本日は、スコット・H・ヤングさん著作、小林 啓倫さん翻訳「Ultra Learning 超・自習法 どんなスキルでも最速で習得できる9つのメソッド」を紹介します。
この本を読み、やはり時代が大きく変わっていること.
そして自分で学習できる範囲がとんでもなく広がってることを改めて実感しました。
そんな勉強法を自分で体感した著者の研究結果をできるだけ広げたいと思い、この本を紹介します。
目次
第1章 MITに行かずにMITの学生より短期間で学ぶ
第2章 ウルトラ・ラーニングが「あなたの価値」を高める
第3章 ウルトラ・ラーナーになる方法
第4章 最初に地図を描く
第5章 ナイフを研ぎ澄ます
第6章 一直線に進む
第7章 弱点を突く
第8章 学ぶためにテストする
第9章 パンチから逃げない
第10章 穴の開いたバケツに水をいれない
第11章 構築を始める前に深堀する
第12章 安全地帯の外に出て探求する
第13章 最初のウルトラ・ラーニング・プロジェクト
➀MITに行かずにMITの学生より短期間で学ぶ
著者はMITに通ったことはなく、学生時代カナダの大学で商学部にてビジネスを学んだそうです。
一方、その目的は起業家になりたかったにもかかわらず、経営学専攻が大企業やビジネスマン、「標準作業手順書」の世界に進む人々のためのものだということに気づいたそうです。
対照的にコンピューター科学は、実際に何かをつくることを学ぶための専攻であり、起業の夢を抱かせたのはプログラムやウェブサイト、アルゴリズム、人工知能であったため、学校で学び直すことも検討したそうです。
しかし、学生ローンを使い、大学の官僚制とルールに縛られるのが魅力的ではないと判断し、MITで教えられている授業がオンラインで公開されているのを派遣し、授業を受けてみることにしたそうです。
こうして「MITチャレンジ」と名付けたプロジェクトにて、講義の内容を理解するには、MITの学生とまったく同じように受けるのは不可能だった半面、最終試験に合格することを目指すことで、MITの学位の骨格を理解し、得たいと思っていた知識の大部分を網羅していることが分かったそうです。
一つ一つの課題を丁寧にこなし、成果が出るのを何週間も待つ代わりに、一つのマテリアルが終わるたびにテストを行うことで、自分が間違えている箇所をすぐに把握することで、たった1週間でこのクラスの内容を網羅できることが分かったそうです。
更にMITチャレンジにより1年経たないうちに最後のクラスを終えることが分かった後、1年でフランス語、ポルトガル語、中国語、韓国語を学ぶために、各国を訪問。
結果として友達をつくったり、旅行したり、様々な話題で会話したりするのに十分なレベルに達し、1年が終わった時に自信を持って4つの新しい言語が使えるようになったそうです。
また、エリック・バロンさんは、コンピューター科学学部を卒業したとき、自分でビデオゲームを作りたいと考えたそうです。
一般的に、ゲームの開発にはプログラミング、ビジュアルアート、作曲、ストーリーライテイング、ゲームデザインなど、ジャンルと内容に応じて数々のスキルが必要であるため、他の人々と協力するのが一般的です。
一方、エリックさんは、「自分のビジョンを、自分で完全にコントロールしていきたい」ために、自分のゲームで使いたいと思っていたグラフィックに直接取組み、それを通じて練習を重ねること。
また自分のゲームの為にすべての音楽を作曲し、何度もゼロから作り直したこと。
ゲームの骨格も、何度も直接取り組んで、やり直すことで、結果5年程で売り出したゲームが初年度に300万本以上売れたそうです。
このような究極的な勉強方法、ウルトラ・ラーナー達のユニークなプロジェクトや、著者自身が見出した共通の原則を纏めたのが本書だそうです。
②ウルトラ・ラーニングが「あなたの価値」を高める
ウルトララーニングとは、自己管理的かつ集中的な、スキルや知識を習得するための戦略なんだそうです。
まず初めに自己管理的とは、プロジェクトがどのように行われるかではなく、自分自身がプロジェクトの操縦席にいるということです。
また、アメリカでここ数十年で所得の格差が広がり続けていることが起こっており、更に格差は社会の上層で拡大しており、下層では縮小している。と著者は考えているそうです。
その中、レベルのスキルによる仕事がなくなろうとしている今、成功するためには基礎教育を受けて毎日一生懸命働くだけでは十分でなく、常に学習することが求められる高スキルの仕事へと移動する必要があると著者は言います。
一方、個人が新しいスキルを素早く、効果的に習得するツールを手に入れられれば、この新しい環境での競争力を高めることが出来る。
専門的スキルを素早く身につけるこの方法の適用によって、キャリアの加速、新しいキャリアへの移行、そして競争の激しい世界で優れた優位性を会得することに繋がると考えるそうです。
例えば、ある人はニュージーランドで司書として何年も働いてきたそうですが、政府の予算削減とこの分野の発展を目にして、自分の仕事上の経験だけでは変化に追いついていけないのではないかと心配したそうです。
