現地調査では有望な顧客を見つけることに専念する!

今日のテーマでは、海外法人営業が行う市場調査について話していきます。

皆さん、海外市場で販売していくうえで大切なこととは、どのようなことだと思いますか。

日本で販売している商品が、現地の顧客に刺さるかどうか分からない。

そもそも海外市場や顧客ニーズをどのように掴めばよいか分からない。

こんな悩みを抱える経営者や法人営業の方は多いかと思います。

勿論、現地を視察して顧客にニーズを聴き、場合によっては自社製品のカスタマイズという過程は、商品を販売したり、プロジェクトを受注するといった結果を得るためには、必須となります。

しかし、その前に法人営業の役割として、一番大切なことは、①その国が自社の商品が販売できる市場環境にあるのか、②更には有望な顧客を見つけることができるかです。

今日は、私が対応していた鉄鋼市場/鉄鋼プラント市場を例として、調査のポイントを伝えていきます。

1.有望な市場はどの国かを見つける

市場を調査するにしても、各国の状況は大きく異なります

例えば、東南アジア市場を例にとっても、シンガポール/マレーシア/タイは、鉄鋼市場の観点では、既に成熟期に入り、一人当たりGDPなども高く、この先、需要が増える見込みは高くありません。

一方、ベトナム/インドネシア/フィリピン/カンボジアなどは、若年層が多く、今後も人口が増える傾向にある事、また一人当たりGDPは未だ高くなく、今後の経済成長が期待されます。

私はまず国ごとに、人口/大まかな鉄鋼消費量/生産量/輸入量、更に年単位でどのような増減があるのかを調べていました。

更に自分が取り扱う対象商品となる自動車用メッキ鋼板/建材用メッキ鋼板の市場が各国ごとにどのように変化しているのかも現地鉄鋼商社へのヒアリングなども活用して把握していました。

その中で、調査すればするほど、生産設備の需要が増え続けていると当時理解したのがベトナムとインドネシアでした。その理由は3点ありました。

  • アメリカのセーフガード(関税による輸入制限措置)発動により、従来の輸出国であった中国/韓国/台湾からのメッキ鋼板に制限が掛けられることで、アメリカの需要家は、東南アジアの代替生産基地を探していました。その対象の筆頭がベトナム、更にインドネシア/フィリピンも候補としてありました。
  • ベトナム、インドネシアにおいては、自国の消費市場が拡大しており、その需要量と生産量のGAPが年間100万t以上(輸入材で代替)と広がり続けていたこと、更に、両国政府が中国からの安価な輸入材に対して、アメリカ同様の輸入制限措置をとることで、国内の鉄鋼生産の商売の可能性が広がっていたこと
  • 東南アジア域内の他の政府も中国材に対する輸入制限措置をとることで、東南アジア域内での輸出がしやすい状況に変わっていったこと

このように、各国の市場規模やその変化を見ること、また輸出入動向や政治的な要因など変化が起こる理由を把握することで、その国の3~5年先の市場動向を予測することが、極めて大事です。

2.有望な顧客はどの市場/地域を攻めているかを見つける

国ごとの需要/供給の状況を把握したら、次は①どの地域でどの程度消費されているのか②供給者は誰かを把握することです。

例えば、ベトナムであれば、北部のハノイ、南部のホーチミンを中心とした工業団地など工場建屋/民間住宅の屋根壁材が多く消費されるプロジェクトがどこに多いのかをまず把握します。

次に、その消費地に繋がる販売網を持っている顧客は誰かといったことを調査します。

インドネシアの屋根壁市場は、少し特殊で、首都ジャカルタのあるジャワ島では、屋根は瓦文化ですが、スマトラ、スラウェシ、カリマンタン島などは、金属瓦が主に使われています。

従って、実は人口が多いジャワ島だけではなく、他の島々の需要動向を理解し、販売網を広げている顧客が有望でした。

3.纏め

海外に向けた商品販売、プロジェクト受注といった成果を出すためには、その市場がどのような状況下にあるのかを理解し、ターゲットを絞ることが大切です。

その為にも、以下の2点が大切です。

  • 各国の状況を需要/供給/輸出といった観点から、時系列、各国毎に比較しながら、調査/分析していくことで、ターゲットとなる国を選定する。
  • また、輸出市場、各国政治状況の影響度合いによって、その国でのビジネス機会/投資機運が高まる傾向にあるか否かを見定める

国ごとに整理出来たら、

  • その国のどの地域でどの程度の需要があるのか
  • またその地域にアプローチしている顧客は誰なのかを調査していくことで、有望な顧客を捕まえる可能性が高くなる。

このような調査をすることは、まず受注する確率を大幅に高めることに繋がる自社にとって大切な市場調査となります。

また、次回以降お伝えする顧客へのアプローチの過程で、自国/他国の状況を把握することが、顧客にとっても有益な情報となります。