「世界秩序が変わるとき-新自由主義からのゲームチェンジ」を読んで-アメリカでこんな日本人がいたんだ!

本日は、斎藤ジンさん著作 文春文庫の「世界秩序が変わるとき-新自由主義からのゲームチェンジ」を紹介します。

この本を知ったきっかけは、杉村太蔵さんの出演するYoutubeにて、この本を紹介していたのを聞き、読んでみようと考えました。

https://youtu.be/eKff6p79yA4?si=RKg3ZIpbShAgA_6b

私は、あまりマクロ経済から見た考え方で投資を考えません。

特に日経平均株価やS&PS&P500の値動きは、横目で見る程度です。

但し、この本を通じて、アメリカのヘッジファンド、そして政財界がどのように考えているのかを知れたことは大きかったと思いますし、直近の高市-トランプ首脳会談など、日米の政治の動きを見ていても、少なくともアメリカの政治の世界は、この斎藤さんが書いた本の内容のシナリオに沿って動いているように感じました。

目次

はじめに 日本復活の大チャンスが到来した

第1章  新自由主義とは何だったのか?

第2章  私はいかにして新自由主義の申し子になったのか

第3章  「失われた30年」の本質

第4章  中国は投資対象ではなくなった

第5章  強い日本の復活

第6章  新しい世界にどう備えるか

①日本復活の大チャンスが到来した

著者の斎藤さんは、1990年代都銀を退社し、アメリカの大学院卒業後、ヘッジファンド向けに主に日本市場に関するレポート「当時は円安の流れ」を書き、その内容が巨大ヘッジファンドのオーナーもその内容を参考に投資をしていたことがあったそうです。

そんな斎藤さんが、2021年以降「新自由主義的な世界観に支えられてきた既存システムは信任(コンフィデンス)を失った。

根幹世界観へのコンフィデンスが崩れた以上、パラダイムシフトが発生する」

「そしてその結果、勝者と敗者の入れ替え戦が始まり、日本が勝ち組になる」

と予測を立てています。

例えばトランプ現象、ブレグジット、欧州の極右や米中対立などの現象の背景に、1991年のソ連崩壊を気に新しい世界標準システムとして受け入れられるようになった「小さな政府」の価値観を新自由主義的世界観に対して、世界各地で強烈な反発が巻き起こっていること。

そして、そのカジノのオーナーになっているアメリカが覇権国家であり続ける限り、次のシステムを支える世界観をアメリカに有利なものにしようとしている点があるそうです。

政府の意思決定や役割を縮小し、市場原理、民間企業や各個人の意思、判断、選択を重要視する。

各国政府の裁量が大きい通商政策の代わりに、ルールベースの貿易を促進するためにWTOが作られる(1995年)。

性別、人種、国籍など属性の異なる各個人が、市場を通じて、世界中から自由に参加するシステムを目指した。

その新自由主義に対して、世界各地で強烈な反発が巻き起こり、ルールが変わると見立てています。

この新自由主義台頭の恩恵を最も享受したのが、中国であり、世界の工場の地位を確立し、技術移転により急速な成長を遂げた。

一方、政財官の「鉄の三角形」に支えられた日本株式会社方式の経済がボロボロになり、日本の地位が低下し続けた。

この新自由主義によって潤った中国がカジノのハウスの地位をもぎ取ろうとする中国をアメリカが黙って見過ごすことはなく、新冷戦、米中デカップリングと呼ばれる流れは不可逆的であると斎藤さんは判断しています。

そこで、アメリカが中国を封じ込めるために、「強い日本」の協力を不可欠としており、第二次世界大戦後、冷戦下のアメリカがソ連を封じ込めるため、「強い日本」を求めた時と似た状況と似ていること。

そして斎藤さんの考えでは、戦後全てが焼野原になった土岐に与えられたチャレンジに比べると今の日本の方がずっと潜在的に優位な立場にあると考えているそうです。

②新自由主義とは何だったのか?

斎藤さんの新自由主義のおおざっぱな3つの特徴を持つ世界観・統治観として、

第一に、その世界では「大きな政府」より「小さな政府」が善きものとされるため、政府による介入は少なければ少ないほど良いという考え方、

第二に、そこでは政府の政治に代わる裁定者の役割を「市場(マーケット)」に委ねようとし、公平なルールを定めておけば、あとは最良的な介入の小さい市場原理や経済合理性が決着をつけてくれる世界です。

第三に、その世界では個人の権利と選択を尊重し、政府や宗教を始め、個人の生き方に干渉するものを最小化すべきと説く。

必然的に、

①政府の介入は小さいほどよく、

②すべてはマーケットを通じて最適化され、

③各個人が自らの能力や個性で勝負することができる。

こうした条件を満たすのは、「政治」より「経済」が重要という認識が共有される。

この新自由主義の考え方は、20世紀初頭まで「自由放任主義(レッセ・フェール)」という世界観が信認される中、ブルジョワと酔われた商人たちが自由に商売を通じてもう得ることができる社会が形成され、所得権を含めた個人的権利の尊重など、それ以前の世襲王侯貴族による政府権限の乱用を抑制する統治観だった。