そこで統計学とプログラミング言語「R」の習得、データ可視化の学習をウルトララーニイングプロジェクトを実施することで、司書の経歴に加わることで、不安定な立場から必要不可欠な存在へと抜け出すための道具を手に入れたそうです。
尚、ウルトララーニングは、決して膨大な量の時間をプロジェクトに費やし、信じられないような成果を得られたケースだけではなく、週数時間だけ行う場合でも、長期記憶の観点から言えば、分散させた方がより効率的である可能性もあるようです。
尚、ウルトラ・ラーナーになるには、9つの普遍的な原則が存在するそうで、まずはその原則を羅列します。
原則1 メタ学習-最初に地図を描く
原則2 集中-ナイフを研ぎ澄ます
原則3 直線性-一直線に進む
原則4 基礎練習-弱点を突く
原則5 回想-学ぶためにテストする
原則6 フィードバック-パンチから逃げない
原則7 保持-穴の開いたバケツに水を入れない
原則8 直感-構築を始める前に深堀する
原則9 実験―安全地帯の外に出て探求する
③原則1 メタ学習-最初に地図を描く
メタ学習とは、学習の為の学習だそうで、優れたウルトラ・ラーニング・プロジェクトでは、素晴らしい教材が用意され、学習者は何を学ぶべきか認識しているため、正式な学校教育よりも早く完了できる。
そのためには「なぜ」「何を」「どうやって」を決めることだそうです。
「なぜ」すなわち何らかのスキルや知識を学びたい理由がはっきりしていると、自分にとって最も重要なことにプロジェクトの焦点を合わせることが可能になり、多くの時間を節約できるそうです。
「何を」とは、プロジェクトが成功させるために必要となる知識や能力を差し、物事を概念、事実、行動に細分化すると、これから直面する障害を把握し、それを乗り越えることが可能となること。
「どうやって」は学習の際に使用する資源、環境、方法を差し、慎重な選択をすることで全体の効果に大きな違いが出る場合があるそうです。
まず、「なぜ」については、実利の為に学ぶのか、興味の為に学ぶのかを意識し、主に実利的な理由でプロジェクトを行う場合、準備に追加のステップを入れることをお勧めするそうです。
特に自分が達成したいと思っていることをすでに達成した人々にインタビューしてみることで、いま検討している学習プロジェクトが達成に役立つとは思わないか、ヒアリングしたり、いくつかの学習計画を立ててみて、それらを自分の目標の観点から評価してみると良いそうです。
何故学習するのかを考えたら、大正となる知識がどのように構成されているかを調べ始める。
そのための良い方法が紙に「概念」「事実」「行動」という3つの欄をつくって情報を書き出し、ブレインストーミングする。
概念とは、それを有効活用するために柔軟な形で理解しておく必要のある考え方で、例えば数学や物理学などは概念に大きく遺贈している。
事実は、記憶しておくべき事実を書き出す。
つまりそれを覚えておくだけで十分な情報を指す。
次に練習が必要なことを書き出す。
言語の学習では、語彙という事実を覚える必要があるが、発音を覚えるには練習を必要とするため、その行動を書き入れる。
ブレインストーミングを終えたら、最も対応が難しくなりそうな概念、事実、行動に線を引き、学習にあたってどこがボトルネックになる層化を把握し、克服するための方法と資源を調べる。
例えば数学を学ぶのであれば、特定の概念を深く理解するのが困難であると認識して、そうした概念を他人に説明する時間をつくることで自分の理解を深めようとするかもしれない。
どのようなボトルネックがあるかを知ることは、学習時間を効率的且つ効果的に使う方法を考えるのに役立ち、目的に合わないツールを回避することも可能になるそうです。
最後に「どうやって」学習するか。まずは人々がスキルや知識を学ぶ一般的な方法から調べる。
例えば著者は認知科学についてもっと知りたいと考えたとき、サンデイアゴ大学の認知科学博士課程が公開していた、新入生に推奨している教科書のリストを見つけたそうです。
ここに時間を費やすことで、学習の効果に大きな違いが出るため、大きなメリットがあるそうです。
更に既存のカリキュラムが見つかったら、最初の準備作業で明確にした自分の目標に合致している部分を見つける。
尚、自己管理的学習の文献に寄れば、大部分の人々が学習の目標や手法、資源に関して徹底的に調べるということは行っておらず、自分の周囲にたまたま存在した学習手法を選ぶ傾向にある。
著者の経験則としては、学習を始める前に、予想される全学習時間のおよそ10%を準備作業に投じるべきだと考えています。
週に約4時間を学習に費やす生活を6か月間続けるとすれば、約100時間に相当するため、準備には約10時間、つまり2週間を費やすべきだといいます。
プロジェクトの規模が大きくなるにつれ、その割合は減少するものの、代替案を検討せずに、単に最初に見つけた学習法や教材に飛びつかないようにすることが大切だそうです。
