「セールス イズ 科学的に成果をコントロールする営業術」を読んで

本日は、今井 晶也さん著作「セールス イズ 科学的に成果をコントロールする営業術」を紹介します。

私が所属していた製鉄プラント業界は、一つ昔は、海外において商社が活躍した時期もありましたが、近年は、営業支援/営業代行ではなく、直販で対応していました。

だからこそ、B to B営業の営業支援/代行をしてきた方から学べる新しい視座や視点もあるのではないかと思い、この本を手に取りました。

今井さんは、2008年にセレブレックスという営業支援会社に入社、現在は執行役員マーケテイング本部長だそうです。

他社商品の営業支援をし、新規顧客開拓の手伝いをして、短期間で成果を出すというプレッシャーのかかる仕事だろうと想像がつきます。

目次は以下です。

序章 成果をコントロールする「営業の真実」

第1章「売れる営業」が大切にする10のルール

第2章「会えない時代」でも新規顧客を見つける方法

第3章あなたの営業プロセスを7つに分解せよ

第4章勝敗を分ける「見込み案件」の作り方

第5章見込み案件を「当然のごとく」攻略せよ

第6章あなたの「財産」になる顧客エンゲージメントの高め方

①お客様の82%は商品を「買わない」-コール数の0.4%の受注率

今井さんが取り扱う提案型の商材(①高単価商材、無形サービス、②購入およびサブスクリプション、③不特定多数の方への企画提案)については、商談数に対する受注数が18%だそうです。

ちなみに、このデータの裏にはまず3か月間のコール数があり、その中から商談に導ける率は2%程度

つまり、最終的な受注数をコール数で割ったものはなんと0.4%だそうです。

この「新規営業は難しい」背景に、「買おうとしていないお客様」を相手にしているからだといいます。

従って、著者は、「買われなかった数」は「売れた数」よりも、はるかに多くのサンプルが集まること。

「買わない」というイベントは、営業プロセスにおいて受注より前のすべての工程で発生するため、買わない理由を集めることができれば、営業活動において成果をコントロールするための切り札になるそうです。

なお、お客様が契約するのは、商品でもなければ課題解決でもなく、課題解決できる可能性に契約しているという考えに立ち、営業パーソンがスキルとして磨く必要があるのが、課題解決できる可能性の見える化だといいます。

また、新規営業は解決策を提案する前に、解決すべき課題や課題に紐付く価値を示すことができるかどうかが重要だそうで、課題を見つけに行く、課題を特定しにいくという営業主導のスタンスを目指す必要があるといいます。

更にお客様には、どうやっても買っていただけない企業が一定数あるそうで、買わない理由など確かめる行為によって、正解に近づくための精査をしているともいえるといいます。

②勝利をもたらす「ターゲットリスト」の作り方。

提案型の新規営業のなかで、不特定多数のリストが用意できるターゲットに営業する場合、売上目標を設定するところから、逆算し、①必要な受注件数、②必要な案件数、③必要な商談数、④必要なアポイント数、⑤必要なコンタクト数宇、⑥必要なコール数、⑦必要な企業リスト数と割り出すそうです。

なお、このリスト作成には、魅力的なターゲットに絞り込もうとする場合、購買動機=顧客ニーズを起点にするそうです。

例えば、採用を強化していて、従業員満足度の向上に力を入れている企業であれば、業界や企業規模だけでくくろうとすると採用を強化していない企業がリストに含まれて無駄打ちが生じるそうです。

著者なら、就活・転職口コミサイトを見て、会社評価スコアのうち待遇面や社風の項目が好スコアな企業だけを選んだり、働き方改革コンテストで上位入賞している企業をピックアップするそうです。

また、提案できる商品やサービスが従業員100名以上の企業に効果的だとすると、その条件も加えてリストを限定化するそうです。

③営業プロセスを7つに分解

著者の会社では、お客様を理想の姿に導く営業スタイルとするコンサルテイングセールスを7つのプロセスに分解し、役割を持たせるそうです。

1.アカウントプラン(攻略計画の策定)

商談で最終的に受容するための計画を描くそうで、商談を有利に進めるための準備だそうです。

「どうしたらこの企業から受注できるのか」という仮説を立て、全体の流れを組み立てるそうです。

2.アプローチ(信頼の獲得)

お客様との関係構築のプロセスで、会社説明、関係構築の段階です。

3.ファクトファインデイング(課題の設定)

お客様に商品導入や課題解決の必要性を認識してもらうプロセスだそうです。

課題の重要性や緊急性に気づいていただくような問いを投げかけて理想と実態のギャップを明らかにするそうです。

4.オーダーコントロール

どんな提案だったら導入してもらえるか?を明確にするプロセスだそうです。

そのために、設定した課題の確認や、提案の方向性がマッチしているかについて顧客の言質を得るそうです。

5.企画作成

お客様の課題解決を実現するストーリーを作成するプロセスです。

6.プレゼンテーション(最適な提案) 

解決方法と具体的なプランを披露するプロセスです。

7.クロージング(意思決定の後押し)

最後は納得し、決断してもらうためのサポートを実施するそうです。

このプロセス毎にお客様に合意と共感を得ていき、次のフェーズに商談を進めていくのがコンサルテイングセールスプロセスだそうです。

なお、著者の会社では1-4のリードセールスプロセスに7割の受注、失注を決める要因があると定義しています。

獲得できたアポの企業に対して、商談の場で話すことを前提に用意すべき情報を収集し、ターゲット顧客の困りごとや描いている理想像の予測を立てた上で想定ニーズを考えるそうです。

なお、著者自身は、顧客の顧客、顧客の競合、そして顧客自身、更に未来軸を考えて、ビジネスの勝たせ方を特定し、「勝つためになぜこの商品が必要なのか」を意味付けしていくそうです。

④ファクトファインデイングー課題の設定-売れる営業/売れない営業で最も差がつく部分

問題を発見し、課題を設定する。

その為には、①事業理解のステップ、②問題発見のステップ、③課題設定のステップと3つのステップがあるそうです。

まずは、「どのようなコンセプトで」「どのようなターゲットに」「どんな商品を提供しているのか」といったビジネスの裏側にある思いや狙いに触れることで、情報の奥ゆきを持たせるそうです。

次に、現実-理想=問題(ギャップ)という公式を埋めて、問題を発見していくそうです。

最後になぜこの問題が発生しているのか、どうすれば解決できるのかといった課題を設定していくそうで、課題設定の進め方を公式にすると「原因+示唆=課題」だそうです。

⑤自分の所感について

この本は、1-7のプロセスをどのように進めていくのかも丁寧に書いてあり、世の中の営業支援/代行、特に新商品の新規顧客先販売をどのような考えで進めているのかよく理解できました。

繰り返しになりますが、他社の多種多様な商品の営業支援をして、新規顧客をある程度区切られた期間内で開拓、受注していくという負荷の掛かるものだと想像します。

一方、著者の会社のHPに出てくる導入事例を見ても、様々な会社のサービス支援をしていることがわかり、営業に特化し、多種多様な商材を取り扱い、その営業開拓プロセスを分解することで、組織として営業ノウハウが貯まることがよく分かりました。

特に新規事業における営業支援を頼むのに、凄く力を発揮されそうな気がしました。

興味がある方は是非本の方をお読みください。