一方、同時に弱肉強食の世界であり、勝者である資本家による労働者への過酷な搾取が日常化し、外に対しては植民地主義による他民族の隷属化が列強の間で繰り広げられた。

その実践には様々な問題があるにせよ、アメリカの独立宣言によって掲げられた理念

「すべての人間はうまれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福な追究を含む不可侵の権利を与えられている」

は今でも民主主義国家の市民にとって進むべき方向性を指し示す北極星としての輝きを失っていない。

しかし、レッセ・フェールは1930年代に世界を襲った大恐慌で幕を閉じた。

実際に「小さな政府」をよしとするため民間でできることは民間に任せ、政府はできるだけ介入しない。

それゆえ少数の企業や財閥による市場の独占・寡占の問題が深刻化し、貴族の代わりに少数の資本家が多数の労働者を搾取することが問題となった。

この大恐慌で機能障害に陥った「小さな政府」の信認が瓦解する中、「大きな政府」に振れた。

そこには大きく三つのパターンが確認できた。

第一に共産主義型の「大きな政府」

第二に、ニューデイール政策に代表されるルーズベルト型の「大きな政府」

第三に日本の軍国主義を含んだ抗議のファシスト型の「大きな政府」

この3つが競い合うようなかたちで、経済・社会への政府介入を開始した。

その結果3つの政府の形のうち、ファシスト型の大きな政府が脱落し、共産主義とアメリカ型で争うこととなった。

その冷戦下で大きな果実を得たのが日本であり、冷戦後東アジアにおける共産主義陣営に対する橋頭保となり、地政学的に重要な国として優遇されるようになった。

しかしこの1930年代から始まった「大きな政府」も40年の年月を経て1970年代になると、経済的な非効率があらわになり、スタグフレーションに陥る。

肥大化した非効率な公的セクターを何とかするために、市場メカニズムを重要視する新自由主義の世界観に基づいた「大きな政府」から「小さな政府」への大転換を行った。

但し、過去の弱肉強食の時代に戻そうとはしておらず「大きな政府」の長所を取り込みながら、経済分野における政治の関与を小さくしていくかという課題に取り組んだと整理しているようです。

例えば財政政策、税制、政府規制、通商政策、公共企業など政府が勝者と敗者を決めるので、そうした動きを縮小し、金利、為替、貿易、所有権の自由化を謳っている。

この政府裁量が働く財政、税制政策、産業政策、公営企業が全て最小化し、金融政策を使って経済循環の体温調整をするべきという帰結に繋がる。

この短期の政策金利を調整する駐豪銀行の金融政策を予想し、その結果として市場が自由に決める長期金利がどう動くか、為替レートがどう動くかを先読みする投資をマクロプレーと呼び、このマクロプレーをメインとしたヘッジファンドが勃興したそうです。

世界的に見ても、従来の二国間貿易協議を主体としたものから、全世界的な共通ルールを確立する動きとしてWTOが設立されたのが1995年だそうです。

この新自由主義の統治観やルールベースの商慣行が世界経済に普及し、マネーが効率的に流れることで、ビジネスコストが低下するため、インフレーションが起きにくくなる。

つまり物価が安定し、結果として金利が低下する。

金利を含めたビジネスコストが低下すると、投資リターンを得るまでの時間を長く設定できるため、経済に何か大きなショックがあっても、インフレを心配する必要のない中央銀行が積極的な金融緩和に踏み切ってくれるので、リスクシナリオが発生しても逃げ道がある。

同時に二国間の通商協議の代わりにWTOを中心とした全世界的なルールベースの国際貿易秩序が確立すると、ビジネスリーダーは一番便利で価格競争力のある所にサプライチェーンを築くようになる。

国際的な仕事をするにせよ、デジタルな仕事をするにせよ、従来の国境や個人の属性を超える「グローバル市民」の動きは1990年代以降の産物であり、各個人はメリット(能力)や個性によって評価されるという価値観を後押しするもの。

この考え方をさらに引き延ばしていくと、国境、人種、文化、宗教といったあらゆる垣根を超越した安定的な民主主義的世界が到来し、戦争もなくなっていくという考え方につながる。

経済を絆としてよりインターデイペンデント(相互依存)になれば、戦争のような愚かな行為はコストが高すぎるので、だれも望まなくなるというロジック。

アメリカが中国をWTOという国際通商システムに引き込んだのは、いずれ中国も民主主義国家と同じ価値観を持つようになるという思いがあったそうです。

また、1990年代初頭は世界的に男女同権や人種差別撤廃に向けた動きが一気に花開いた時期で、個人の能力と個性を尊重するという観点から、様々なマイノリテイが自己実現に向かうことを応援しましたが、真の意義は、最終目的地であるマイノリテイの待遇改善と平等な扱いそれ自体です。

一方、新自由主義的価値観も万全ではなくその波に乗れずに「取り残された人々」が非常に多かったという事実もあるそうです。

グローバル市民の視点で言えば、トランプのMAGAのロゴをつけたTシャツを来ている人を人種差別主義者や性差別主義者のように扱いますが、トランプ信者は、新自由主義者の価値観を押し付けるところに傲慢さを観る。

新自由主義が世界を席巻したスピードが早すぎ、グローバリズムの波が驚異的なスピードで進行した結果、付いていけない人、付いていきたくない人もいるため、「ひずみ」が生まれる。

