本日は、伊庭 正康さん著作「できるリーダーは、「これ」しかやらない」を紹介します。
伊庭さんは、リクルートに在籍、営業リーダー、部長を経験し、37歳で関連会社フロムエーキャリアの代表になり、2011年に研修会社を創立、営業リーダー、営業マンのパフォーマンスを向上させる手法を開発したそうです。
私自身は、エンジニアリング会社の営業マンとして、プロジェクトを担当する技術陣と共に、受注に向けて対応する役割で、あまり営業組織をどうするかという意識してはいませんでしたが、これを期に、少し学んでみようと思いました。
但し、エンジニアリング業や建設業においては、営業組織固有の役割は限定的で、寧ろ各プロジェクト単位で如何に技術陣メンバーと一緒に、効果的に、効率的に進めていくかが大事だとも感じています。
伊庭さんの考えるリーダーのセオリーとして、
1.一人で頑張りすぎないこと=部下やメンバーに頼る、任せる
2.任された部下がワクワクできる
そんなマネジメント手法の紹介だそうです。
第1章 リーダーの悩みは、「頑張るポイント」を変えるだけで解決する
第2章 できるリーダーの「部下を覚醒させる任せ方」
第3章 「この人と頑張りたい」と思われるリーダーになる
第4章 部下が「自分からやりたくなる」ように導く
第5章 一丸となって「戦えるチーム」の作り方
第6章 スパっ!と「決められる」リーダーになる
第7章 「リーダーの孤独」を感じた時こそ、勝負どころ
①部下の話を聞く時間がない・・・「いかに任せていくか」を考えるしか方法がない
今、あなたが部下や同僚に仕事を任せていないとするなら、プレイングリーダーであり、部下よりもその仕事に精通しているのではないでしょうか。
部下のスキル不足が原因で「任せられない」のではなく、自分がやったほうがベターだと思っているので、「任せたくない」
これが本当のところだそうです。
しかし、自分以外の「他者の能力」を生かしつくすことが、組織を成長させるリーダーの務めなのだそうです。
更に、リクルートワークスの調査報告では、最初の3年が肝心で、その時に「上司が部下に、厳しい仕事を任せなかった」ために、4年目以降の成長を遅らせてしまっているそうです。
伊庭さんも「とにかく任せてみる」と決めた結果、辞めたいと言っていた部下がドンドン成長し、5年経てば組織の中核となり、嬉しいことに10年もたつとリーダーになったそうです。
その際、
1.「なぜ、その業務をお願いするのかを伝える」
2「具体的にどうやればよいのか、手順を伝える」
3「その指示を聞いて、どう思ったかを確認する」
4「不安な点、不明な点がないかを確認する」
5「その後も定期的に確認の場を設ける」
これができたら「理想の上司」になること間違いなしだそうです。
また、仕事をしやすい年下上司の上位は「謙虚な姿勢」「人の意見を柔軟に受け入れる」ことだといいます。
特に①判断軸を示しておくこと、②支援者となると決めること、③「ぜひ、教えてもらいたい」という姿勢を持つことが大事だそうです。
また、今の時代は、会社以外にも稼ぎ方、楽しみ方の選択肢が増えており、仕事中心の生活になることに抵抗があります。
それでも彼らに本気になってもらうには、彼らが「打ち込みたくなるよう、1人ひとりに合わせた動機付けを行う」ことが大事だそうです。
また、部下にとって任せる上司と放任する上司は異なり、任せる上司は部下がやっている作業を具体的に応えられるが、放任する上司は曖昧にしか応えられない。
任せる上司は部下が感じる不便、不安、不満を事実で応えられますが、放任する上司は憶測でしか答えられない。
従って、1回はその業務を経験し、関心を持つことが大事だそうです。
また、マイクロマネジメントによる「目先のこと」に目を向けず、「部下を成長させること」に向けると、マイクロマネジメントを手放しやすくなるそうです。
言い換えると、部下の自己決定感に着目する事。
星野リゾートの社長が会議の場で、「で、どうしますか?」というセリフを頻繁に言うそうです。
これは部下の自己決定感を誘発するセリフで、例えば部下がミスしても、「失敗は次に生かせばいい。で、次はどうしますか?」と相手に決定権を持たせ、成長を促しているそうです。
②リーダーの「任せる覚悟」が部下を覚醒させる
任せる時、リーダーは覚悟が必要となる。それは「この人の可能性にかける」という覚悟。
そして、「裏切られてしまったら、その時は自分が悪かったのだ」と受け入れる覚悟。
更に結果をスグに期待してしまうと、任せられなくなることから、期待すべきは、スグの結果ではなく、その人のノビシロだそうです。
