「運」を読んで-ドン・キホーテ(安田隆夫さん)の凄さ

本日は、ドン・キホーテ創業者 安田 隆夫さん「運」を紹介します。

この本は、ドンキホーテを2兆円企業に作り上げた創業者の考えや経験、更にドン・キホーテの社訓まで紹介しています。

安田さんは、岐阜県生まれ、慶応大学卒業後、プロ麻雀士をしていたが、29歳でデイスカントショップを企業。

その後卸問屋「リーダー」を設立。

再度小売業へ再参入し、39歳でドン・キホーテ1号店を東京に出店。

その結果、直近まで34期連続増収増益なんだそうです。

目次

はじめに ドン・キホーテが起こした奇跡の源泉

第1章  運という未開の大陸に分け入る

第2章  幸運の最大化と不運の最小化

第3章  運の最大条件-「攻め」と「挑戦」と「楽観主義」

第4章  何が運を落とすのか

第5章  最大のキーワードは「主語の転換」

第6章  「集団運」という弾み車

第7章  自燃・自走の「集団運組織」をどう作るか

第8章  圧勝の美学を語ろう

エピローグ 人間賛歌こそが私の生き様

①運という未開の大陸に分け入る

安田さんが考える運。

それは、その人が成し得た人生の結果そのもの。

つまり、「運がよかった」というのは、その人が困難にもがきながらも、努力し行動した結果、人生が結果的により良い方向に向かったと捉える。

安田さんは、これまでの人生で、運という巨大な真実に翻弄されながら、誰よりも運に向かい合い、圧倒的なエビデンスを積み上げてきた。

そうした経験があるからこそ、運を良くする方法、悪くする方法というものが存在すると確信を持って言えるそうです。

大学卒業後、悪徳不動産会社に就職。

すぐに会社が倒産、そのあと、麻雀の世界で数年間プロギャンブラーとして生きていたそうです。

この生死を賭けた運の格闘を行うことで、人生における必勝法、実践的MBAを身に付けたそうです。

その中で、運のいい人とは、「運を使いきれる人」であり、運の悪い人とは「運を使いきれない人」あるいは「使いこなせない人」だと考えるそうです。

なお、例えば仏陀が解いたとされる「生老病死」、

すなわち生まれること、年をとること、病気をすること、死ぬことの四苦などの不可避の領域には、エネルギーを費やさず、不可避なものに対する諦めの良さも強運の基礎となると考えるそうです。

更に、長期的な「運」と短期的な「ツキ」は、全く別物で、勝負事などの短期のツキをコントロールすることは、実質的に不可能である一方、中長期的な運であれば、十分にコントロール可能であること。

一方、運に対する「感受性」が強い人と弱い人がおり、単なる頭の良さや勤勉さなどは関係がないこと。

また、運はつかむものでも支配するものでもなく、自らが受け皿となり、寄り添うべきものだという考え方なんだそうです。

この感覚は、プロ雀士との息の詰まるような真剣勝負をこなすうち、「運気の流れ」や「勝負の勘所」などを見抜く力をつけた。

自分に流れが来ていると感じたときは攻めの姿勢を貫き、ツキがないと感じたときは無理をせず「見」を決める。

そのために「何かをやってやろう」という意欲を心の中に充満させた状態で運のアンテナを立てればこそ、幸運も不運も敏感に察知することが可能となる。

次に未来に希望を持つ「楽観論者」のほうが運に恵まれる。

逆に悲観論者には運はやってこない。

「泥棒市場」で小売業に参入、問屋業に飛び込み、小売業に戻る。

安田さん自身が、カネもツテも全くゼロの状態でも、「俺はいけるかもしれない」という根拠のない自信があり、小さな希望から一生懸命拾い集め、自らの全知全能をフル動員し、少しずつ運を開花させていったそうです。

なお、運に関しても「大数の法則」が適用できると、つまりサンプルの数が多ければ多いほど、平均が母集団全体の平均に近づく。

つまり、試す回数が増えると、確率が一定値に近づく。

逆に試す回数が少ないと、偶然によって左右され、結果がまるで読めなくなる。

すなわち、人生における中長期の運のコントロール」というのは、「大数の法則」に則ったものだと言え、運を良くする行為、悪くする行為は、サンプル数が多ければ多いほど、よりはっきり見えてくる。

