本日は、P.F.ドラッガー著作 上田惇生さん訳 ダイヤモンド社出版「経営者の条件」を紹介します。
ドラッガーさんの作品は、若いころに読んだきりでしたが、当時経営者向けの本が多く、あまり自分自身が理解しなかった記憶があります。
しかし、ある程度会社でも責任ある立場になりつつある中、規格外さんの投稿の紹介から、この本を改めて読んでみる価値はあると考え、手に取ってみました。
目次
第1章 成果をあげる能力は修得できる
第2章 汝の時間を知れ
第3章 どのような貢献ができるか
第4章 強みを生かせ
第5章 最も重要なことから始めよ
第6章 意思決定とは何か
第7章 成果をあげる意思決定とは
終章 成果をあげることを習得せよ
ほかの人間の仕事ぶりに責任をもつ経営管理者であろうと、主として自分の仕事だけに責任をもつ独立した専門家であろうと、成果をあげることに対して、報酬を支払われることに変わりがない。
成果をあげないならば、いかに多くの知力と知識を使い、いかに多くの時間を使おうとも、業績とはならない。
そして成果をあげている者はみな、成果をあげる力を努力して身に付けてきている。
そして彼らのすべてが、日常の実践によって、成果をあげることを習慣にしている。
これがまえがきです。
①成果をあげる能力は修得できる
近年の仕事は、知識を基盤とする組織が社会の中心的な存在であり、筋力や熟練技能ではなく、学校で教育を受けた人たちが、多くの組織の中で働くようになっている。
彼らは、組織の目的に貢献して初めて成果をあげることができる人たちである。
知識労働者は、直接あるいは細部にわたって監督することはできない。
知識労働者は、自らの仕事を業績や貢献に結び付けるべく、すなわち成果をあげるべく、自らを監督しなければならない。
知識労働者は、それ自身が独立して成果となるようなものは、何も生み出さない。
一方、知識、アイデア、情報を生み出し、だれか他の者、ほかの知識労働者が利用し、新たな生産物に変えて、初めて現実の世界のものとして役に立つ。
すなわち、自らの成果を他者に供給し、組織の活動あるいは地位のゆえに、組織の活動や業績に対して、実質的な貢献を行うべき知識労働者は、すべてエグゼクテイブである。
組織の活動や業績とは、企業の場合、新製品を出すことであり、市場で大きなシェアを獲得することである。
そして、組織のそのような能力に対し、実質的な影響をもたらすべきエグゼクテイブは、自ら意思決定を行わなければならない。
しかも自らの貢献について、責任を追わなければならない。
知識労働は、量によって規定されるものではなく、コストによって規定されるものでもない。
成果によって規定される。
知識労働者として、自らの組織の業績に貢献すべく行動し、意思決定を行う責任をもつあらゆる人のために書いたものなんだそうです。
一方、顧客は外部におり、組織の内部に生ずるものは、努力とコストだけである。
エグゼクテイブは、外部の現実世界に直接4触れるべく、特別な努力を払わない限り、組織の内部に焦点を充てることになる。
社会的組織は、存在自体が目的ではなく、社会の機関であり、外部の環境に対する貢献が目的である。
また、外部の世界における真の重要な事象は、傾向ではなく、変化である。
意識的に外部の世界に近づく努力しなければ、内部の世界の力によって、外部の真の存在が見えなくなってしまう。
また、一つの分野に優れた能力を持つ人間は、他の分野については、並みの才能しか持たない。
従って、一つの重要な分野で強みをもつ人間が、その強みを仕事に使えるように、組織をつくることを学ばないといけない。
また、その人間の仕事ぶりの向上は、人間の能力の飛躍的な増大ではなく、仕事の方法の改善によって図らなければならない。
ではエグゼクテイブが成果をあげるために身に付けるべき習慣的な能力とはなにか。
①何に自分の時間がとられているか知る事である。
そして残されたわずかな時間を体系的に管理する事である。
②外部の世界に対する貢献に焦点をあてることである。
仕事の過程ではなく、成果にその勢力を向けること、
「期待される成果は何か」を自問することからスタートしなければならない。
③強みを基準に据えることである。
上司、同僚、部下についても、彼らの強みを中心に据える。
できることを中心に据えなければいけない。
④優れた仕事が際立った成果を上げる領域に、力を集中する。
優先順位を決定し、その決定を守るように自らを強制しなければならない。
最初に行うべきことを行う。
二番目に回すべきようなことはまったく行ってはならない。
⑤成果を上げるよう意思決定を行う。
