大型案件営業では、競合ではない会社を情報網にする-商社とエンジニアリング会社の相性の良さを活かす

海外で大型案件を追いかけていると、案件情報は必ずしも顧客から直接入ってくるわけではありません。

むしろ、顧客とは直接関係のない会社から得た情報が、その後の案件形成につながることも多いです。

私が特に情報交換先として重視していたのが、設備のエンジニアリング会社の立場として、鉄鋼商社でした。

商社には、「企業の中身」が見えている

例えば鉄鋼分野であれば、鉄鋼商社には非常に詳しい人がいます。

現地の鉄鋼メーカーと毎月のように商談しているため、

・国内の需要動向

・輸出入の状況

・各社の販売戦略

・販売価格

・生産状況

・経営状況

・経営者やオーナーの考え方

など、外から公開情報を見るだけでは分からない情報を持っていることがあります。

特に興味深いのは、単なる会社情報だけではなく、「その会社が実際にどういう動きをしているのか」まで把握している人がいることです。

もちろん、秘密情報を聞き出すという話ではありません。

公開情報や日々の商談、業界内の会話から得られる情報を後悔することで、市場変化や企業の動きを立体的に理解する事です。

エンジニアリング会社には、「工場の現場」が見えている

一方、プラントや設備のエンジニアリング会社の立場からすると、設備を収めたりメンテナンスをしたりしている会社は工場の中に入っています。

そのため、

「この工場は設備が古くなっている」

「このラインはもう少し増強する必要がある」

「この会社は生産能力を挙げようとしている」

「生産できる生産品種はどういったもので、稼働率はどうなっている」

といった、設備投資に繋がる前段階の変化を把握できます。

また、経営者との対話も含め、設備投資計画の詳細を早めに聞ける立場になりえます。

設備メーカーにとっては、設備投資計画が正式に発表されてからでは遅いです。

その前に

「何かが動き始めている」

「経営者がこの分野に進出したがっている。従って生産量を増やそうとしている」

といった兆候をつかめれば、その段階から顧客や関係者との接点を作ることができます。

つまり、エンジニアリング会社は工場の変化を知るセンサーになります。

さらに、東南アジアのオーナー(経営者)と工場長の繋がりが高くないケースもあり、そこを繋ぐこともささやかながら、付加価値になりえます。

商社とメーカーが競争関係にならないことも大きい

もう一つ重要なのが、情報交換のしやすさです。

過去には、商社が顧客の前面に立ち、複数のメーカーを束ねて設備を販売するような商談もありました。

しかし現在では、メーカーが顧客と直接対応するケースが増えています。

その結果、商社と設備メーカーが直接競合する場面が以前より少なくなりました。

さらに、私が扱っていた設備と、商社が扱う鉄鋼製品は、基本的に商材はバッテイングしません。

つまり

「この情報を教えたら自分の商売をとられる」

というインセンテイブは比較的小さいです。

ここが情報交換では非常に重要でした。

海外に行くと「系列」よりも情報が優先される

そして、海外得業をしていて面白かったのが、国内ほど商社の系列を意識する必要がありませんでした。

日本国内では、

「〇〇商事だから〇〇系列」

といった関係性が意識されることもあります。

しかし海外に出ると、現地の市場情報を持っている人であれば、系列に関係なく貴重な情報交換相手となります。

むしろ、

「この国の鉄鋼市場について一番詳しい人は誰か」

「この工場の設備投資について一番詳しい人は誰か」

という視点で考えることが重要となります。

私が海外に行った際、商社、メーカーなど業界の中で情報を持っている人を探すようにしていました。

そしてそういう人を見つけたら、できるだけ毎回会うようにしていました。

私にとっての「キーマン」は役職ではない

ここでいうキーマンとは、社長や部長といった肩書のある人ではありません。

私にとってのキーマンとは、

「その業界、その会社、その地域について、他の人より多くの情報を持っている人」

です。

例えば

「この国の鉄鋼メーカーについて詳しい営業マン」

「現地企業のオーナー一家の経営計画を理解している人。どういった形で事業を伸ばそうとしているか」

などです。

役職が高い人よりも、実際に顧客や現場と日々接している人の方が、具体的な情報を持っていることも少なくありません。

だから、私は、海外営業では「誰が偉いか」ではなく、「誰が情報を持っているか」を意識して人を探していました。

一度会って終わりではなく、毎回会う

そして、こうした情報交換で大切なのは、一度会って情報をもらって終わりにしないことです。

海外出張のたびに

「最近どうですか」

「市場は変わりましたか」

「最近、どの会社が動いていますか」

という話をします。

こちらからも日本で集めた情報や他国で得た情報、設備投資計画などの情報を伝えます。

すると、単発の情報交換ではなく、少しずつお互いの情報網が広がっていきます。

ある時は、自分が絵一驚した情報が相手の役に立ち、別のときには相手から聞いた情報がが自分の案件形成につながります。

こうした関係を長く続けていると、ニュースになる前の小さな変化が見えるようになってきます。

情報網は「人数」より「質」と「継続性」

海外営業で人脈を広げるというと、名刺の枚数を増やすことをイメージするかもしれません。

しかし、私が重視していたのは人数ではありません。

情報を持っている人を見つけ、その人と継続的に情報交換する事です。

そして自分も相手に情報を提供することです。

商社、メーカー、コンサルタント、現地企業など、異なる立場の人から情報を集めることで、一つの会社から見ただけではわからない市場の姿が見えてきます。

大型案件は、案件が公表されてから営業を始めるのでは遅いことが多いです。

だからこそ私は、案件そのものだけを見るのではなく、案件の周辺にいる「情報を持っている人」を探すことを大切にしてきました。

それが結果として競合より早く市場の変化を察知し、先行して案件形成を始めるための情報網になっていきました。

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本記事で紹介した考え方は、海外大型案件を発掘・形成し、受注につなげる営業プロセスの一部です。市場分析、顧客開拓、交渉、案件管理など、これまでの経験を体系的にまとめています。

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