巷では、消費財メーカーに向けた「ブランド戦略」「マーケテイング戦略」といった本は数多く出版されています。
一方、法人営業に携わっている方ならば、その手法について書かれた書籍が少なく、ノウハウが業界ごとでしか語られない、若しくは公開されていないと感じていませんか。
法人営業について、共通項として語られていないのは、
①顧客に対する守秘性が高く、沢山の成功事例があるにも関わらず、自社のノウハウとして語られて来なかったこと
②業界ごとにその営業手法は大きく異なると判断され、法人営業という機能で語られることが少なかったこと
が挙げられます。
しかし、法人営業の共通点があるとすれば、何か。それは、「会社の司令塔」であるということです。その理由について、消費財メーカーとの違いに触れながら、これから解説していきます。
①消費者相手の営業と、生産財を扱う法人営業の違い
何故、法人営業が「会社の司令塔」なのかを説明する前に、法人営業の対象顧客はどういった特徴があり、提供する生産財等の法人営業と消費者に向けた営業とは、どのような違いがあるのかについて簡単に触れていきます。
世の中で「営業」といっても、この法人向けの営業と消費者向けの営業では役割、売り込み方が大きく異なります。
消費財メーカーは、消費者に対して完成品を提供、また世の中で認知してもらうためにCMなどの広告を打ち、自社のブランド/販売経路などを広げていきます。
一方、法人営業の対象となる生産財メーカーは、各業界の企業に向けて、自社商品の機能をカスタマイズし、客先商品の原材料若しくは生産工程、機能として製品が活用されます。
そこに営業としての役割に大きな違いがあります。
②法人営業の相手先は特定少数のプロ集団
まず、同じ営業といっても、消費者向けの営業と法人営業の違いとして、消費財の取り扱う顧客が不特定多数なことに対して、法人営業が取り扱う顧客は、明確に顔が見える特定少数の企業(プロ集団)であることです。
また、消費財が、商品のニーズについて消費者アンケートなどを使って広く集めることができますが、そのニーズは必ずしも正確には伝わってくるわけではなく、また人によって違います。
一方、生産財の顧客は、例えば強度や加工度など、具体的な要望をプロがプロの言葉で具体的に語ります。
また、消費財は、不特定多数の顧客への認知度が大切で、広告、宣伝、販促が受注に直接結びつきますが、生産財の場合は、CMだけでは、簡単に受注には結びつきません。
③法人営業の役割は、企画から販売までに責任を持つ会社の司令塔
更に、消費財の場合、販売と企画の責任が明確で、その商品が売れるか売れないかの責任の大半は企画部門にあります。
一方、生産財は販売が直接顧客からニーズをヒアリングし、その内容を生産や開発部門に伝達し、生産してもらうため、販売部門が全ての責任を負うこととなります。
つまり、販売と企画は合体していると言えます。
纏めると、法人営業の役割は、顧客となる特定のプロ集団に対して、先方の求めるサービスをしっかり理解し、その内容を開発部門や生産部門へ伝え、顧客の要望にあった商品を作り、提供していく、その企画から販売までに責任を持つ会社の司令塔的な役割があるということです。
④私の法人営業理解の原点となった佐々木 常夫さんの本
なお、この法人営業に焦点を当てて出版した本としては、東レに長年勤めあげた佐々木 常夫さんの「「本物の営業マン」の話をしよう」(PHPビジネス新書)「本物の営業マン」の話をしよう (PHPビジネス新書) | 佐々木 常夫 |本 | 通販 | Amazonがあります。
この本に書かれていた考え方を私自身の営業スタイルに全面的に取り入れていった経緯があります。
例えば、私がインドネシアでの華僑から受注した際には、まず市場/顧客動向を把握し、顧客へアプローチ、顧客の願望を引き出し、具体的な計画づくりに顧客/社内を巻き込み、クロージングまで持っていきました。
⑤纏め
①B to B向けの法人営業というのは、少数のプロ集団(企業)相手を相手に取引を行います。
②従い、自社の商品をそのまま販売すればよいわけではなく、顧客の要望をヒアリングし、社内で調整し、ニーズに合った商品を提供していく橋渡しになることが法人営業の役割です。
③つまり、受注前のプロジェクトの立案/企画/実行に関する「会社の司令塔」になることです。
まず、この考え方に立つことが、法人営業で大きな成果を上げる第一歩となります。