自分が投資する立場になった場合を想像して、顧客と接する-顧客から信頼される海外法人営業のアプローチ

前回のコラムで、市場の動向を統計面での調査、また起こっている事象やトレンドの把握、顧客の課題を把握していくことで、売り込み先が理解できるという話をしました。

インドネシア市場で独占した優良顧客の見つけ方-海外法人営業編 – アイアンマンブログ (ironman1977.com)

しかし、そこまで到達するのには、様々な顧客や関係者と会い、顧客が向き合う市場のインサイダーになる必要があります。

今回のコラムでは、売り込むメーカーの法人営業マン自らがインサイダーとなり、顧客に信頼される存在となるのかを公開していきます

売り込み側の立場にいては、顧客に信用されない。

買い手は、相手が売り込み先の営業マンとなると、自分にとって役に立たないものを買わされるのではないかと警戒します。

まずはこのバリアをいかに外していくかが大切なことです。そのためにも、相手の課題感が何かを把握することが大切です。

この感覚を思い知ったのが、インドネシアの印僑(インド系移民)に対して、鉄鋼プラント(メッキ鋼板ライン)の売り込みをしていた時のことです。

機械系商社の方の紹介で顧客に当社設備を売り込むこととなったのですが、詳しい設備仕様の説明以外は、顧客は全て機械系商社との対話を大事にしており、我々メーカーには目もくれません

以前その顧客と機械系商社の間で、別の鉄鋼プラントの商談を成約させたことがある信頼関係があることは分かっていましたが、相手が投資するにあたって知りたい情報をメーカーである私が持ち合わせていなかったことが、最大の理由であることに気づきました。

顧客が設備投資をするにあたって検討する課題は膨大

顧客と機械系商社が話している中で、顧客が最も気にしていたことは一点でした。今、設備投資を行い、メッキ鋼板生産/商売を始める/拡大した場合、十分に成功する可能性が高いのか。(設備投資した以上に利益を得ることができるのか)ということです。

その為には、

インドネシアメッキ鋼板市場の動向-需要/供給のバランス、数年先までの傾向

東南アジア、アメリカ、中国のメッキ鋼板市場動向、更に輸入材動向(当時中国からの安価な輸出材が世界中を脅かしていました)

③他国の輸出攻勢に対する自国政府の産業保護政策

インドネシア、ベトナム等国内外に存在する競合他社動向、シェア、戦略

顧客の立ち位置、顧客が目指す経営の方向性

メッキ鋼板の販売先、輸出先、販売先のニーズ把握

原材料(冷延鋼板)の仕入れ、ロジステイクス確保

ニーズに応じた機械設備、土地、資金の確保

上を見てください。

顧客にとって、機械への設備投資は、数ある経営課題のほんの一つに過ぎません。

機械系商社は、鋼板の輸入、輸出を生業とする鉄鋼系商社と繋がっており、上の情報の①④、⑥~⑦の情報を提供できたことが、顧客の信頼を勝ち取っている理由でした。

上記体験をしてから、私の営業アプローチは180度方向転換しました。

自社の商品どうこうの前に、顧客が対峙している市場、課題を把握し、理解することに努めることにしたのです。

外国人の利点を活用して、顧客が持っていない情報を収集する

顧客へのアプローチをする中で、顧客の様々な課題に対して、様々な鉄鋼商社との関係も構築し、情報収集し、対話する中で、顧客が最も喜ぶ情報は、他国での成功事例でした。

例えば、メッキ鋼板市場の拡大は、日本、韓国、台湾、中国で広がり、その次に東南アジアに広がる兆しが見えていました。

その中でも、近年ベトナムでは、

①アメリカ政府による他のアジア地域への貿易制限が強化される中で、アメリカ市場に対するベトナムからの代替輸出が広がる中、メッキ鋼板への設備投資を積極的に行い、主に輸出をメインに商売を拡大する業者

②ベトナム国内での工業化が進む中で、工場を中心とした建材加工製品需要の拡大から、建材加工の商売を広げて、メッキ鋼板製造に事業を拡大する業者

の二つのパターンが成功事例でした。

私は、東南アジア全体の営業を担当していたため、上記東アジアの動きと共に、ベトナムの業者がどういった戦略で何を気を付けながら、商売を拡大させているかをタイムリーに把握していたことから、インドネシアの顧客にとって、大切な情報元となっていったのです。

纏め

纏めると、以下の3点となります。

  • 売り手の立場を捨て、まず顧客の課題を把握して、その情報を提供できる立場になることで、顧客からは初めて相談相手(コンサルタント)の立場として、信頼を勝ち得ること
  • 顧客が自社商品の購入(設備投資をする)にあたって、検討する課題は沢山あり、その情報を持っている顧客以外の関係者からも情報を収集することで、ようやく面で見えてくるものがあること。その情報をつかむよう継続的に関係者にアプローチすること。
  • 自分自身が海外営業の立場であれば、その国にはない情報を提供することで、先方にとって価値のある人間になれる。特に他国での成功事例は、貴重な情報となりえること

如何でしたか。

海外での法人営業に関する質問/問い合わせがあれば、連絡ください。回答できるものは丁寧にお答えします

また、本コラムでは引き続き、海外の法人営業に関する価値ある情報を提供していく予定です