安田さんは、人生においては常にチャレンジを続け、サンプル数を多くしていくことが重要だという考えだそうです。

また、ギャンブルにはハウス(胴元)がプレイヤーに比べて優位に立っている程度を示す数値、つまり控除率と呼ばれるものがある。

この控除率がある限り、短期のツキに恵まれる例外を覗いて、プレイヤーはハウスに対して中長期では絶対に勝てない。

つまり安田さんの考えでは、運におけるプレイヤーではなくハウスになるべきだと言います。

②幸運の最大化と不運の最小化

「禍福はあざなえる縄のごとし」のように、不運と幸運は交互にやってくる。

時には不運ばかりが続くこともあるが、「大数の法則」を適用すれば、最終的にその確率はほとんど半々に近づいていくはずである。

では、幸運と不運が巡って来た時、それぞれどう対峙すべきか。

結論から言えば「幸運の最大化と不運の最小化」が最良の方策となる。

えてして人は不運な時に一生懸命もがいて、なんとか自分の受けた損失をカバーしようとする。

しかし下手に動くと傷口はさらに広がるもので、だからこそ不運が訪れた時は、下手に動かず、自己抑制して何もしないようにする。

その教訓として、ドン・キホーテが多店舗展開を開始し、順風満帆の成長・発展を謳歌していた時に、「夜11時閉店」を申し入れられ、安田さんが社内外で強気な姿勢を貫いた結果、反対運動が広がり、マスコミにもドンキ悪者論を煽り建てられた。

その結果、安田さんは急遽方針を変更し、「今は守りの時」と腹をくくり、出店に反対する住民の意見、要望をすべて取り入れた店づくりを徹底し、環境対応型店舗開発のノウハウを確立。

店舗周辺の清掃、警備員による巡回管理を強化し、地域住民に対する手厚いサービスを実施したことで、「不運の最小化」へとつながり、新たな幸運を呼び込み、スムーズな新規出店が可能になったそうです。

もう一つの教訓は、「幸運の最大化」こそが、運をコントロールする第一歩となる。

幸運が巡って来た時に、運をとことん使い切って目いっぱいの果実を収穫しておく。

それを不運が巡ってきた際の貯えとしてキープして頑丈なセーフテイネットを築いておく。

そうすれば向かい風が吹いてきても十分耐え忍べるため、気持ちに余裕を持って不運の最小化が出来る。

また、安田さんがこれまで開発・展開した業態は、およそ100。

そのうち現在まで生き残っているのは、およそ15業態。

一方、何回失敗したかということは全く気にする必要がなく、小さな失敗がずっと続いていたとしても、たった一回でいいから大きな成功を収めれば最終的に勝つことができる。

人はえてして「負け」には敏感だが、「勝ち」には意外なくらい鈍感である。

安田さんは得られる果実を完全に収穫できなかったことを地団太踏んで悔しがれる人が、本当に強い勝負師として強運に恵まれる。

百万円儲かるチャンスが巡ってきたら、百万円だけでは満足せず、さらに二百万円、三百万円と儲けるためにどうやって大きな勝ちを掴みに行こうかと思えるヒト。

つまり勝ちに敏感且つどん欲な人が、人生とビジネスで大きな成功を収めるという考え方だそうです。

一方、運に見放されつつあると感じる不運の時期がやってきたら、じっと耐えて何もせず、ひたすら守りに徹するのが得策だそうです。

しかし、その時も穴の外で起きていることを全神経を集中してじっと観察しながら、脳が擦り切れるくらい、考えに考えなければならない。

また、社会や経済が激動している時こそ、「見を決める」姿勢を活用し、泰然自若とし、自ら下手な動きはせず、冷静沈着に情勢を観察、分析する。

バブル時代、不動産取引で巨額の金を儲けている連中が沢山いたが、安田さんは財テクや土地ころがしなどは一切やらなかった。

その結果、バブル崩壊後二好立地の区画や店舗が売りに出され、格安で手に入れ、同時に企業のM&Aも積極的に仕掛けていったそうです。

更に「見切り千両」という言葉。

株式投資で買った株が下落してしまう。

人間は損失の確定を本能的に嫌うから、たいていの人はズルズルと下がり続けてもそのまま株を持ち続け、買値まで戻るのをひたすら待とうとする。

しかし、そうやって塩漬けした株の価値が短期間で買値まで戻るケースはほぼなく、その間他の成長株が次々と現れても、投資する資金は塩漬け株で眠ったままだから、儲けるチャンスをみすみす逃してしまう。