成城石井の社長に就任した大久保三さんという方が、店舗のモニタリング指標が最低点、店の雰囲気も活気がなく、最悪の状態であった店長に対して、引き続き任せることを決め、「勢いのある店」を見学するというきっかけをつくったそうです。
結果として、その店長は自分のやり方と勢いのある店の違いに愕然とし、その後やり方を自ら変えたことで、店に活力が戻ったそうです。
尚、任せる時は、部下の特性や成熟度をよく見極め、段取りのつけ方も含めて関与すべきか考えること。
そしていかなる部下でも、任せる時にひとこと「どう、できそうかな?」と伝えることで、わがこと感を持ってもらうといいそうです。
更に部下の成長を願うなら、最初の3年、つまり新人のうちから、少しずつチャレンジをさせていく。
その際、
1.リスクの低い「チームの仕事」を積極的に任せていく、5W1Hの観点で具体的な進め方を伝える。
2.伝えた後、不安な点、不明な点がないかを確認する。
3.念のため、本人にやることを復唱してもらう。
4.その後、できたかどうかをお互いで確認し、良かった点をほめる。
この手法で、部下の成長のスピードがまったく変わるそうです。
また、スキのないリーダーでは、部下の主体性を引き出すのが難しく、任せ上手なリーダーは、あえて失敗談を語ることで、多少の失敗も許してくれると安心すること。
わかっていることでも、わからないフリをして、教えてもらう姿勢をとることで心理的安全性を高めているそうです。
更に、任せ上手になるアクションとして、
①自らが出向き、部下、取引先の声を聴き、現状を知る。
②その際に部下、取引先に3つの不(不満、不便、不安)を教えてもらう。
③やったことに対してフィードバックを行うことが大事だそうです。
また、1週間もしくは2週間に1回はフェイストウフェイスで会話をする時間を持つと良いそうです。
尚、プレイヤーとリーダーを同時にやるのは、思っているよりも簡単ではなく、
①今それをしておかないといけないことかどうかといった緊急度が高いか。
②それをしておかないと、とりかえしのつかないことかどうかの重要度が高いか。
③それ以外であれば、プレイヤーとしての仕事ではなく、部下を優先することが基本だそうです。
結局そうなると自分のことは差し置くこととなり、行きつく先は自分の仕事を手放し、部下に「任せる」ことだと言います。
また、朝礼や会議の司会を部下に仕切ってもらう、行っている新人との面談に関してメンター性を導入する、業者との打合せは部下のみとする。
など業務を可能な限り、手離れさせる必要があるそうです。
また、特にプレイヤーとして活躍した人ほど、「当たり前」の基準が1つしかない。
まず、持論を語る前に、相手の価値観に関心を持つ。
理解できなくてもいいが、受け止めることはできる。
そんな当たり前のことが、できるプレイヤーほど見落としがちだそうです。
また、1流のリーダーは、「社会やお客様のために何をなすのか」という視点で語ることが大事で、部下は、たとえ定型業務であっても、「この仕事が誰かの役に立っているはずだ」と感じたいと想い、新たなやりがいを求めている。
「やりがい」に気づかせてくれるリーダーは、部下にとっては救世主のようなもの。
「この上司と出会えてよかった」と思える瞬間だそうです。
このTheyの視点で思い入れを持てるようにするためには、
➀自身の経験から考える経験的アプローチ、
そして
②Theyの不(不安、不便、不満)を探す不アプローチから探すのが良いそうです。
更に上司には「格好良さ」が必要であり、そのためには「リーダーとしての習慣」を取り入れているかどうかだそうです。
それは、常に好奇心を持ってインプット(学習)する人に、部下は刺激を受けるそうです。
また、社外活動が充実している上司の方が、若い部下から魅力的に映っており、上司には社外活動での学びを、職場でも共有してほしいという部下は6割に上がるそうです。
更に、20代、30台の若者の間で、自分の将来の生活や仕事に希望があると応える割合が趨勢的に低下している一方、現在の生活に満足している若者の割合は高水準を維持している。
つまり、将来に希望がある職場が大事ということのようです。
その際、上司が部下の「未来」に関心を持っているかどうか。
具体的には、面談の機会を設け、「将来の夢」「やってみたいこと、なりたいもの」を話し合う機会があるかどうか。
そして、希望に焦点を当ててくれる上司の下で働く部下は、提携業務であっても、そこに自分の未来を投影し、モチベーションを高く保てているそうです。
③部下が自分からやりたくなるように導く
優秀な若者の欲求は、「誘因」と「動因」で考える必要があるそうです。