なお、日本が歴史上何度か鎖国をしていることに対して、斎藤さんは一つの「英知」だったと分析しており、奈良時代、平安時代に大陸の法制度や仏教文化を取り込むがその後一旦国を閉じる。

これは人間にも社会にも「消化吸収期間」が必要だったと観ているそうです。

トランプを選挙で勝利させたステーブバノンはEU,WTO、国連、共産主義を含む超国家的なシステムや思想に対する嫌悪感にあふれており、国を超えたグローバルな精度や思想への敵愾心はトランプ支持者に共通する特徴だそうです。

また、中国を憎むのは、中国が最も新自由主義の恩恵を受けた国だからで、直近の選挙でもより多くのアメリカ人が既存システムの変革を求めており、「破壊者」か「現状維持勢力」かという不の二者択一に際し、アメリカ人が前者を選んだことを意味します。

世界中、オーガニックに発生した社会を見れば、そこには長い時間をかけて築かれてきた土着的、伝統的な価値観、文化、風習、言語、個人の社会的役割等に関する縛りがある。

それに対して新自由主義は性別、年齢、国籍、宗教、文化、人種といった属性を超越するグロ-バル市民を評価する。

新自由主義に取り残されたラストベルトに暮らす人々は、自分たちの祖先はLGBTの権利を守るために命がけでアメリカに渡ってきたんじゃない、敬虔なキリスト教徒としてその教えを忠実に実践するためにここの来た。

と信じている。

にもかかわらず東西海岸のエリートから同性婚を認めろ、中絶を認めろと叱責され、受け入れないと「お前たちは野蛮人だ」という扱いをされる。

過去30年間、新自由主義でやってきてこの短い間に富の格差が異常なレベルにまで広がる。

移民が急速に増える。

人口構成比率における白人のシェアが低下する。

LGBTの権利保護が縫製かされる。

アメリカ社会の屋台骨だったキリスト教文化が廃れていく。

それだけの激変が一世代の時間軸で発生するとなると、何がアメリカ人なのか、そうしたソウルサーチングが必要となっていく。

斎藤さんの考えでは、トランプ現象が「アーリーウオーニングサイン(早期警戒警報)」と解釈でき、トランプのような人物が出てきてアメリカ社会が激しく揺れる状況が、外から見るとデイスファンクション(機能不全)に移るかもしれないが、逆席的に言えば、アメリカのダイナミズムと捉えているそうです。

昔の大日本帝国、今の習近平による強権体制の中国など独裁や強権によって求心力を保っている国家は、ひとたび間違った方向に走ってしまったら大惨事を引き起こすリスクも高い。

アメリカは深刻な危機に直面しているが、その制度に備わっている柔軟性と復元力が新しい統治観を打ち出すカギになると斎藤さんは読んでいるそうです。

「資本主義の本質的な欠点は、恵みの不平等な分配にある。社会主義の本質的な美徳は悲惨の平等な分配である」

ウインストンチャーチルの言葉の通り、社会主義には経済効率性が欠如しており、一方の資本主義には経済生産性こそ高いものの、その果実の分配に欠陥があることを指摘している。

所得や試算の偏在をどのように修正するのか。

これは経済制度の話。

それと同時に、伝統的な価値観と新しい生き方の折り合いをどのようにつけ、双方が妥協しても良いというバランスをどのように構築するのか。

こちらは価値観の話。

一番重要なポイントは、一定数以上の市民がこれなら他社と共存できる、そう感じる均衡点を見つけ、それを正当化する世界観を打ち立てることで、その新しい世界観に信認を与えないと、システムが上手く機能しない。

方向性として、どのようにして政治による裁量介入と経済合理性のバランスをとるのかが肝となる。

同時に社会的価値観の激変を消化する時間を市民に与える必要がある。

この流れは西側民主主義国家だけでなく、中国のような習近平が強権的な姿勢を強め、これまで中国経済の原動力であった民間経済への介入を強めると同時に、思想面、国家統制面もふくめたすべての分野で「大きな政府」に振り子を戻すことで、中国経済は劣化するこのバランスをどうするのかもチャレンジとなる。

と斎藤さんは捉えています。

③斎藤さんの半生

斎藤さんは、1980年末に都銀に入社。

そのころ銀行のビジネスモデルが貸出金額の目標があり、資産価値が急騰した土地を担保に高層ビルに建て替え、賃貸収入で稼いでローン返済もラクラク、そんな濡れ手で粟のようなスキームをみんなで考えていた。

この前提に不動産価値が右肩上がりという前提がなくなった瞬間ビジネスモデルが成り立たなくなる。

このビジネスモデルに疑問を持ち、バブルが崩壊する中、昨日まで借りてくれ、今日から返してくれと銀行が手のひら返しで融資返済を迫るようになる中、斎藤さんは銀行を辞めて単身アメリカに留学することにしたそうです。

