「物語思考」を読んで-夢想することから

本日は、けんすう(古川健介)さん著作「物語思考」を紹介します。

けんすうさんは、1981年生まれ。

浪人生時代にミルクカフェという大学受験サービスを立上げたあと、レンタル掲示板の「したらば」を運営。

新卒でリクルートに入社後、起業してハウツーサイトの「Nanapi」をリリース。

事業をKDDIに売却とあります。

私は、X(旧Twitter)から彼の存在を知り、今回一生懸命Xで宣伝していたので、どんなものかと思い、本を購入してみました。

けんすうさんは、世の中のハウツーを勉強し、「マニュアル通りやれば、誰でもうまくいく可能性が高い」と考え実践した結果、何かを成功させるためのコツは、「まずは世の中のハウツーを活用し、自己流で進めない」ことだと結論付けました。

とはいっても、どこかで自分の頭で考えないといけないシーンはやってくるので、そこまでは最短距離で人の知識に乗っかった方がいいはずと考え、そのハウツーを集めたサイトを事業として運営していました。

そこでこの本では、「やりたいことを見つけて、行動できるようになりたい」という人向けのレシピを目指して書いた本だそうです。

従来の「やりたいことを追求すると道が開ける」とか、「成功することを目的とする行動の仕方」という考え方ではなく、「なりたい状態/キャラを想定し、プロセスを楽しむ」ことを目的とすれば行動に繋がり、その行動をしている今(過程)が充実することが幸せであるという考え方を伝えたいそうです。

オープニング「物語思考」とはなにか?

ステップ1頭の枷を外しながら、なりたい状態を考える

ステップ2」「キャラ」の作り方

ステップ3「キャラ」に行動させよう

ステップ4キャラが最高に活きる環境を作ろう

ステップ5物語を転がそう

①「物語思考」とはなにか?

先のマニュアルの考え方にも近いのですが、自分を客観視しやすい状態にし、いい意味で他人事感を作り、自分を主人公にして「物語を進めるように」人生を進めること。

自分という「主人公」になりたい姿を決め、「キャラ」を設定し、キャラが活きる環境を作って、物語を転がす

という考え方が物語思考だそうです。

この物語思考で考えることが、過程を大事にしたり、自分のキャラクターを自在に変えることができる日本人に合うのではないかというけんすうさんは考えているそうです。

そのためには、「やりたいこと」を設定するのではなく、「なりたい状態をイメージする」ことの方がイメージしやすいのではないかということです。

②「10年後になりたい状態」を100個書く

何をしたいか/やりたいことではなくどうありたいかをイメージする。

その際に多くの人がとても現実的な範囲で想像してしまうそうで、何の制限もなかったとしたらという前提に立たないと、物語として全然つまらないものを目指してしまうためイメージしてもワクワクしないといいます。

この将来像を決めた上で、たった今から行動を始めることが合理的だといいます。

そこで、10年後になりたい状態を100個書く

多くの人は30~50個書いたらネタが付きますが、無理やりでも100個まで書いてみると、最後の方に無理やり書いたもののほうが意外と大事だったりすることもあるそうです。

次に、このリストを見直してみます。

例えば、年収1000万円、とか部長になると書いている人は、年収1億円でも社長でもいいはずです。

なのに、なぜ1000万円にしたのか。

つまり自分の中で勝手に制限を掛けていないかをチェックするそうです。

③「抽象度」をコントロールして理想に近づける

なりたい状態を書き出したら、次に抽象度を上げてみる。

抽象度を上げるというのは、「なんでそうなりたいんだっけ?」というのを自分でもう一段上位の理由を考えてみるイメージだそうです。

そうなると、たとえば「1億円が欲しいのは、実は金銭的な自由がほしくて、お金の不安を持ちたくないから」だとか、より自分が求めていることにフィットした目標になっていくそうです。

それを認識したら、また「なりたい状態」に戻って具体的に書いてみることで、より精度の高い「なりたい状態」を作ることができるそうです。

そこまで終わると「どうしたらその状態になるのか」という解像度を上げる作業をしていくそうです。

ここでやる必要があるのは、解像度を上げるために知識を増やすこと、年収1億円の人はどういう人なのか、どの国で何をやればいいのかが明確になればなるほど、自分がやるべきことがわかってくることが大事だそうです。

なお、解像度を上げるための事例を本の中で、けんすうさんは、沢山上げていますが、「理想の成功者と同じスケジュールで1日行動してみる」が私には印象的でした。

このなりたい状態を意識して理想の解像度があがると、自分がここといいと思う基準にいる状態(コンフォートゾーン)が上がっていくそうです。

ちなみにけんすうさんは、大学受験中に志望校であった「自分は早稲田大学生だと思い込む」ことで、合格体験記を読み、自分で合格もしていないのに合格体験記を何度も書くということをしたそうです。

