本日は、半導体向け単結晶シリコンのスライス切断(シリコンウェハー)後の
①ウェハーグラインデング(削る)装置、
そして半導体後工程における
②バックグラインデイング(裏面研削)装置、
③ウエーハ研磨(ポリッシング)装置、
④ウエーハを切り出すダイシング装置
にて、世界シェア6割超のDISCOを紹介します。

この「切る、削る、磨く」技術を極限まで突き詰め、半導体分野の進化に貢献している日本企業という日本人の強みを発揮しそうな分野で1970年代以降、継続して活躍し、今も無双しているというのが、興味深いと私は感じました。

尚、このDISCOも柳下裕紀さんが投資している会社で、以下のサロンにて紹介しています。
企業のValuation価格の算出も含めて詳しく聞きたい方は、以下の講座をWebにて購入することができます。
『Aurea 人生と投資の会』第2ステージ・第212回卒業生サロン一般募集の御知らせ | 蓮華 with にゃんこ達
なお、DISCOは1937年に広島県呉市にて関家 三男さんが砥石メーカーとして創業。
今でも創業家出身者が経営者の企業です。
戦艦大和の建造で知られる呉海軍工廠があり、呉はハイテク産業のメッカだったそうですが、DISCOが後発だったことから、官需を受注できずに、民需を求め、本社を東京に。
そこで電力計メーカーから「電気の使用量を計測するための積算電力計の内部にあるC型の磁石の先端を研削、研磨する必要があり、このC字型磁石研削用の砥石を作れないか」という依頼に応え、当時としては驚異的な厚さ1.2ミリの高精度薄型砥石の開発に成功。
1956年には、万年筆メーカー(Pilot)の依頼により、厚さ0.13~0.14ミリ、直径100ミリのレジノイド砥石の開発に成功。
更に、1968年に厚さ40ミクロンの超極薄砥石「ミクロンカット」の開発に成功。
一方、高精度の砥石が割れるという顧客からのクレームに対して、DISCO自身は、砥石ではなく装置に問題があると判断し、切断装置そのものの開発にも乗り出していくことで、ダイシングソーの開発に成功。
そのデモ機をシリコンバレーの半導体製造装置の展示会に持っていき、大きな反響を呼び、砥石メーカーから砥石を用いた精密加工装置メーカーへと変化していったそうです。
その後半導体メーカー向けダイサー、グラインダーを開発し、半導体分野に更に進出していきます。
2004年には、東京都大田区のアサヒビール工場跡地に本社とR&Dセンターを移転。
一方、呉市呉工場、桑畑工場、そして長野県茅野工場を拡大し、生産は全て自社にて日本で行っています。
上記の内容は、以下の社史にて説明があります。
尚、DISCOの強みとして、柳下さんが上げているのは、ダイシングブレードやグラインダ用砥石など精密加工用のツールを定期交換し、グローバルなアフターケア体制を構築していること
さらに、アプリケーションラボを活用し、年間数千件の顧客の次世代半導体試作品をデイスコのエンジニアと共同で最適な加工手法やプロセスを無償で開発する。
この過程において、最適ブレードの選定、回転数、送り出し速度など、無数のパラメータの組み合わせを最適解を導き出すことが、顧客の他メーカーへのスイッチングコストを高めていることを挙げています。
以下の2024年度第4四半期の決算説明会資料を見ても、ダイサ、グラインダといった精密加工機器が全体売上の64%を占める一方、消耗品の供給となる精密加工ツール(砥石)が21%を占めています。
DISCOはこの精密加工ツールの販売を通じて、顧客の生産動向、そしてニーズを継続的に把握しながら、上に書いたアプリケーションラボにて、次世代半導体開発にも関わっていく体制があることが、顧客から常に注文を受ける圧倒的なビジネスモデルの強さを示しているんだそうです。

DISCOの有価証券報告書でも、以下のようにあります。
「事業の特徴は「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術」を核として、単に製品を販売するのではなく、装置、消耗 品、そして、装置と消耗品を組み合わせ最適な加工条件を導き出すアプリケーション技術、これら3つの技術力 を背景に、顧客の加工課題に対するトータルソリューション(総合的な解決策)を提供する点です。
ビジネステーマの「高度な」とは、より難易度の高い精密加工を表現していますが、この精密加工の技術領域で は、装置に取り付ける精密加工ツールの回転数や送り速度といった加工条件の僅かな違いにより、加工結果が大 きく異なります。
これを解決するのが、1960年代から開発しているアプリケーション技術です。
最適な装置と消耗品の選択と、この細かな加工条件設定は、「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術」に精通したエンジニアでないと難しく、顧客において実施することは容易ではありません。
そこで、当社グループは、顧客から加工対象物を 預かり、テストカットと呼ぶ無償の加工検証を実施します。
このテストカットでは、蓄積した精密加工のノウハウに基づくアプリケーション技術を駆使して、専門のエンジニアが試行錯誤しながら顧客の技術課題の解決を試みます。
そして、技術課題を解決した上でテストカットの結果を顧客にフィードバックします。
このテストカッ トは、経営戦略の打ち手として下記の様々な効果をもたらすとともに、次の打ち手に繋がる役割を果たしています」
その結果、半導体業界の顧客の生産量が増えるにつれ、市場の60%超のシェアを占めるDISCOのグラインデイング、ダイシング装置及び消耗品が常に売れ続けるといった循環になっているんだそうです。
結果、2020年から2024年間での5年間でみても、売上高の推移が継続して、右肩上がりで伸びているのが分かります。

私の所感としては、DISCOが元々砥石メーカーであったことで、消耗品の開発・製造・販売が祖業であったことで、プラントメーカーにありがちな、設備を売って終わりではなく、その後の消耗品の販売、アフターメンテナンスを通じて、顧客との繋がりを強化するビジネスモデルを作ってきたこと。
その繋がりから、今度は次世代半導体の試作品などの開発に関する無償協力をすることで、必ず顧客がDISCOに発注するビジネスモデルを構築出来ていることで兎に角顧客との繋がりを深めているところが、一般的な装置供給メーカーとの大きな違いだと感じました。
また、「切る、削る、磨く」技術を微細化に向けて突き詰めていくといった辺りが、日本の製造業にありがちな拘りが強みとなっている点が、身の丈に合った経営でありながら、世界シェアをとっているところに親近感が沸きます。
株価は、半導体業界ということで、変動幅は大きいものの、この数年で何倍にもなっていますし、業績から見てみると、非常に安定して伸びていることが分かると思います。
良かったら、投資対象として見てみては如何ですか。