渡米後ジョンズホピキンス大学高等国際問題研究大学院に入学。

大学院に居た日本人は、殆どが中央官庁か企業から派遣されてきた人間で、卒業すればいずれ日本に帰る。

斎藤さんのような銀行勤務の経験があって、どこにも所属していない日本人が当時のワシントンでは貴重だった。

日本が圧倒的な世界第二位の経済大国であり、投資家にとって非常に重要な存在にもかかわらず、日本に関する情報があまりないのでミステリアスな存在だった。

1995年に大学院を卒業し、金融コンサルテイング企業G7グループで働き始め、ニューヨークの金融業界のトップクラスのエリートサークルに繋がるようになった。

「ジャパンウオッチャー」として名を上げるきっかけになったのが、1997年の日本の金融危機で、このことを誰よりも最初にヘッジファンドなどの顧客に公にしたのが斎藤さんだったそうです。

住宅金融専門会社の不良債権問題が持ち上がった際、7000億円の公的資金をめぐって国会が紛糾したことから、日本は戦後一度も金融機関をデフォルト(債務不履行)させていないから、処理や救済をするためのシステムがないことに斎藤さんは気づいた。

住専の規模であれだけもめるなら、銀行や証券会社が経営破綻したらとんでもないことになる。

そして1997年に三洋証券が破綻したこと、北海道拓殖銀行と山一証券の連鎖倒産が起きる。

斎藤さんが日本に金融危機がくると言い出した時、榊原大蔵財務官が、日本で金融危機など起きるわけはないと鼻で笑っていたそうですが、預金保護法や不良債権処理の手続きが整備されていない以上、信用ショックや金融危機が起きたとき、日本にはそれを止める手段がなかったそうです。

円と日本株が安くなることを予想し、値段が高いうちに売るポジションを作ってきたヘッジファンドにとっては大当たりの展開になったそうです。

梶山官房長官が「不良債権処理に公的資金を使うと発言した」というニュースに対しても、「今の日本に公的資金をつかって不良債権を処理する仕組はなく、梶山の言っていることはインチキ(Bogus)だ」と説明すると、斎藤さんを信用したヘッジファンドは途方もない金額の円売りのトレードを実施したそうです。

なお、マクロヘッジファンドの立上のピークはリーマンショックのあった2008年だそうですが、金融危機の勃発により巨額の財政出動を要することになり、FRBが金利をゼロにし、量的緩和に踏み切っても問題を解決できなかったことで、金融政策万能主義の威信が大きく傷つき、金融機関への公的資金注入に伴い、政府規制が復活する。

しかし突然の政府介入や巨額の財政出動は個別企業などへのミクロの株式投資にも影響を与えるため、政府や政策のウオッチに需要が拡大することになったそうです。

今斎藤さんが所属するオブザーバトリーグループの売りは、政府による政策対応をモニターし、それが与えられた課題に対して十分なのか、不十分なのか、どの程度の時間が掛かるのかを見極めることだそうです。

例えばコロナ禍であれば、政府の財政対策規模はどうなるのか、日銀はどのように対応するのか、ワクチン輸入と実施のタイミングはどうなるのか、どの程度早期にソーシャルデイスタンス措置を撤回し、経済を再開させるのか。

こういたポイントは資産価格に影響を与えるため、政府の判断をウオッチすることで、投資判断の材料にしてもらうそうです。

なお、斎藤さんは2012年秋、「日銀改革と日本の転換点」というレポートを作成したことで、ソロスファンドに呼ばれ、ソロスファンドは円売り、日本株買いで大儲けをしたそうです。

アベノミクス以前、日銀の金融政策運営の根底にあった世界観は金融政策の目的は物価安定に限定されるべきでその活用もミニマムでなければならない(ビスビュー)という立場だったそうです。

一方、フェドビューは、金融政策の範囲をより広義に捉え、必要な場合、特に大きな金融ショックの際は、積極的にに記入緩和を実施すべきという立場だそうです。

この実践者として一番有名なのがバーナンキ元FRBで、アメリカで住宅バブルが破裂し、リーマンショックが発生すると、金融積極主義を加速度的に推し進めると、強烈な円高と株安に拍車が掛かり、日本経済がボロボロになっていく。

この過程を苦々しく見ていたのが、安倍元総理で、民主党が立てた白川日銀総裁がビスビュー世界観を行動規範に持っている中、政権の白川日銀に対する不満が貯まっていった。

世界中がフェドビュー世界観を追究する中、日本だけビスビュー世界観で金融政策を差配していたので、負けるべくして負けている。

白川総裁の任期切れが2013年9月に迫る中、民主党と自民党の来るべき衆院選に向けた選挙公約を確認した時、日銀がその行動規範となる世界観の修正に迫られると直感したそうです。

なぜなら両党ともに一丁目一番地が日銀の金融政策の積極活用だったそうです。

世界が金融積極主義を追究し、事実上の通貨切り下げ競争に走っているとき、日本だけ慎重な金融政策運営を実施すれば、円高・株安によって日本が大負けするのは明白だった。

そして斎藤さんは政治の世界がいつまでも日本の一人負けを許すことはないと考えたそうです。

その斎藤さんが、新自由主義の行動の根底にあった世界観が瓦解し、勝者と敗者が入れ替わると確信する中、日本に大きなチャンスになると読んでいるそうです。

④アメリカによる日本潰し

アメリカは過去100年間で根幹的な統治観を二度変えてきた。

最初は1930年代の大恐慌を契機とする「自由放任主義」から「大きな政府」への転換。

そして二度目の1980年代のレーガン時代の「大きな政府」から「小さな政府」へのシフト。

その一方、1930年代と1980年代の転換期、日本を戦略的競争相手と位置づけたうえで、日本の更なる躍進を押さえようと執拗な圧力を賭け続け、最終的に日本を弱体化させることに成功したこと。