尚、本書のためにインタビューした多くのウルトラ・ラーナーたちも、個々のプロジェクトの成果に誇りを持っていたが、本当の利点として挙げたのは、難しい知識やスキルを学ぶプロセスを理解できるようになった点だったそうです。
④一直線に進む
筆者はあるインド人の建築家を目指す新卒の方が、どのようなアプローチで職を得ていったを書いています。
大学同期が建築の仕事を見つけられた学生がほとんどいない中で、建築事務所のオフィスへ直接出向き、誰か担当者と話させてくれと直訴するようにし、得られたわずかなフィードバックから、企業が大学でデザインと理論に焦点を合わせた建築の授業を受けた彼を有能な従業員とみなしていないと感じていたそうです。
そこで、建築家が実際にどうやった設計図を描いているか、異なる素材をどうやって表しているのかといった詳細を知る必要があると感じたそうです。
彼はそのために、大きな紙に建設図面を印刷する仕事を請け負っているある印刷所で仕事を見つけたそうです。
印刷所では毎日建設図面を見ることができ、どのように作図が行われているかについて詳しい情報を大量に吸収。
そのうえで、多くの建築事務所でレビットという設計用ソフトウェアが使われていることに気づき、自宅でオンラインチュートリアルを受けてこのソフトを独学で学んだそうです。
このプロジェクトを通じて、レビットのスキルと建築図面の知識を組み合わせ、仕事探しを再開したところ、すぐに仕事のオファーが来たそうです。
つまり学習によって身についたスキルを、学習者は何らかの状況や文脈において使用することになる。
直接性とは、そういった状況や文脈と結び付いた形で学習を行うという発想になるそうです。
何か新しいことを学ぶときには、得た知識をどこでどのように使うのかと自問するように習慣づけると良いそうです。
⑤学ぶためにテストする
自分が期末試験の準備をしている学生だとしたときに、限られた学習時間をどう使うかについて3つの選択肢がある。
第1は教材の復習。
第2に教科書を閉じ何が書かれていたか思い出す。
最後に主な概念を図に書きだし、それらが他の概念とどう関係しているかを整理する。
この実験の結果は、教科書を見ずに情報を思い出す。
つまり自らにテストを課すことが、他の戦略よりも優れていたそうです。
記憶から知識を呼び出そうという行為は、直接的な学習やフィードバックのつながりを超えて、それ自体が強力な学習ツールなのだそうです。
また、フィードバックをなるべく早くうけて間違いを認識する事も非常に大切で、ある人は新しい言語を学び始めた初日にその言語で見知らぬ人に話しかけてみることで、フィードバックを得ていたことです。
⑥穴の開いたバケツに水を入れない
人間は記憶したことを忘れる。時間と共に忘れること、古い記憶が新しい記憶で上書きされるもの、そして記憶から取り出すことが可能となる手がかりを忘却するといった3つだと心理学者は唱えているそうです。
一方、どうすれば忘却を防げるのか。
著者は、間隔反復、手続き化、過剰学習、記憶術の4つを挙げています。
まず間隔反復という繰り返すことで覚えるというもの。
長く記憶しておきたければ、詰め込みはしない。
学習時間を長い期間の中に分散して配置すると、長期的にはパフォーマンスが大幅に上昇するそうです。
筆者は1年間を語学学習に費やした後で、学んだことを忘れずにいるために、オンラインサービスを使い、週に一度30分の会話練習を1年間続けたことで、再学習のためのプロジェクトを実施し、学習は一度行えば終わりというプロセスではなく、一生続くプロセスであることを思い出させてくれたそうです。
次に、何かを行うための知識、手続き的知識は覚えておくのに意識的に思い出す必要のある知識に比べて、忘れられる可能性がはるかに低いそうです。
つまり、大量の知識やスキルを均等に習得するのではなく、その中核にある情報をより頻繁に学習することで、情報が手続き的なものになり、より長く保持されるようになるそうです。
過剰学習は、すでに深く研究されている心理学的現象であり、十分なパフォーマンスが出来るようになるのに必要な量を超え、さらに練習を重ねると記憶が保持される期間が長くなる可能性があるものだそうです。
最後に記憶術として、外国語の単語を学んでいるときに、それを自分の母国語のよく似た音に変換する場合、自分の母国語のよく似た音に変換することで、あとで元の単語を思い出す際の手がかりとなる。
次に変換した英単語と元のフランス語の意味を結びつけ、奇想天外なイメージを描く。
このことで、単語を思い出すといったやり方もあるそうです。
⑦自分の所感
学校を卒業して以来、体系だって勉強した記憶があまりないこと、一方、WEBや書籍などで様々な勉強法が確立しているのではないかと思い、本書を読みましたが、やはり期待通りMITの授業を独学で学べるとか、語学を短期間で身に付けられるとか、出来ることは広がっていることを実感します。
本書や書評を読み、少しでもご自身の勉強する分野の内容を高めてもらえればと思います。