行うべきは、基本的な意思決定であり、一つの正しい戦略についての意思決定である。
②汝の時間を知れ
成果をあげるべき者の仕事の多くは、たとえごくわずかの成果をあげるためだけであっても、まとまった時間を必要とする。
成果をあげるためには、時間をかなり大きなまとまりとして使わなければいけず、人に何かを伝え、計画や方向づけ、仕事ぶりについて肝心なことを分からせ、相手に影響を与えたいのであれば、最低一時間、多くの場合それ以上を必要とする。
知的労働者に対しては、自らを方向づけさせなければならない。
従って、何がなぜ期待されているかを理解させておかなければならない。
知識労働者が多少なりとも成果や業績をあげるためには、組織全体の成果や業績に焦点を当てなければならず、彼自身も自分の目を仕事から成果へ、専門分野から外部の世界、すなわち成果が存在する唯一の場所たる外部の世界へ向けるための時間を必要としている。
知的労働者が成果をあげている組織においては、組織のトップたちが、定期的に時間を割いて、時には新人を含め知識労働者と会い、「組織のトップとして、あなたの仕事について何を知らなければならないか」「この組織について、いいたいことは何か」「われわれが手を付けていない機会は、どこにあるか」と訊ねる。
また、話し合いでは、ゆとりがあると感じられなければならない。
更に仕事の関係に人間関係が加わると、時間はさらに必要となる。
組織が大きくなるほど、エグゼクテイブが実際に使える時間は少なくなる。
人事についての意思決定の必要も頻繁に出てくる。
しかし、人事についての決定こそ、手早く行うと間違うことが多い。
成果をあげるエグゼクテイブのなかには、意思決定の早い人もいれば、遅い人もいる。
しかし、人事についての意思決定に限って、彼らはみながみな、時間をかけて行い、最終的な決定の前に、何度も仮の決定を行っているそうです。
また、時間浪費の原因を整理する上で、
①システムの欠如や先見性の欠如からくる時間の浪費。
ルーテイン化による非常に優秀な人が過去の恐るべき危機から学んだことを体系的且つ段階的に纏めてしまう。
②時間の浪費は、しばしば人員の過剰から起きる。
人間が少なすぎれば、仕事の出来上がりも良くないかもしれない。
しかし、一般的な状況は、成果をあげるためには、人が多すぎ、仕事をするよりも互いに作用しあい影響しあうことにますます多くの時間が使われている状況にある。
③時間浪費のもう一つの原因は、組織上の血管であり、会議の過剰である。
会議は目的をもって方向づけしなければならなく、あらゆる人間が常に会議をしている組織は、だれも何事も成し得ない組織である。
④最後に、時間を浪費させるもう一つの大きな原因が情報にかかわる機能障害である。
組織の中で情報伝達がうまくされず、機会を逸することが起きる。
組織のトップの人たちには、重要なことや、貢献につながる事や、報酬が支払われている等の目的に使える自由な時間など四分の一もない。
成果をあげるためには、自由に使える時間をひとまとめにする必要があり、ある人は、週に一日は家で仕事をする。
また、ある人たちは、会議や打ち合わせなど日常の仕事を週に二日と決め、他の日の午前中は重要な問題についての集中的且つ継続的な検討に使っている。
もう一つかなり使われている方法が毎朝自宅で仕事をするという方法である。
ただ、いずれにせよ時間をまとめるための具体的な方法よりも、本当に自由な時間がどれだけあるか計算しなければならず、重要でない仕事がこの確保済の時間を蚕食していないかを光らせなければならない。
時間の管理は継続的に行わなければならない。
継続的に時間の記録を取り、定期的に分析しなければならない。
しかも、自分の自由にできる時間の量を考えて、重要な仕事については、締め切り日を自ら設定していかなければならない。
③どのように貢献ができるか
成果をあげるためには、貢献に焦点を会わせなければならない。
仕事から目を上げて、目標に目をむけなければならない。
「組織の業績に影響を与えるような貢献は何か」を自らに問わなければならない。
しかしエグゼクテイブの大部分が、下に対して焦点を合わせている。
成果でなく、努力に焦点を合わせている。
あるコンサルタント会社の社長が先方の会社の一人ひとりと合う際に、「あなたは、報酬に見合う何をしていますか」と聞く。
すると、「経理部長をしています」とか「販売の責任者です」とは応えるが、
「経営管理者たちが、正しい決定をできるように情報を提供しています」
「客が将来必要とする製品を考えています」
「社長が将来しなければならない意思決定について考え、準備しています」
