単身高齢者が増え、街のあり方も変わっていくという予測。

自分が生まれたのが1977年、2040年には、63歳になっていることから考えると、東京は更に変わっていくんだろうと感じます。

かつて幼少期に住んだ千葉県 松戸市、稲毛市、小学校から中学校に掛けては、原宿、そして世田谷区喜多見などに移り住み、街が変容していくのを見ていました。

今も三軒茶屋付近に住んでいるため、近くに新たにマンションが建て替えられたりするのを見て、街が発展しているのを喜んでいます。

しかし、それは23区の一部の話で、地方からの若い人の移住が減れば、勿論東京も変わっていくのでしょう。

今までの経済が良すぎたと考え、仕事も生活も再度学び直すこと。

氷河期世代には慣れたものです。