海外の大型案件を営業していると、私が顧客とのやり取りの中で最も気にすることがあります。
それは、
「この顧客は、本当にお金を払えるのか?」
ということです。
営業というと、「どれだけ大きな案件を見つけるか」「どれだけ魅力的な提案をするか」「どれだけ顧客との関係を深めるか」といったところに目が向きがちです。
もちろん、それは重要です。
しかし、大型設備案間では、それ以前に確認しておきたいことがあります。
そもそも顧客に投資する資金があるのか。
そして、
投資した設備の代金を、きちんと支払える事業基盤があるのか。
ここを見誤ると、営業活動を何年続けても、案件が実行段階案で進まないことがあります。
「計画がある」と「投資できる」は全く違う
以前、顧客の顧客が鉄鋼プラントへの設備投資を検討するところまで踏み込んだ案件がありました。
しかし、その営業活動の過程で見てきたのは、その手前にいる鉄鋼メーカー自身が、必ずしも十分に利益を挙げている会社ではなかったという現実です。
こうした顧客と付き合っていると、営業担当者は、様々な計画を聞かされます。
「来年にはこの設備を入れたい」
「この市場に進出したい」
「将来的には生産能力を倍増したい」
「新しい製品を作りたい」
話を聞いていると、とても魅力的な案件に見えます。
しかし、何年たっても実際の発注には至らない。
これは決して珍しいことではありません。
不動産の世界には、「千三つ」という言葉があります。
それくらい、世の中には、「計画段階では存在していても、実際には実現しない話」が多いということです。
設備投資についても、私は似たような感覚を持っています。
投資計画があることと、実際に投資できることは全く違います。
本当に投資できる顧客には共通点がある。
では、どのような顧客なら実際に設備投資まで進むのでしょうか。
私がこれまで海外の顧客を見てきた経験では、既存のビジネスについて常印菅家抜いている顧客には、比較的共通した特徴があります。
例えば、
・自分たちの商品をどの市場で売るのかを常に考えている
・新しい付加価値をどう付けるかを考えている
・世界の展示会に足を運んでいる
・あたらいい設備や技術を自分の目で確認している
・競合企業の動きを研究している
・販売ネットワークを積極的に広げている
・原材料や設備だけでなく、最終製品の市場迄見ている
・価格戦略や商品戦略を常に改善している
例えば、私が以前付き合ったインドネシアの華僑系の顧客もそうでした。
アメリカ、ヨーロッパ、ロシアなど世界中の展示会を訪問し、新しい設備や製品について自分自身で情報を集めていました。
また、華僑間のネットワークを活用して販売先を広げ、市場についても非常によく勉強していました。
こちらが情報を提供するだけではありません。
こちらから世界の鉄鋼市場やメーカーの戦略、アメリカ市場の動向を伝える一方で、顧客からはインドネシア各地域の市場動向や販売事情を教えてもらう。
まさに、お互いに情報と智慧を交換する関係です。
こうした顧客と話していると、設備投資の話も単なる「夢物語」ではなくなってきます。
「この市場が伸びている」
「だから、この商品を作りたい」
「そのためには、この設備が必要になる」
「この販売ネットワークががあるから、これだけ売れる可能性がある」
というように、投資の背景にある事業そのものがみえてくるからです。
設備ではなく「顧客の事業」を見る
設備営業をしていると、つい設備そのものに目が向いてしまいます。
しかし、本当に見るべきなのは、設備ではありません。
その設備を使って、顧客がどのように利益を生み出すのか。
ここを見ることが重要だと思っています。
例えば、年間10万トンの設備能力を持つ設備を導入したとしても、その製品を誰に販売するのでしょうか。
原材料はどこから調達するのでしょうか。
競合と比べて何が優れているのでしょうか。
販売価格は幾らになるのでしょうか。
その価格で利益は出るのでしょうか。
そして、その利益から設備代金は支払えるのでしょうか。
こうしたことを考えていくと、設備投資案件を見る目が変わってきます。
「設備が欲しい」という顧客を見るのではなく、
「設備を使って新しい価値を生み出し、それによって利益を増やそうとしている顧客」を見るようになるからです。
顧客を見極めるためには、営業自身も情報を持つ必要がある
もちろん、顧客の財務諸表だけを見れいれば十分という話でもありません。
営業として重要なのは、顧客と会話する中で、その会社がどれだけ自分たちの事業を考えているかを見抜くことです。
そのためには、営業自身も情報を持っていなければなりません。
世界の市場はどうなっているのか。
競合メーカーは何を考えているのか。
新しい設備や技術には何があるのか。
他国ではどのような事例があるのか。
顧客の競合企業は何をしているのか。
そうした情報を持っていれば、顧客との会話の質が変わります。
「最近、この市場でこういう動きがありますが、御社はどう見ていますか?」
「海外ではこういう設備を導入sてこういう商品を作っている企業があります」
「御社の販売ネットワークなら、こういう商品にも可能性があるのではないでしょうか」
といった話ができます。
つまり、営業が単なる設備の売り手ではなく、顧客の事業を菅家る相手になるのです。
「売れる顧客」を探すのではなく「一緒に事業を作れる顧客」を探す
大型案件では、目の前の案件金額だけを見てはいけないt思っています。100億円の案件でも、実行可能性が低ければ、営業活動に費やした時間が無駄になってしまう可能性があります。
一方で、今は小さな案件でも、
「既存事業をどう変えていくか」
「次にどんな付加価値を作るか」
「どのような市場に進出するか」
を真剣に考えている顧客であれば、将来的に大きな設備投資に繋がる可能性があります。
だからこそ、私は、「この会社は、これからも投資を続けられる会社なのか」という視点で顧客を見るようになりました。
そして、そのためには、営業自身が常に新しい情報を集め、顧客に提供できる存在であることが重要です。
顧客から情報をもらうだけではなく、
「この営業と話すと、世界の新しい事例や市場の動きが分かる」
と思ってもらえる関係を作る。
そうすれば、顧客の事業戦略も少しずつ見えてきます。
その結果として、
「この会社なら本当に投資するかもしれない」
「この案件は実行案で進む可能性がある」
「個の顧客とは長く付き合う価値がある」
という判断ができるようになります。
最後に
大型設備営業で縦横なのは、単純に「案件をたくさん見つけること」ではありません。
実際に投資できる顧客をみつけること
そして、
その顧客がなぜ投資するのか、その事業の背景前理解すること。
さらに
顧客自身がまだ気付いていない可能背迄、一緒に考えられる営業になること
私は、これが大型案件の営業における顧客選定の基本ではないかと思っています。
設備を売る前に、顧客の事業を見る。
案件を見る前に、顧客を見る。
そして顧客を見るために、自分自身が世界の市場や技術、企業の動きを学び続ける。
結局のところ、良い顧客との出会いは、営業自身の情報収集力と顧客への情報提供力によって引き寄せられるものなのかもしれません。
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本記事で紹介した考え方は、海外大型案件を発掘・形成し、受注につなげる営業プロセスの一部です。市場分析、顧客開拓、交渉、案件管理など、これまでの経験を体系的にまとめています。