などと答える者は稀だと言う。
いかに若い新入りであろうとも、貢献に焦点を合わせ、結果に責任を持つ者は、厳格な意味において、トップマネジメントである。
貢献に焦点を合わせることによって、専門分野や限定された技能や部門に対してではなく、組織全体の業績に対し、注意を向けるようになる。
成果が存在する唯一の場所である外部の世界に対し、注意を向けるようになる。
それぞれの専門分野や技能や部門と、組織全体や組織の目的との関係について、徹底的に考えざるを得なくなる。
組織の産出物の究極の目的である顧客や患者の観点から、物事を考えざるを得なくなる。
なお、あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。
すなわち、
(1)直接的な成果の領域、
(2)価値の創造と価値の再確認の領域、
(3)明日のための人材育成の領域の三つである。
第一の直接的な成果の領域は、企業においては、売上や利益などの経済的な業績である。
しかし組織には、第二の領域として価値へのコミットメントと価値の再確認が必要であり、常に目的をもたなければならない。
第三に、組織は、死という生身の人間の限界を乗り越える手段である。
組織は明日自らのマネジメントに当たるべき人間を、今日用意しなければならない。
そして次の世代は、現在の世代が刻苦と献身によって達成したものを当然のこととして、次の世代にとって基礎となる新しい記録を作っていかなければならない。
更にビジョンや能力や実績において、今日の水準を維持しているだけの組織は、適応の能力を失ったというべきである。
唯一確実なものは、変化であり、自らを変革できない組織は明日の変化に生き残ることはできない。
エグゼクテイブに最もよく見られる失敗の原因は、新しい地位の要求するものに応えて、自ら変化していく能力や意思の欠如である。
なお、この貢献に焦点を合わせることによってのみ
①コミュニケーションにおいて、自らの仕事において自ら貢献するエグゼクテイブは、部下にも責任をもつべきことを要求する、
部下に対し、「組織、および上司である私は、あなたにどのような貢献の責任をもたせるべきか」
「あなたに対し期待すべきことは何か」
「あなたの知識や能力をもっともよく活用できる道は何か」と聞く。
すなわち、まず部下が、自分はどのような貢献を期待されるべきか十分考えなければならない。
そのあとで初めて、上司には部下の考える貢献について、その有効性を判断する権限と責任が出てくる。
②貢献に対して焦点を合わせることによって、横へのコミュニケーションが生まれる。
その結果チームワークが可能になる。
知識労働者は自らの知識分野に関しては、プロでなければならない。
自らの能力や仕事に関して、自らに責任があると考えなければいけない。
一方仕事においては、彼らはますます、ほかの全く異なる知識分野の人たちとともに、特定の任務のために組織されたチームにおいて、責任ある一員として行動しなければならない。
③自己開発の成果もまた、貢献に焦点を合わせることに大きく依存する。
「組織の業績に対する自分の最も重要な貢献は何か」を自問することは、事実上、「いかなる自己開発が必要か」「なすべき貢献のためには、いかなる知識や技能を身に付けるべきか」「いかなる強みを仕事に適用すべきか」を考えることである。
④貢献に焦点を合わせるならば、部下、同僚、上司を問わず、他人の自己開発を触発することになる。
また、俗人的な基準ではなく、仕事のニーズに根ざした基準を設定することになる。
④強みを生かせ
成果をあげるエグゼクテイブは、人間の強みを生かす。
成果をあげるには、利用できるかぎりの強み、同僚の強み上司の強み、自分自身の強みをつかわなければならない。
組織の役割は、人間一人一人の強みを共同の事業のための建設用ブロックとしてつかうところにある。
まず人事においては、成果をあげるために、その人間ができることを中心に据えて、異動を行い、昇進させなければならない。
人事上の決定においては、人間の弱みを最小限に抑えるのではなく、強みを最大限に発揮させなければならない。
他人に成果をあげさせるためには、「彼はどのような貢献ができるか」を問わなければならない。
常に「何を非常によくできるか」を考えなければならない。
部下に対し、真に厳しい上司とは、それぞれの方法で立派な人間をつくる人たちであり、部下は何をよくできなければならないか、からスタートし、次にその部下が本当にそれを行うことを要求する。
更に成果をあげるエグゼクテイブは、何にもまして、上司の強みを完全に生かすべく努力しなければならない。