「誘因」とは、報酬や昇格などの自分の外にあるものへの欲求を差し、「動因」とは、自分が欲しいと思う自分の内なる欲求を指すそうです。
昔は、「誘因」となる昇給や昇格で十分でしたが、今は価値観(動因)が多様化する中、それぞれの部下に合わせた「誘因」を作らなければいけない。
しかし、この誘因をシンプルに考えると、「成長させてくれる」ことこそが、どの部下にも共通する誘因(報酬)なのだそうです。
ちなみにWill-Can-Mustという動機付けの法則があるそうです。
Willとは、本人の「欲求(動因)」どうなりたいか。どうありたいのかという欲求。
Canは本人の「能力」。自分ならできるという革新、強みを活かせる期待。
Mustとは、本人が従事する「仕事(業務)」のこと。
つまり、飛び込み営業が仕事だったとして、「1か月に5件の新規開拓」これがMustとなる。
そして本人のWillが「将来自分で事業を立ち上げたい」ことだとする。
また本人も頑張ればできるという実感を持っている=Can。
この要素を重ねると、
「1か月5件の新規開拓をする仕事が、自分の夢である企業に役立ちそうだ。頑張れば月5件程度ならできるはず」
こうした動機付けができれば、やる気は勝手に出てくるものだそうです。
では、この部下のWillを聞くにあたり、3つのレベルに分けて聞くと良いそうです。
1つ目は直近のWill。今の業務でやってみたいことを聞くことです。
2つ目は将来のWill。将来やってみたいこと。理想の未来を確認します。
そして3つ目のWill。仕事で大事にしたい価値観を確認することだそうです。
更にWillを聞いた後、必ずやるべき事は、背景を深く聞くことだそうです。
そして、今の仕事がこれらのWillに近づくイメージがあるかを、本人に考えてもらう。
10%でも30%でも紐づいている部分があれば、本人にとって、今の仕事が未来を作る努力に変わるのだそうです。
この「Will-Can-Must」によって、1人ひとりに合わせた「能力開発目標」を決め、どんなCanを大きくしていくかを決める。
「どんな能力を伸ばしていくのか」といったことを部下と話し合う。
この時Mustに変化を持たせることも鍵になるそうです。
さらに、強みを活かす観点で考える方法もあるそうです。
ちなみに強みとは、「本人が他の人よりも上手にできることで、やっていて楽しさを感じること」だそうで、うまくできるだけではなく、同時に楽しさを感じること。
その上で一つは「すでに活かしている強み」=今の仕事で活かせている強み。
もう一つは「まだ活かしていない強み」=プライベートで活かしている、若しくは過去には活かしていた強み。
まだ生かしていない強みがあれば、それを仕事に活かす方法を考えるそうです。
そうすることで、部下は自らの強みを活かせ、かつ成長感を感じられるようになるそうです。
1人ひとりが「個人目標」を追い掛けている職場の場合、部下の7割が目標を達成できるくらいがベストの状態。
未達成者を マイノリテイ(少数派)にしておかないと、「未達成でも問題は無い」といった空気が職場に蔓延してしまうそうです。
更に、達成者を職場で讃えるシーンがあると、部下の達成への本気度は加速するそうです。
また、達成したかどうかが曖昧な目標設定では、人は成長しない。
特に「達成、未達成が明確」で、かつ「数字で測れる」ようにすること。
先ほどの事務職であっても、数値で目標を設定しなければならない。
更に、数週間単位で小目標を設定すると達成の確度が向上する。
定期的に振り返りの機会を持つことで、「うまくできていること」「できていないこと」を検証し、その都度改善策を考える。
正しい目標設定は、部下に非連続の成長を促すパワーを持つそうです。
更に知識のない新人には、テイーチングで不安をなくす。
その流れは3つ。
➀5W1Hで細かく伝える。何故行うのか(目標達成を確実なものにする)、どんなやり方をするのか、誰に対して、どこで、いつ(予定を組む)、どうやって対応するか。などを伝えることで、納得感に繋がること。
そして、②不明点、不安な点がないかを確認する、
③最後に復唱してもらいお互いの考え方にズレがないようにする。
尚、確認した上で、ほめたり、気づきを与えたりすることで、部下の自主的な行動を促進する。
一方、中堅の部下には、コーチングで考える力を伸ばすことだといいます。
その方法としては、Goal:目標を明確にする。Reality:現状を把握する。Resource 何があれば、解決するのかを考える、Options 対策の選択肢をいくつか出す、Will 本人の意思にする。