そして今まさに世界が再びアメリカを地殻変動の震源地とする統治観の大転換のまっただなかにいる。

そしてこれからの数年間が歴史家が数十年後に「あのときが日本の転換点だった」と位置づける時期に相当すると、斎藤さんは考えるそうです。

第二次世界大戦後にソ連との間で冷戦が始まると、アメリカは日本を東アジアの戦略的パートナーにすることを決め、アジアに一定の力を備えた同盟国を必要としたアメリカによって助けられ、破格の待遇を与えられた。

日本人の懸命な努力の賜物、勤勉な国民性、製剤間の緊密な連携の元、政府主導で限られた資源をうまく有効活用した。

一方、戦後一貫して圧倒的なスケールであり続けたアメリカ市場への輸出を許される一方、輸入については資源など必要最低限のものだけにするなど、きわめて特殊な環境で経済活動に邁進できたことを見逃してはならないと斎藤さんは言います。

ゼロから一を作れなくても、米欧が作ったものを真似して改善を繰り返すことで品質を高め、それをアメリカに売ることができた。

更にアメリカが安全保障を肩代わりしてくれたので、防衛費を最低限に押さえて経済に特化することもできた。

これが奇跡などではなく、アメリカという「カジノのオーナー」が勝たせてくれた結果だと斎藤さんは分析します。

一方、繊維、鉄鋼、造船の日本製品がアメリカ市場シェアを席巻したところまでは強い摩擦がなかったものの、対象が自動車、そして半導体となるとアメリカの態度が変わり、1980年代になると半導体、スーパーコンピュータ、核燃料サイクル、衛星やロケットなど数十年間の競争力を決定する上で最も重要だと考えられていた分野で日米の競争が激化。

一部の製品で日本がアメリカを凌駕していく中、ソ連に対するアメリカの優位と冷戦勝利の可能性が見えだしてきた1980年代後半から日本を最大の脅威と見なす声が大きくなり、アメリカは様々な日本製品に対して100%の関税を課し、新世代技術の分野で日本をその市場から締め出し、円の国際化を阻止するなど日本の経済、技術的杏影響度の拡大を抑え込もうとしました。

日米構造協議は日本のビジネスの仕方や制度にまで手を突っ込んで日本の強みをたたいていくものであり、半導体協議の結果、日本は事実上生産拠点を海外に移転するしか道は残されていなかった。

日本側はアメリカが常にゴールポストを動かすことに不満があった。

一方、アメリカにとって協議で合意した数字や手法は物事の本質ではなく、狙いは日本経済を潰すことだった。

アメリカが「小さな政府」、ルールベースをよしとする新自由主義に対する信認はソ連の崩壊で一気に高まり、制度や法律として整備されていく動きが1990年代になると加速していく。

その一方、日本は依然として政財界が緊密に意思疎通を図る「大きな政府」による保護政策を続けている。

1990年代にアメリカがとったアジア四小龍(韓国、台湾、香港、シンガポール)への支援、そして中国の台頭を促す政策は、日本の相対的地位を低下させる戦略と表裏一体にあり、日本以外のアジア諸国の発展を促進するものになったんだそうです。

なお、アメリカが態度を変える二つの条件として、

①経済政策の基本的前提をアメリカが大きく変化させるとき、

②競合国のGDPがアメリカの50%近くに迫るときに、

アメリカが容赦ない圧力をかけてくることが分かるそうです。

1980年代後半に日本のGDPがアメリカの50%を超えていく中、アメリカ政府は日本のコンピュータやその他製品に100%の懲罰的関税を貸した。

一方、中国のGDPがアメリカの50%近くに達した2012年には、オバマ政権下であまり強い施策を取りませんでしたが、2017年のトランプ政権が誕生すると競争アプローチの扉が全開となり、両国の関係は悪化の一途をたどることになったそうです。

⑤中国は投資対象ではなくなった

ワシントンにいると、アメリカのロビイング会社の多くが中国からの依頼を引き受けなくなったそうです。

これだけ米中対立が先鋭化し、超党派で中国批判が高まる中、政治家から「あいつらは中国の手先だ」と名指しで糾弾されたら、それこそ会社の存続や今後のキャリアにとって致命的なイメージダウンとなりかねない。

投資の世界でも、米中のデカップリングはものすごい勢いで進んでおり、何よりも中国関連の投資資金の引き上げに謙虚に表れている。

投資先を探そうと中国へ行っても、本音の話は入ってこないし、それどころか反スパイ法によって無差別的に捕まるリスクがあれば、投資するにはどうしても躊躇する。

斎藤さんは2021年前半に顧客向けレポートで米中対立の不可避性とアメリカの優位性について書いたときに、中国に対して厳しすぎる、悲観的過ぎるという反応が少なくなかったそうです。

とくに中国が1990年の日本と同じ道をたどっているという日本の経験というタイトルのレポートには、中国は日本のようにずるずると不良債権問題を先送りにしないというクレームが多数寄せられたそうです。