部下が無能な上司を倒し、乗り越えて、地位を得るなどは怒らず、上司がその無能や失敗のために更迭されても、序列の外からスカウトされた者があとを次ぐ。
一方、世渡りは別として、上司に認められ、活用されるようなカタチにおいて、自分の貢献に焦点を合わせることは可能になり、成果をあげるうえでの鍵となる。
従って、「上司は何がよくできるか」「何をよくやった」「強みを生かすためには、彼は何を知らなければならないか」「成果をあげるためには、私から何を得なければいけないか」を考えなければいけない。
一ページの要約が必要な人もいる。
分厚い報告書がなければ理解できない人がいる。
初めから関与したがる上司がいる。
時期が来るまでは何も聞きたくない上司がいる。
上司の強みを考え、その強みを生かすには、「何が」ではなく、「いかに」にも留意しなければならない。
自分の仕事においても、まず強みからスタートしなければならない。
上司がさせてくれないことや、企業の方針がさせてくれないことや、政府がさせてくれないことについて気にしすぎ、自分の時間と強みを無駄にしている。
成果をあげるエグゼクテイブは、してよいことであって、しかも、する値打ちのあることを簡単に探してしまい、してよいことを次から次へと行い、その結果同僚達には重くのしかかっている制約そのものが、彼らの場合は消えてしまう。
また、詳細な筋書があるとき、つまり十分考えておいたとき、もっともよく仕事のできる人がいる。
プレッシャーがあると最もよく仕事のできる人がいる。
期限前にようやく間に合って仕事を終わらせるくらいの方が良く仕事が出来る人がいる。
何よりも成果をあげるエグゼクテイブは、自分自身であろうとする。
自分が得意であると知っていることを、自分の得意な方法で行うことによって、成果をあげなければならない。
⑤最も重要なことから始めよ
力を集中するための第一の法則は、もはや生産的でなくなった過去のものを捨てることである。
そのためには、自分と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていない場合、いまこれに手を付けるべきかどうか」と問わなければならない。
エグゼクテイブなるものは、今日の資源を、明日のために使わなければならない。
昨日行った意思決定や、行動の後始末のために、今日、時間とエネルギーと頭を使わなければならなくなる。
しかし、過去からの警鐘たる活動や仕事のうち、成果を期待し得なくなったものを捨てることによって、そのような過去への奉仕は減らしていかなければならない。
優先順位の決定に関しては、以下が重要な法則となる。
(1)過去ではなく未来を選べ。
(2)問題ではなく機会に焦点を合わせよ
(3)横並びではなく独自に方向を決めよ
(4)無難で容易なものではなく、変革をもたらすものに照準を高く合わせよ
大きな業績をあげる者は、機会を中心に研究の優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないとみる。
マネジメントの世界でも、大きな成功を収める企業あh既存の製品ラインの中で新製品を出す企業ではなく、技術や事業のイノベーションを目指す企業である。
すなわち昨日の均衡の回復などよりも、機会を成果に転化する方が、はるかに生産的であり、「真に意味あることはなにか」「最も重要なことは何か」という観点から、時間と仕事について、自ら意思決定を行っていく勇気が必要となる。
⑥意思決定とは何か
意思決定とは何かを考える際、重要なのは異論を招くような独自性にあるのではない。
(1)扱うべき問題は、一般的であり、そのような問題は、ルールや原則を確立するための意思決定を通してのみ解決されるということを明確に認識していたこと
(2)意思決定が満たすべき要件、境界条件を明確にしていたこと
(3)意思決定を受け入れやすくするための妥協、適応、譲歩を気にする前に、正しい答え、すなわち境界条件を満足させる答えについて徹底的に検討していたこと
(4)意思決定の実施のための行動を意思決定そのものの中に組み込んでしまっていたこと
(5)意思決定の適切さや成果を結果によって検証するために、フィードバックを行っていたこと
⑦自分の所感‐やはり成果だよね。
ドラッガーの経営者の条件、固くて難しい本だと偏見を持っていましたが、経営の本質論「成果を上げること」に集中していました。
1995年出版でしたが、今読んでも新鮮でした。
やっぱり担当であろうと経営者であろうと成果を上げることに集中しなければいけないということですね。