その内容は、「こういった勉強をして、こういう生活を送って、テストのときはこうしたら受かりました」的なものだそうです。

更に大学受験用のコミュニテイサイトを作って、早稲田大学生になりすまし、質問を受け付けて応えまくっていたそうです。

更に大学にも行って、校内を歩いたりとかしていたことで、その後受験に失敗したら、「大学生という身分」がはく奪されるような気分になったそうです。

世の中一般から見ると、どう考えても異常ですが、ここまでなりきる体験をしたことで、けんすうさんは、なりたい状態になることが、どれだけ成功に近づくか実感したのだと思います。

この体験から、コンフォートゾーンを上げるために、理想を現実だと思い込んでしまうくらい解像度を上げるのが大事だそうです。

更にこのリストはこれから100回作ることになるリストに1つ目にすぎない、くらいに考えておく方がいいそうです。

つまりひたすら「10年後になりたい状態を100個作る→なぜやりたいのか抽象化する→具体的にやっている人を見つけ、解像度を上げる→真似する」を試し続けた方が成果が出るそうです。

④未来を予測してもほとんど外れる

けんすうさんが、2019年に有識者の方々と今後の未来はどうなるかを話したことがあるそうですが、結果新型コロナウイルスが流行し、助成金のばらまき、オリンピック延期、更にはロシアウクライナ侵攻等これらを予測して計画を立てるのは殆ど無理だったそうです。

またけんすうさん自身がエンジェル投資というスタートアップに投資をしているそうですが、どんなに事業が有望そうでも、経営者が優秀であっても、何が起こるか全然わからないし、起業した事業の結果は、殆ど運という気持ちだそうです。

日本の将来も、

①衰退が激しくて治安が物凄く悪くなるとか、

②今の中国の政治と会わない中国人が大量に入ってきて経済が活発な移民国家になるとか、

③高齢者でも働ける技術革新があり労働人口が増えるなど、様々なパターンがありえると想定でき、日本の将来がこなるという予測して動いても大外れする可能性の方が高いと考えているそうです。

その中で、大きな夢を追う人は、一つの夢に向かって突き進んでいる人ではなくて、自分の設定した夢や目標を変えるのに躊躇がなく、やることをコロコロ変えていくことで、うまくいったことを見つけていくという感覚のようです。

⑤自分のキャラを作る

けんすうさんが、本書で最も強調したい「一番なりたい状態に近づくために、一番効率的なキャラは何か」を考え、ふるまうのが楽だそうです。

一般的には、

①がんばって努力して成果を出す

②自分がこういう人間だと認識する

というステップを踏むそうですが、いい結果はすぐに、且つなかなか出ないことから、反対から考えて

自分はこういうキャラクターだと認識する

そのキャラがやりそうなプロセスを実行する

③結果が出る

という順番の方が、良いプロセスを維持し続けることになり、それが大事だそうです。

もともとけんすうさん自身、「起業をして、難しい問題でも挑戦し続けて、あきらめないタイプの人間」ではなかったそうです。

しかし、ひろゆきさんとのつながり、リクルートでの経験を通じて、起業することが当たり前の文化の中で、自分のことをそういうキャラクターだとだんだん思い込むようになったことが、今となっては、結果として、そういうタイプの人がとりそうな行動を毎日しているそうです。

このなりたいキャラを作る際、自分が書いた、なりたい状態にたどり着きそうな人ってどんな感じだろうと調べていくそうです。

まずはなりたい状態を眺めながらざっくりとイメージし、それを体現している「実存の人物」を創造するそうです。

このなりたい状態を体現している人をなりたい状態のリストからピックアップすることで、これから作る「キャラの原型」を作り上げるそうです。

次になりたい状態に近い人のリストをもとに、その人がどういう性質を持っているかをひたすら書いてみるようです。

この作業を繰り返すことで、キャラが出来上がっていくそうです。

⑥キャラは「行動」「環境」から生まれる

自分が考えるキャラの性格を元に、行動を書いて実践する。

この行動すること自体が結果として、自分自身のことを評価することに繋がるといった側面があるそうです。

その際、こういうときにこのキャラならどうする?というのを沢山作るのが重要だそうです。

やっているうちに、そういう性格の人がしそうな行動をできるようになるそうです。

自分とはなにかを考えるよりも、なりたいキャラを考え、そのキャラがしそうな行動をリストアップし、ひたすら行動していく方が、いきいきと自分が生きたいような人生を楽しめるようになるそうです。