では株で儲けるにはどうすればいいのか。

一定以上の損が出た段階で、例外なく株を売却することをあらかじめ決め、損切りすることで得た資金を次の有望株に回していく。

その株の勝ちが上がれば、まさに「見切り千両」

安田さんの会社でも、2006年に東京都内で始めたコンビニ新業態「情熱空間」を2008年にすべて撤収。

その時期に長崎屋を買収し、弱かった食品部門のノウハウを獲得し、MEGAドン・キホーテ1号店の開業に繋がったそうです。

新たな業態開発は、百の挑戦で一つか二つ当たれば良い方で、大切なことは傷を大きくしないうちの見極めと見限りによる早期撤退を断行するから、次の挑戦が可能になる。

再挑戦を繰り返すことが、運を引き寄せ、大倫の成功の花を咲かせる唯一の道だと言います。

③運の三大条件「攻め」と「挑戦」と「楽観主義」

運の追求とは、合理性の追求。

「打率と打点の交差主義比率」「在庫回転率×粗利益率」を計算し、この比率が高い程、効率よく儲かっている商品。その商品に力を入れていくのが、もっとも合理的なビジネスの勝ちパターン。

ただし、そんな運を呼ぶ合理性を生かす上での前提条件。

それが「攻め」と「挑戦」と「楽観主義」の姿勢なんだそうです。まずリスクをとらなければ、大きなリターンはあり得ない。

不確実極まりない現代においては、リスクをとろうがとるまいが、思わぬ幸運や不運はそれなりにやってくる。

安田さんの座右の銘は、「リスクをとらないのが一番のリスク」と考え、若いうちから疾走してきたそうです。

累積損失が100億円を超えていた長崎屋の買収も当社社員、銀行、証券アナリストもほぼ全員が反対であったそうです。

しかし、結果は好立地店舗、累損による法人税免除、MEGAドン・キホーテという主力業態の確立によって現在の主力業態を確立。

リスクをとって、最大の果実を手にしたそうです。

また、リスクをとるために、攻めの姿勢を保ち続けるため、「速攻堅守」

実は基本的に「守備七割/攻撃三割」を黄金比として設定しているものの、重きを置くのはあくまで攻撃。

攻めの姿勢を大事にしなければ、決して良い運はやって来ない。

海外展開についても、Don Don Donkiでは日本産品及び日本企画の商品しか扱っていないが大成功例なんだそうです。

しかし、果敢な挑戦の手を緩めず、かつ現実を直視した速やかな撤退を恐れないことが大事なんだそうです。

安田さんは、「速攻堅守」と同様に「断行熟慮」を心掛けている。

まずは思い切って実行してみて、その上で十分に考える。

登山家の難攻不落の山に挑戦する都市、まずは実際に山に登ってみて、自分が建てた想定を現場で歩きながら検証しつつ、最悪の自体を回避しようと試行錯誤し続けることしか、道は開かれない。

仮に挑戦が失敗しても、その過程で学んだことは決して無駄にはならない。

結果として盛運を引き寄せることになるそうです。

特に安田さんは挑戦して悪戦苦闘しながら、自分が立てた仮説を検証することが、飯を食うよりも好きなんだそうです。

更に過去より今、今より未来が良くなるという「楽観主義」であること。

世界の株式時価総額は上昇。

世界の中心国以上の一般庶民は、昔の王侯貴族や大金持ちのそれをはるかにしのぐような、豊かで贅沢かつ便利なライフスタイルを謳歌している。

現代こそが人類史上最高の時代で、楽観論者であることが勝利と成功への近道であると言えると考えているそうです。

④何が運を落とすのか

日本の全体消費市場は、構造的にゼロサム、もしくはマイナスサムの中、思い切り戦闘モードを高め、ブルファイターになって戦う必要がある。

流通戦争という部隊で、全国に散らばる各店が白兵戦を繰り広げ、その地域の顧客を他店より一人でも多く獲得せんとする真剣勝負。

従い、戦わないこと自体が運を落とす最大のリスクだと考えているそうです。

特に「戦略や戦術を語る前に、まずは戦闘モードを全開にせよ」

かつて日本の家電メーカーや半導体メーカーは世界市場を席巻したが、この数十年で中韓台の新興メーカーに完全に逆転。

その理由に「世界一流」の座に安住して、「戦わないサラリーマン集団」に落ちぶれてしまったことになるのではないかというのが安田さんの見立てです。

さらにこれはひとえにトップの経営気質と姿勢の問題で、トップに立つのが守り最優先のサラリーマン社長か攻め重視の創業経営者なのか、会社の未来を思えばこそ、現状維持にはとどまらず、果敢に攻める経営を行う。