更にレイダリオが創業者のヘッジファンドは、「衰退期にあるアメリカを中国が凌駕する」と信じて疑わないレイの指示で巨額の資金を中国に投じており、斎藤さんは中国がアメリカに勝てない理由を何度となく説明したそうです。

このとき派遣国家(アメリカ)とそれに下駄をはかせてもらって経済成長している国家(中国)の違いであり、カジノのオーナーは好きにルール変更することができるので、圧倒的に有利であると日本の経験から明らかだと主張したそうです。

2001年にWTOに加盟して以来、中国は国際化の恩恵を受け、それが半永久的に続く前提でビジネスモデルを構築した。

日本が戦後の冷戦構造が半永久的に続く前提でビジネスモデルを作ったのと同じように。

しかしその前提が崩れれば、全ては逆流する。

結果中国投資は大きな損失を出し、その事実が、レイダリオは2022年に経営の第一線から退く理由になり、

「中国は今後百年間続く嵐に突入しつつある。日本がバブル経済崩壊後、契機が回復するまでに何十年もかかったように、試練が続くだろう」

と2024年の日経の記事でコメントしているそうです。

アメリカが中東、中央アジアに注がれていたときに、外交、安全保障分野でやりたい放題だったのが中国であり、「一体一路構想」そして南シナ海に人工島を建設し軍事要塞化したこと、中国のハッカーが米連邦政府の人事管理局に侵入し2000万人以上の米政府職員の記録を入手したことで大きな注目を集めたそうです。

米中貿易についても、アメリカ国民は中国にいいとこどりをされたと被害者意識があり、自国への輸入は管理しておきながら、アメリカへは大量に輸出し、貿易黒字を稼いでいるのは許せない。

その主張をするトランプが大統領になったことで、新自由主義の終わりの始まりと斎藤さんは直感したそうです。

その最大の恩恵を受けた二つのグループがグローバリストとで自他リストであり、グローバリズムの悪の象徴が中国であり、もう一つの怪物がGAFAMといった雇用もしない、税金も払わない、プラットフォーマーとその周辺だけが大儲けするビジネスモデルを指しています。

アメリカは1990年代、日本経済を壊滅させた経験があるため、そのテキストブックがある。

まず日本に対して行ったように、通商で仕掛けていく、中国産の製品に関税をかけると同時に、アメリカ産の何をいくら買えと相手に要求する。

次にアメリカが要求してくるのが「構造改革」

日本はアメリカが要求する構造改革を受け入れ、自らの優位性をひとつひとつ潰していった。

一方、中国は構造改革を要求され、それを許したら共産主義体制の存続にかかわる。

アメリカは中国に対する締め付けを厳しくする。

2019年の中国通信機器大手 ファーウェイに対する事実上の輸出禁止措置。

更にバイデン政権が誕生した時、多くの市場関係者は対中政策の多くが廃止されるだろうと考えていた。

しかし、トランプ政権には、熟慮した対中政策があり、政権のアプローチとして

①貿易戦争、②戦略的資源の中国依存の低下、③中国に対する米国の「イノベーション優位」、④地域パートナーの対中国の経済、貿易能力強化、⑤米日豪印による安全保障対話の枠組み(QUAD)強化、⑥アジア同盟諸国への技術支援の拡大し、中国の「一体一路イニシアチブ」に対抗するなどを包括的に進めることを狙っていたそうです。

バイデン政権はこの戦略を踏襲しており、「戦略的競争相手国」とトランプ政権が位置づけたことを正しいと明言したそうです。

また、アメリカの政府当局は長期的なマラソン競争になれば、アメリカが勝つと信じている。

その一つの理由が人口動態であり、今後中国は急速に高齢化が進む。

ここで問題になるのが豊かになる前に老いると言われる途上国型経済を脱していない。

名目GDPが1万ドルだ半ばで、そして公的社会保障制度の整備状況が不十分なままなので、米国との競争が長期化すればするほど中国は高齢化対策にお金を回す必要がある。

二つ目に技術の革新性の観点で、アメリカ発の技術の中国への輸出や提供に縛りを掛けている。

斎藤さんの考えでは、アメリカの衰退はトランプ減少と国民の分断が国家の衰退に映ると捉えず、アメリアのおかしなシステムを壊してくれという声が出て、社会が苦しみもがきながらも新しいシステムに変化させていく方が膿が貯まらずに済むアメリカの柔軟性と捉えているそうです。

その視点で中国を見ると、中国は周期仁平独裁体制の強化が進み、「裸の王様」のリスクが高まっていると見ているそうです。

更に台湾の半導体メーカーTSMCに対して、米国、日本、ドイツが補助金を拠出してサプライチェーンの再構築を図っていること、中国の持つ強烈なレバレッジの一つに、レアアースに加え、コバルトやニッケルなどグリーンエネルギーへの移行に不可欠な鉱物資源を握っていること。

それに対抗するためにG7及びEU,韓国、インド、北欧諸国などを加えた鉱物安全保障パートナーシップを締結したそうです。

世界のサプライチェーンが経済効率を念頭に構築された時代から、地政学的懸念を色濃く反映したものになる動きが不可逆的なものだと予測しています。

新自由主義のもたらした国際化の最大の受益国が中国とすれば、その逆流の痛みを受ける度合いも必然的に大きくなる。

その反面日本のように生産拠点を全て外に出さなければならなかった国にとっては、リショアリング(海外に移した生産拠点の自国回帰)やフレンドショアリング(同盟国や友好国に限定したサプライチェーン構築)は想定的にプラスな話と捉えているそうです。