更に、自分を変えるならまず環境を変えるのが良いそうで、周りにいる人を変えること、もっと言えば、自分が理想とするキャラの行動をしている人の中に交じるだけで、自分も行動できるようになっちゃうそうです。

このなりたいキャラの人がいそうな環境を探す方法として、今自分が知っている中で、一番理想のキャラに近い人を探すOr考えてみる、その人の持っているプロフィールを分解する。

所属、経歴、実績など。それをもとに検索してみる。

その際、SNSやYouTubeで発信している人の中で、近そうな人を見たら、その人のことを徹底的に調べ、「この人は自分の理想に近いな」と思ったら、次にその人が所属しているコミュニテイにどうすれば入れるかを考えるそうです。

なお、自分の理想のコミュニテイに入るには、100件ぐらい挑戦する方がいいそうで、1-2件成功するといった確率で考えておくべきだそうです。

⑦応援してくれる人を増やす

環境において大切なのは「応援してくれる人を増やす」ということで、応援されないとなかなかがんばり続けられません。

なお、SNSでのファンの増やし方として、1.Information(情報)、2.Opinion(意見)、3.Diary(日記)とあり、情報、意見を中心に始め、フォロワー10万人くらいから日記を入れるといいそうです。

また、提供する情報として、「みんなが知りたくて、みんなが知らないもの」、次に「みんなが知りたくて、みんなが知っているもの」を提供するといいそうです。

兎に角自分に合った、自分が発信できる、さらにインターネット上にあまりない有益な情報を積極的に発信していくといいそうです。

⑧物語を転がそう

小説や漫画などの物語では、主人公がいろいろな挑戦をして、失敗したり成功したりしながら、成長していくのが王道です。

それと同じようにけんすうさんは、「物語的に自分の人生を客観視してみて、読者目線でおもしろいと思えるように生きていく」やり方をお勧めしています。

新しいことに挑戦するのは誰だって怖い。

それを乗り越えるためには、自分を客観視して「物語だったらどうなると盛り上がるか?」と考えるのが有効だそうです。

例えば3か月後に自分が作ったキャラがどんな状況になっていてほしいか

その名場面をイメージすることから始めるそうです。

そして名場面がイメージできたら、行動計画を立て、行動することになります。

⑨自分の所感-なりたい自分から想像する

けんすうさんのキャラ作りという発想は自分の考えにはなかったですが、若い時に自分がなりたいもの、やりたいことは何かを考え、アジアとの繋がりを作るインフラ事業に参画したいと思い、当時の会社を選び、今も海外との繋がりを作る仕事に携わっていることを思い出しました。

また、40代になり、自分の積み上げてきた経験値や成果から、できること、やりたいことを見つけ出すという思考プロセスでは、多分周りの人は面白いと思ってもらえなくて、寧ろ将来に向けて、なりたい自分を追いかけている姿の方が、人は応援しやすいんだと感じました

また、この本の良さ、つまり起業家の方が書いた本だと感じるのは、兎に角いい意味で「しつこい」

やりたいこと100のリストを作るとかは、他の本にも書いてあるけど、その内容をいかにブラシュアップして、書いた本人が真に納得し、行動できるところまで突き詰めていこうとする読者自身による作業を大切にしています

そしてその作業の結果、自分がパッとイメージ出来る姿になる

それが「キャラ」なんだと思います。

更に、自分が夢想した独りよがりのキャラでは行動に結び付けるのは難しく、実存する人を自分の理想とするキャラと結び付け、その人の行動を真似ることで、自分の理想を実現していく

けんすうさんの高校時代の「学歴詐称」を現実のものにする体験談含め、起業家になる人の執念のようなものを感じた本でした。

そして、この本を読んできてけんすうさんが、誰に向けた本なのか。

それは、一般人であり、起業家を目指す人向けなのかと思いました。

必ずしも、起業して成功するものではない。

やはり運としか言いようもないものがある。

しかし、自分のなりたい状態であれば、自ら夢想し、目指すことができる

更に、それで実現している人の真似をすれば、成功にも近づく。

著者が伝えたかった相手はこんなことを模索している人だったのではないかと思いました。

最後にリクルートという会社について。

先日の「起業家の思考法」、「起業家の思考法」を読んで-マイノリテイ(別のやり方)を恐れるな – アイアンマンブログ (ironman1977.com)

そしてこの本。

今後紹介する本の中もリクルート出身者の方が出てきます。

リクルートが大学に代わり、どれだけ起業家を輩出してきたか。

リクルート出身の様々な著者の本を読むと、その企業文化がうかがい知れます。

在籍していた年数は短そうですが、起業家同士が触れ合う空間として、良い環境なのだと感じました。

いずれにせよ、自分の人生をより行動的なものにしたいと考えている方は是非この本をお読みください。