海外大型案件は「顧客の顧客」を見ることで見えてくる

これまで前職・現職を通じて、海外での大型インフラ・設備案件の発掘に携わってきました。

このブログでは、そうした経験の中で得た「大型案件の兆しをどのように捉えるか」という視点を、数回に分けて紹介していきたいと思います。

海外で大型案件を発掘する際、私は「顧客だけを見る」ことでは十分ではないと考えています。

以前、インドネシアで製鉄プラント案件を担当した際、案件発掘のきっかけになったのは、次のような問いでした。

「インドネシアの有力鉄鋼会社は、誰に鉄鋼製品を販売しているのか」

通常であれば、自社が狙う業界の企業を調べ、その企業が今後どのような設備投資を行うのかを見ていきます。

もちろん、それは重要です。
しかし、それだけでは、その国で起こり始めている投資の「兆し」を捉えるのが遅れることがあります。

そこで私は、産業構造を二段階ほど広げて見るようにしていました。

  • この会社の顧客は誰か
  • その顧客は何を求めているのか
  • その変化によって、さらに川上の企業には何が起こるのか

この視点で市場を見ていくと、ベトナムでは、もともとメッキ鋼板を用いた建材加工を行っていた企業が、市場の成長や顧客ニーズの変化を背景に、鉄鋼分野への投資を進める動きが見えてきました。

そこで私は、「ベトナムで起きていることは、インドネシアでも起こる可能性がある」と仮説を立てました。

そして、建材用薄板メッキの鉄鋼会社にとって最大級の販売先である建材加工会社に注目しました。

調べたのは、例えば次のような点です。

  • この会社は今後、どのような市場を狙っているのか
  • 建材市場はどのように変化しているのか
  • その会社は、どこで付加価値を取ろうとしているのか

その結果、インドネシアでは、20年保証を付加価値とする鉄鋼製品をベースに、屋根・壁用建材でも20年保証を打ち出す動きが広がっていることが分かりました。

建材加工会社は、鉄鋼会社から材料を購入するだけではなく、自ら製品をブランド化し、鉄鋼会社以上の付加価値を付けて販売することで売上を拡大していました。

さらに、その建材加工会社自身が市場の変化を捉え、鉄鋼分野への投資を検討していることも見えてきました。

それまで「鉄鋼会社の販売先」としか見えていなかった企業が、新たな大型設備投資を行うプレーヤーとして浮かび上がってきたのです。

ここで重要なのは、単に、

「顧客は誰か」

を見るだけではない、ということです。

さらに一歩踏み込み、

「顧客の顧客は誰か」
「その会社は市場の変化をどう見ているのか」
「その変化によって、次に誰が投資するのか」

まで視野を広げる必要があります。

海外の大型案件では、「今、何を買っている会社か」だけを見ても不十分です。

むしろ重要なのは、

「この会社は将来、どこで付加価値を取ろうとしているのか」

を考えることだと思います。

大型案件の営業は、単に設備を売る仕事ではありません。

産業の川上と川下を見ながら、「次にどこで付加価値が生まれるのか」を考え、まだ案件になっていない投資の芽を見つける仕事です。

そして何より、その変化が具体的な設備投資になる前に入り込むことが重要です。

海外の大型案件では、目の前の顧客だけを追うのではなく、その先にある市場まで見る。

私自身、この考え方を実践してきた結果、複数の受注につなげることができました。一時期には、インドネシアのメッキ鋼板市場において高い受注シェアを獲得した経験もあります。

関連記事:海外大型案件営業の実践論

本記事で紹介した考え方は、海外大型案件を発掘・形成し、受注につなげる営業プロセスの一部です。市場分析、顧客開拓、交渉、案件管理など、これまでの経験を体系的にまとめています。

▶ 海外大型案件営業の実践論――「案件を探す営業」から「案件をつくる営業」へ