日本の二度の経験を踏まえ、アメリカは一度ある国を自らの派遣を脅かす国と認識すると、相手が潰れるまで、決してその手を緩めることはない。

それが斎藤さんのアメリカ感だそうです。

なお、中国はGDP堆肥で3割近くが不動産関連なので、ここが回らなくなるとかなり厳しい状態となる。

不動産はすそ野が広く建設業を筆頭に様々な雇用を生んできており、この雇用の受け皿を探すのは非常に困難であること。

更に民間の力が競争力に劣る国営企業の脅威となった時、政府は民間つぶしに動いた。

また、巨額の補助金を提供し、国内民間需要をはるかに上回る量のEVやグリーンエネルギー関連商品を大量に生産し、国内需要を超過した分は海外にダンピング価格で輸出し、市場シェアの獲得を推進してきた。

しかし世界第二位の経済大国として、国内経済の問題を解決するためだけに外需に頼り続けるのは非現実的で、この戦略は他国の対抗措置の引き金になるのは不可避です。

更にハイテク産業の生産は、労働集約型の産業ではなく、知識・資本集約型なので、過剰生産しても不動産関連等で失った雇用を埋めることができない。

2024年新卒大学生の内定率は48%にとどまており、若者の失業率は21.3であったこと。この20%の失業率が続くと毎年200万人の失業者が出るので2027年までの5年間で1000万人もの若者が就職できずに社会への不満を募らせる。

そしてこれだけの数の若者を吸収できるのは軍と戦争以外には見当たらないそうです。

⑥強い日本の復活

斎藤さんが2021年秋日本の脱デフレの可能性を唱え始めたそうです。

その理由に新自由主義的な世界観に支えられたシステムが変化する事。

そうであれば必然的に低インフレ、低金利を支えてきた環境が変化するだけでなく、アメリカの地政学的配慮から日本が勝ち組に入ると考えたこと、もう一つに人口動態がデフレ圧力にもインフレ圧力にもなりえると考えてきたこと。

そしてこれからの日本経済で人口減少がインフレ圧力になると判断したそうです。

これまでの失われた30年は既存雇用を守るという社会的要請を忠実に果たした「誇るべき」成果で有った一方、ゾンビ社員のほとんどは退職し、企業がようやく身軽になったこと。

人口動態の悪化は、不動産価格が下落するし、消費も低迷する。

そんな国に投資をする企業はないし、何よりも将来の成長見通しが低下するので、経済の活力がなくなり、経済の退位恩恵である物価も下落し続ける。

一方、アメリカはコロナ禍を受けてベビーブーマー世代が一斉に退職し、移民を含めた人の往来が厳しく制限されたことで、労働力不足が深刻化し、インフレ圧力になった。

労働コストが最大のインプットプライスであるとき、労働コストをマイナスかすれば、経済はデフレに陥る。

それが真実であれば、その逆も正しく、労働コストが明確にプラスかすれば、経済はインフレになる。

ベアの復活を受け、株価が2023年に上昇基調に入った。

投資家にとっても日本の脱デフレが見えるようになった。

また、ロシアウクライナ戦争により、経済相互依存が進むことで武力紛争や戦争が起きなくなる、その考え方が瓦解し、冷戦後負け組だったNATOの価値が急騰する。

更に、アメリカは「強い日本」を必要としており、今度の敵は中国なので、メインシアターは東アジアであるため、アメリカは強い日本というパートナー無しに有効な対アジア政策を遂行できない。

対中基本政策では「日本がインド太平洋安全保障構造の中で「地域的に統合され、技術的に進んだ柱」になるよう助力する」と明記している。

つまり先端技術の分野で日本がアジア太平洋地域のコアになることを助けるという方針を明確に持っている。

それに従い、半導体のサプライチェーンの再構築や米国のIT企業による日本へのデータセンター投資が相次いで発表されている。

過去当時の覇権国であった英国に東洋に同盟国を求められたこと、そして冷戦下にアメリカがソビエト・ロシアを封じ込めるため、日本の経済発展を助けてくれたこと、そして今回三度目の機会が訪れていると斎藤さんは考えています。

2024年4月の日米首脳会談でも、幅広い分野で協力していくことで合意。

宇宙開発から核融合、Ai、量子技術、脱炭素、グリーンエネルギー、防衛装備品の共同生産。

2021年以降、国内投資が100兆円の大台を超えるようになり、海外に生産設備を移転し、国内での人的投資を抑制し続けたのが、その逆流が始まっているそうです。

経済に逆風が吹いていると、大勢の普通の人のリスク許容度は下がるので、私もやってやろうという人がなかなか続かない。

一方経済が順風を受けている時は、色々な人がリスクを取るようになるし、そのリスクが実際に報われる可能性も高まる。

高度経済成長期にある土地に工場ができると、近所のラーメン屋からクリーニング屋まで儲かるようになる。

そしてそれがTSMCが工場を建設している熊本や日の丸半導体の復権をかけるラピダスが進出した北海道で起きている。

日本には再び順風が吹いていると認識し、自分に合った、自分が満足のいく選択をする準備を勧めているそうです。

⑦新しい世界にどう備えるか

ヘッジファンドは価格のミスマッチを狙うため、より多くの人が市場に参加し、現在の円の適正価格、将来の円の適正価格を決めていくことは、非効率な鞘を潰していくことになる。