この問いかけで気づかせ、気づいたことを回答してもらうことで、妙案が飛び出すことも少なくないそうです。
更にベテラン部下は手の抜き方も知っているため、最高出力を引き出すことが役割となるそうです。
その際には、委任という手法を使い、①高い水準で明確に要望する、②方法は任せる、③定期的に報告の機会を作る、④必要あれば支援するといったものだそうです。
特に「より高いレベルを求める」(提案レベルからコンサルレベルへ、運用レベルから開発レベルへ)
「サービスの改善に向けた役割を付与する」(顧客ニーズを把握し、改善提案)
「組織力向上に向けた役割を付与する」(ノウハウの体系化、勉強会)
などがお勧めだそうです。
また、ベテランの部下であっても、仕事を任せた後、必ず持つべきなのが「定期的に報告してもらう機会」を作ることだそうです。
更に今までなんとなく生きてきたように見え、本気になれない部下に対して、「応援団をつける」というやり方もあるそうです。
④強いチーム作りの設計図
一枚岩のチームを作るのはなかなか難しいもので、運任せでは強いチームは作れない。
そこで最短距離で強いチームを作るためには「設計図」を持っておくことが大事なのだそうです。
その設計図を考える際、バランストスコアカード(BSC)というフレームワークを使うことで、強いチーム作りの基礎になるそうです。
このBSCでは5つの要素のつながりで課題を整理します。
①ビジョン(チームで目指す世界)
②財務の視点(営業組織なら収益目標)
③顧客の視点(どんな価値を提供するか。どんな行動をとるのか)
④業務プロセスの視点(戦略、戦術。1人当たりの仕事量、評価、組織体制)
⑤学習と成長の視点(スキル、情報共有、モチベーション、チームワーク等)
からどこに課題があるのかを導き出し、①をやるには②、②を実現するには③と一気通貫して整理するフレームワークだそうです。
また、チームのビジョンをみんなで考えること。
必要なのは、「自分のこととして考えるプロセス」であり、自分たちのチームビジョンを作るという方法はオススメなんだそうです。
まずお客様は誰なのか、その人たちの不満、不便、不安をみんなで想像し、そのうえで、やってあげたいことを全員で話し合う。
そして言葉に置き換える。
言葉が大事なのではなく、みんなで考えるというプロセスが大事なんだそうです。
更に1週間40時間働いているならば、40時間の間はずっと伝え続ける。
その為には、視覚に訴える。
聴覚に訴える(毎回の会議、朝礼で話すときに必ずそのビジョンに触れる)、
仕組みで浸透させる(ある会社ではお客様の期待を超えることをビジョンに決め、毎週のミーテイングで「期待を超えたかどうかコーナー」で各々が発表した)というやり方もあるそうです。
更にビジョンを決めたら、時間軸を入れた「挑戦」も決めてみる。
例えば1年、半年、長くても2年での短期スパンでの挑戦がお勧めだそうです。
その際、組織も人も「できるかどうか」で考えると、絶対に成長はしない。
更に言うと「できる目標」難易度の低い目標では仕事は面白くない。
10年後にメンバーと再開した時、「あの時の経験が今でも活きている」と言ってもらえる。
そんな1年にすることを常に考えてみるとよいそうです。
また、ハイパフォーマーの行動を誰もができるマニュアルに落とし込む。
実際に取材すると、思った以上にハイパフォーマーとそれ以外の人の仕事の進め方が違うものだそうです。
①ハイパフォーマーの「プロセス」を確認する、
②プロセス毎の「行動」を確認する、
③そのプロセスと行動を誰もができるように整理してみる。
また、マニュアルと作っても、徹底が不十分になっては意味がない。
不徹底になる理由の1つが、「時間がない」といったもので、オーバーワークになっていることも少なくないそうです。
頑張らなくてもできる体制を作るのが、上司の役割だそうです。
尚、新しい行動を要望する際には、まず評価と連動させてみると人の行動は変わるそうです。
⑤私の所感
前職、前々職の仕事で部下を持ったケースでも、ここまで体系的に考えて対応していなかったと反省しました。
また、特に部下の将来と今の仕事をマッチさせ、やりがいを導き出す。
チームとしての方向性を持たせることに面白さを感じました。
私が今就いている仕事は、年間何件も受注できるものではなく、数年間掛けて受注していく息の長いプロジェクトになりますが、だからこそ、モチベーションを切らさず、やり切る力が求められていると思います。
少し人事的な側面も含めて、対応してみようと思いました。
本書は、私が触れた内容をより体系的に、具体例も含めて書いてありますので、興味があれば、是非読んでみてください。