オーナーシップの希薄なサラリーマン社長と自らの命を賭けた創業経営者とでは、経営の論理と戦略が根本的に異なって来る。

中韓台メーカーの多くは、このオーナーシップ経営が機能していたから、ここまでの大きな成長を遂げたことが出来たと安田さんは考えているそうです。

なお、「口をきくだけで損をする」輩もいる。

麻雀をしていた時、周囲から「危ない」「近づかない方がいい」と思われ、まともな人間は殆ど相手にしてくれず、世間の裏街道まっしぐらのような人間、詐欺師、借金の保証人に被害を与えるやつなどきわめて有害な人間がうようよしていた。

そのような人間と雑談程度するだけで、決定的に運を落とす要因となると安田さんは自覚したそうです。

更に、他責的な人。

つまり自分が置かれている境遇について、自分自身で問題を解決しようとせず、「世の中が悪い」「会社が悪い」「周囲が悪い」と他人を攻撃したり罰したりして納得しようとするタイプ。

更に自分を過大に見せようとする疫病神。

結局人のことは分からず、目指すべきは「距離感の達人」

常に「一定の適切な距離感を保ちながら接する」のが運を落とさない極意なんだそうです。

とりわけ嫉妬の怖さを認識し、極力他人からの嫉妬を受けないよう心掛けること、

人生やビジネスで成功した時に、嫉妬を買いそうな相手にはなるべく会わないこと。

また、科学的な裏付けがないものを断ち切る強さが、いい運を呼ぶという持論でもあるそうです。

尚、独裁による自分の地位を楽しむようになったら、その企業と社員と従業員が不幸になるとも考えているそうです。

⑤最大のキーワードは「主語の転換」

安田さんの成功哲学、それは「主語の転換」。

つまり、「相手の立場になって考え、行動する」ということ。

壁にぶち当たった時、変えねばならないのは、立脚点そのもの。

要するに原因を解決しようとする側でなく、原因になっている側から発想してみる。

例えば、事業が上手くいかず、じり貧になって来たとする。

多くの場合、原因が分からないからじり貧に陥る。

ここでじり貧とは何かを考えると、取引先や消費者にとって、自分のビジネスや商売に対する必要度と支持度が低下している状態を指す。

だからこそ取引先や消費者、すなわち「相手の立場」になって本気で考えてみれば、自分のビジネスや商売の改善点が見えてくる。

しかし、殆どの人の目には「主語は自分」といううろこが何層にもへばりついている。

この考え方にたどり着いたのは、「自分の夢をかなえるために従業員を使う」という考えから、「どうしたら従業員たちを幸せにすることができるのか」を一生懸命考え、提案を続けることで事業も上手く回り始めたんだそうです。

また、商売を始めたころ、売る側からしかものを見ることができなかった。

一方、「売る側の一方的な意図など、買う側からは簡単に見破られてしまう」

現代の商売において、真正直こそが最も実効性の高い、盛運をもたらす現実的手法だと考えているそうです。

PPIHグループの企業原理は、「顧客最優先主義」「仮に自分がお客様だったら、一体どうしてほしいかを具現化すること」と定義しているそうです。

つまり、顧客が「売り上げに貢献して儲けさせてやろう」と思って店に来られるお客様など、ただの一人もいないはず。

従い、顧客側に立って、「この店に来て面白かった、得をした」と思っていただこう

というのがPPIHの基本姿勢なんだそうです。

「圧縮陳列」と「POP洪水」はその一つであったり、「ナイトマーケット」」の存在の発見。

商品をぎゅうぎゅうに押し込んだ圧縮陳列が「こりゃなんだ」と面白がられる

たまたま夜中まで営業してみたら喜ばれる

一貫してお客様の立場になって考える姿勢を崩さなかったのが成功につながったと安田さんは考えています。

また、こうした主語の転換は、お客様との関係にとどまらず、ライバル店との戦いなどにも応用する。

「これをされたらかなわんな」ということを徹底的に考え突き詰める。

ライバル店の立場になって「これだけはやらないでほしい」と思うことは何かを考え抜き、その結果を価格設定、販促や売り方に反映させ、徹底的に戦いを挑む文化が根付いたそうです。