つまり価格発見メカニズムがより適正化され、経済全体の効率が高まる。

従って、斎藤さんが新自由主義的な世界観が終焉し、新しいシステムに上書きされると指摘しだしたとき、殆どのヘッジファンドが話が大きすぎてトレードに落とせない理由以外に、信じたくなかったという要因もあり、理解してくれなかったそうです。

一方、今は流れが逆流していることを理解するようになっているため、通商政策、政府補助金といった産業政策、財政政策、地政学的な優先順位といった様々な介入が入る世の中をどう生き残るのかに全神経を集中しているそうです。

斎藤さんは日本が相対的な勝者としての有力候補国の一つだと確信しているそうです。

なお、中国は日本経済の低迷と似たような構造問題を抱える中、アメリカとの競争を強いられる一方、世界経済に頼ることも難しくなるため、物凄く大変になる。

EUも新自由主義の流れに沿って、ユーロ導入、EU設立と拡大と域内統合を勧めたが、たとえば財政状態を健全に保つ努力をしてきたドイツ人の税金を南欧の財政赤字補填に使う財政統合のような難しい統合が残っている中、長い時間をかけてその土地に根付いた国家観を大事にする市民からすれば、ブリュッセルが偽善者の集団に映っても不思議ではなく、国も民族も言語も文化も異なる人々がフェアだと感じるバランスを取ることは至難の業だと考えているそうです。

アメリカは人工的な国家理念とそれに基づくシステムに忠誠を誓うこと。

アメリカの国家設立理念を山頂とすると、歩んできたパスが間違っていたと判断すれば、新しいパスを探す勇気を持った国だと斎藤さんは考えています。

また、産業政策が復活し、政府が財政の蛇口を開いているので、金融政策を引き締めても資本コストが上昇していない企業が存在しているといいます。

半導体関連やグリーン関連であれば、政府から補助金が出ているため問題がない。

また、ロシアはウクライナ戦争にて国際秩序を力で踏みにじったことが、ワシントンの安全保障のプロの感性からすると許すわけには行かない。

その中で、欧州やインドを巻き込み、中国ロシア包囲網を続け、中露が徐々にやせ細るのを待つ。

なお、過去キッシンジャー外交にて、台湾と尖閣諸島を北京に売り渡し、中国に接近し、ソ連と中国をいがみ合わせたような展開が、今後ロシアとの関係において起こる可能性もあると予測しています。

更にインドにおいては、QUADのメンバーとして中国を囲い込む上で欠かせないロケーションにあるだけでなく、世界経済の成長エンジンと目されているため、インドを中国の代替に育てるという発想もあるようです。

なお、日本に戻るとアメリカが中国を押さえることを国策としている以上、次に描く世界秩序の中には日本がどうしても必要になるので、それを踏まえて美味しい場所を取りに行く努力を継続することが有益だと考えるそうです。

その中で、岸田政権はワシントンや国際金融市場の評価が極めて高かった。

台湾有事が現実の懸念となっているし、北朝鮮の軍事開発も歯止めが外れてしまう中、岸田総理が防衛費の倍増、反撃能力の保有、日米間関係の再構築という結果を出したことで、ワシントンの評価が著しく高いものだったそうです。

更に自衛隊をアメリカ軍とサイドバイサイド(共に)戦う実際の軍隊に変質させるという主旨のアメリカでの演説が、ポスト新自由主義の日本が真の意味でアメリカの軍事パートナーになるという強い意思表示として受け止められたそうです。

こう考えると、金利賃金という市場メカニズムを使うことで、競争力のある企業に労働力とマネーが流れることを奨励すると同時に、官を縮小し、外国人労働者を増やす。

更に家計の記入資産の1000兆円の現預金を資産運用に使う。

一方政府関与を高めるべきところは、地政学的な立ち位置をしっかり確保し、サプライチェーンの再構築や将来の成長産業に上手くお金をつけてあげる。

個人も日本に順風が吹くのであれば、日本に居ながらにして様々なリスクが取りやすくなる。

若い人はもちろん、女性、高齢者、マイノリテイを含め、前向きな選択肢が増えると斎藤さんは伝えたいそうです。

⑧私の所感

私は普段、こういったマクロ経済視点での見方をしませんし、アメリカ中心の考え方を理解してきませんでした。

しかし、この十数年間の株式投資などを通じて、アジア新興国がもっと伸びると持っていたところ、アメリカがここまで経済が伸びた。

そして、直近の高市-トランプ会談を通じて、日米政府が様々な施策を打っているのをみて、そして日本の株式市場が大きく上がっていくのも含め、これは何かが変わっていくと感じていました。

まだ新自由主義の頭から脱却するのが難しい状況ですが、私は柳下裕紀さんに狙い、着々とフランチャイズバリューを作った日米の企業に投資をしながら、日本の成長を楽しみにしたいと思います。