海外の大型案件を営業として進めていると、顧客との関係だけではなく、社内の情報をどのように流すかが非常に重要になります。
私はこれまで、大企業の組織の中で仕事をする中で、一つ強いストレスを感じていました。
それは、
「上司に報告しておけば、それで仕事をしたことになる」
という仕事の進め方です。
上に報告するだけでは、顧客との約束は守れない
大企業では、組織上のレポートラインが明確になっています。
担当者から課長、部長、さらにその上の組織長へ報告する。
もちろん、これを必要なことです。
しかし、海外大型案件では、それだけでは仕事が前に進みません。
営業、技術、調達、契約、経理、海外拠点など、多くの関係者が同時に動く必要があります。
しかも案件によっては、
・日本の営業部隊
・日本の技術部隊
・中国の合弁会社
・現地の顧客
といった複数の組織をまたいで仕事をすることになります。
このような案件で、情報が一度中間管理職で止まってしまうと、次のアクションが遅れます。
そして、その遅れは最終的に顧客への回答の遅れにつながります。
更に、社内での共有が部内でもされないと、新しい共有知が同僚に蓄積されず、人材育成の観点でも、明らかに非効率になります。
私はそこに強い問題意識を持っていました。
「情報漏洩を防ぐ」より「必要な人に早く伝える」
もちろん、社内の情報管理は重要です。
しかし、私が経験してきた大型案件では、情報を必要以上に閉じてしまうことによる弊害の方が大きいと感じることがありました。
例えば、顧客との商談で、
「次回の打ち合わせまでに、この点を確認します」
と約束したとします。
その約束を守るためには、営業だけでは解決できないことがあります。
技術部門に確認しなければならない。
中国の合弁会社に確認しなければならない。
場合によっては、社内の決裁者に相談しておく必要もある。
そう考えると、
「誰に報告するか」よりも、「誰が次のアクションをする必要があるのか」
を考えて情報を流すことが重要になります。
私は、情報を必要な関係者にタイムリーに共有することの方が、顧客との約束を守る上では重要だと考えていました。
商談をした日に、関係者全員へ情報を流す
そこで、ある海外案件では、自分なりの情報共有の仕組みを作りました。
東南アジアの顧客、日本の営業・技術部隊、中国の合弁会社が関係する案件です。
顧客との商談を終えたら、帰国してから報告するのではなく、商談をしたその日に関係者に報告する。
しかも、単に直属の上司だけに報告するのではありません。
関係する部門の部長や組織長まで含め、必要な関係者に一斉に情報を共有しました。
そこには
・顧客が何を考えているのか
・商談で何が決まったのか
・顧客から何を求められたのか
・次回までに何を回答する必要があるのか
・どの部分に社内対応が必要なのか
を簡潔に記載します。
重要なのは、単なる「出張報告」にしないことです。
報告メールで即座に対応を求める訳ではなく、あくまで「報告」の形式に留める一方、「次の商談までに何をしなければならいのか」までを共有する。
これがポイントでした。
帰国後に「誰が何をするか」を決める
そして、商談から戻ったら、関係者と簡単に対応方針を確認します。
例えば、
「この技術確認はAさん」
「中国側との確認はBさん」
「価格については営業側で検討」
「次回顧客訪問までにこの資料を準備する」
というように、次の商談までの宿題を分担します。
すると、営業が一人で案件を抱える必要がなくなります。
営業は顧客との次の約束に向けて全体を進める。
技術は技術の課題を進め、提案資料を纏める。
中国の合弁会社は中国側で必要な確認を進め、技術/営業に伝える。
そして、必要なタイミングで情報を持ち寄る。
こうして、顧客、日本、中国を一つの案件チームとして繋ぐことができました。
中間管理職で情報を止めない
私がこの経験から学んだことの一つが
『中間管理職ね情報を止めない』
ということです。
もちろん組織としての承認や決裁には正式なルートがあります。
それを無視するという話ではありません。
むしろ決裁が必要な人には早い段階から案件の状況を理解してもらう。
そして、決裁が必要になった時に初めて説明するのではなく、
『この案件はここまで進んでいる』
『顧客はこう考えている』
『次にこういう判断が必要になる』
ということを継続的に共有していく。
そうすれば、いざ判断が必要となった時にも、決裁者が状況を理解した上で判断できます。
これは大型案件では、非常に大きな意味を持ちます。
『報告するための情報』ではなく『動くための情報』
私は営業における社内コミュニケーションを、『上司に報告するためのもの』
だけとは考えていません。
むしろ、
『顧客との約束を果たすために、関係者を動かすためのもの』
だと考えています。
この違いは非常に大きいと思います。
報告を目的とすると
『自分の上司に報告した』
で終わってしまいます。
しかし、顧客との約束を目的にすると、
『次回の面談までに、誰が、何を、いつまでにやる必要があるのか』
という発想になります。
営業の仕事は、顧客と会社のあいだに立つことだけではありません。
顧客との約束を起点にして、社内外の人を動かし、一つの方向性に向かわせることも営業の重要な仕事です。
情報を持っていることより、情報を流して組織を動かす
海外大型案件では、1人の営業担当者が全ての知識を持っているわけではありません。
技術には技術の専門家がいる。
契約には契約の専門家がいる。
中国には中国のネットワークがある。
そして、会社が重要な判断をする経営者がいる。
だからこそ、営業に求められるのは、自分が情報を抱えるのではなく、必要な情報を必要な人につなぎ、組織として顧客に対応できる状態を作ることだと思います。
特に海外大型案件では、顧客との商談間隔が長くなることがあります。
その間に社内の動きが止まってしまえば、次回顧客の訪問時に顧客へ提供できるものもありません。
逆に、商談当日に情報共有し、次の商談までの宿題を関係者と分担しておけば、次に顧客に会った時には一歩前に進んだ話ができます。
私にとっては、
『情報を早く、正しく、必要な人に流すこと』
そのものが、海外大型案件を前に進める営業力の一つです。
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本記事で紹介した考え方は、海外大型案件を発掘・形成し、受注につなげる営業プロセスの一部です。市場分析、顧客開拓、交渉、案件管理など、これまでの経験を体系的にまとめています。