さらに、上司の視点から「部下をどう使うか、どう真面目に働かせようか」という視点から、「自分なら、上司にどう扱われればやる気が出るだろうか」を一生懸命考える。

麻雀も同様で、初心者は自分の手ばかりを気にして、自分のパイだけを見ている。

しかし中級から上級になるにつれ、自分の手より相手の手を中心に見て、相手がどういう状況で何を考えているのかを読もうとする。

要は主語の転換ができており、その上達度こそが、麻雀のレベルとイコールになる。

幸運をモノにする人は、チャンスとピンチに敏感である。

それは、主語の転換とメタ認知を同時並行的に使い分けることで、多くの人が気づくことができないチャンスとピンチが両方見えてくると考えるそうです。

更には、安田さんは、マクロな視点で俯瞰してみる「鳥の目」と対象物に近づいてミクロな視点で精緻に観察する「虫の目」で、物事を立体的に浮かび上がらせる「複眼的」な思考法、更に生活や仕事の拠点で常に商売のネタを探し、実際にビジネスを起こしているそうです。

また、仮説は必ず間違えるもので、間違えた時は、謙虚に事実を直視し、即刻且つ柔軟に変化対応して修正を行う。

その繰り返しと精度向上こそが運を呼び込む鉄則なんだそうです。

更に業務を進めていて後で不都合な状態に陥る場合は、必ず事前に何らかの兆候を発している。

そのシグナルを見逃さず、きちんと前始末さえしておけば、後で大騒ぎする必要がない。

前始末の上手な人は、業務に潜む多面性と潜在リスクに対する感受性が強いそうです。

⑥「集団運」という弾み車

安田さんは、自分自身の「個運」が「集団運」へと転化し、爆発的な上昇気流が生じたと考えているそうです。

WBCなどでの大谷選手やダルビッシュ選手の謙虚且つ情熱あふれるパフォーマンス、またアメリカとの決勝戦前の言葉によってチームの空気を一変させた。

これも強力な「個運」がチーム全体の「集団運」へと乗り移ったと言える。

ビジネスの場面では、経営者とビジネスパーソンにとって必要なのは、中長期にわたって勝ち続ける集団運であり、仮に短期的な局面で負けたとしても、その負けを次の価値につなげるための材料として検証、分析し、バージョンアップを得て果敢に攻めていく。

そんな集団運を持った組織を目指さなくてはいけない。

この「集団運」を身に付けるためには、現場への徹底した「権限移譲」

上司が持つ権限を一部ではなく、全部まるごと任せることで、部下が自発的に業務を行うことを可能とする。

一時期安田さんの考えを従業員に教え、やり方を真似してもらおうとしたが、従業員は動かない。

そこで、従業員ごとに担当売り場を決め、仕入れから陳列、値付け、半場いまで全て「好きにやれ」と思い切りよく丸投げし、担当者毎にそれぞれ専用の預金通帳を持たせて商売させるという徹底ぶりが、ドンキ最大のサクセス要因となる「権限移譲」の始まりだったそうです。

安田さんとすれば、従業員に圧縮陳列のことを説明しても、全く理解されなかった。

一方、自分だけではどうにもならないし、周りに頼れる人間もいないという不運のどん底に突き落とされた。

そこで、「不運の最小化」により、下手に悪あがきをせず、自己を無力化し、ピンチが過ぎ去るまでひたすら耐えることにした。

その結果、従業員たちは権限を移譲されたことで、自ら考え判断し、行動し始めた。

安田さんが一人で築き上げたスタイルが、従業員たちによって拡大再生産され、ドンキが急速に多店舗化していくことに繋がった。

これはまぎれもなく「幸運の最大化」といえる。

また、その後ドンキが拡張するにあたり、面白い店にすればするほど現場の負荷は増すばかりで、拡張性は遠のく。

そこで、オンリーワンの競争力を発揮して、拡張性に直結させる具体的手法は何か。

その答えは、現場の迅速かつ柔軟な変化対応力に尽きる。

つまりは、「個人商店主システム」による現場への主権の付与が、競争力と拡張性という「相並ばない二択」を両立させる。

このドンキ流の「権限移譲」と「個店経営」は、ユニー買収の際にも取り入れ、売り場担当を二十以上に細分化、そこに配置したパートやアルバイト従業員に、商品の調達から棚割、値付け、在庫管理まですべての業務を任せ、従業員に「どうすれば目標の粗利益率を達成できるのか。」「どういう販促をすればお客様が集まるのか」を必死に考えるようになり、すさまじい情熱と熱意の渦が沸き上がり、現在の業績へと繋がっていったそうです。

なお、安田さんは今の日本は悲観に転じたり、未来を疑った瞬間に、運はがたがたと音を立てて崩れ去り、集団運にはその特徴が強く出る。

一方、未来ある若者たちの中から、沢山の企業かが出てくることを期待し、果敢な挑戦をする個人や会社がどんどん増えれば、日本全体の富も幸福度も地位も上昇していき、一億層ハッピーに近い状態になるはずだと感じているそうです。

⑦自燃自走の「集団運組織」をどう作るか。

経営者自身の意欲や能力は際立って高いのに、会社事態の業績がパッとしない。

実は「経営者の一歩より社員の半歩」の方が、会社にとってはるかに重要である。

社員一人一人が熱意をもって仕事に取り組んだ方が、会社は何倍も大きく前進する。

経営者がやるべき一番大きな仕事は、それぞれの現場で働く人をその気にさせ、自燃自走する「集団運組織」をいかに作り上げることができるか。

もっといえば、社員や現場従業員の人たちが、自ら燃え上がる年正体となって皆で熱く駆け抜けるように自走する組織を作り上げ、そのための燃料を惜しみなく配給し続ける能力こそが、経営者には不可欠になる。

その燃料がその都度議論、検討される創造的プロジェクト、ボトルネックを抜け出し、輝ける未来を予感させてくれるような提案である。

経営者は常にそういうものを提示し続けなければならない。

企業のトップは従業員の努力や苦労を知り、そこに寄り添う。

彼ら彼女らの立場になって「こういうことを言われたら燃え上がるだろうな」と想像力を働かせる。

「日々忙しい中、本当にありがとう。これからも是非、皆さんと手を取り合って盛り上がっていきたい」と心の底から共感し、敬意を払うことができるか。

それを言えるかで現場の人間はついてくる。

経営者の心の中で描く会社の方向性とか未来の展望といったものを、社員個々の人たちに主語を転換して、「これだったら燃えてやってくれるのではないか」という言葉に置き換えていく。

それは「複雑な事象の本質を見抜いて単純化し、その上でいろんな人を巻き込んで、理解から納得に落とし込んでその気にさせる。

また問題解決に向けての方法論を同時複合的に考え、かつそれを適時、変化対応して応用することのできる能力にする。

⑧所感-今回は最後までドンキの紹介に専念します。

今回は安田さんの考えを余すことなく伝えることに専念します。

(故に、所感は書きません)

PPIHグループ(ドン・キホーテ)の社訓

企業原理

顧客最優先主義

顧客最優先主義をPPIHグループにおける不変の企業原理とする

顧客最優先主義が全ての企業行動を規定し駆動させる

顧客企業主義を実現するために経営理念を遵守しなければならない。

経営理念

第1条 高い志とモラルに裏付けられた無私と真正直な商売に徹する

第2条 いつの時代も、ワクワク・ドキドキする、驚安商品がある買い場を構築する

第3条 現場に大胆な権限移譲を図り、常に適材適所を見直す

第4条 変化対応と創造的破壊を是とし、安定志向と予定調和を排する

第5条 果敢な挑戦の手を緩めず、かつ現実を直視した速やかな撤退を恐れない

第6条 浮利を追わず、中核となる得意事業をとことん突き詰める

マネジメントの鉄則9か条

第一条「威張るな」

第二条「迎合するな」

第三条「権力者になるな」

第四条「恐怖支配をするな」

第五条「多様性を認めよ」

第六条「自己管理を徹底せよ」

部下篇

第一条「礼儀をわきまえよ」

第二条「増長するな」

第三条「自分の意見をはっきり述べよ」

次世代リーダーの心得12か条

1.PPIHグループに「監督」は要らない

2.「使われたくない人事権」を使いこなしてこそ、真のリーダーである

3.権限移譲の本質は「狭くて深い」

4.「明確な勝敗」「タイムリミット」「最小限のルール」「大幅な自由裁量権」

5.自分の権限を自らはく奪し、部下に与える

6.ポジテイブ、ネガテイブ、どちらであっても、誠意を持って後世に部下を評価する

7.部下は「育成されたい」などと思っていない。「信頼されたい」と思っている

8.「誉める」とは、相手がひそかに誇りをもっていることを見つけ、認めることである

9.「ムチとアメ」

10. 「理想の部下」が必ずしも「理想の上司」になれるわけではない

11.部下は、その上司の部下で花kう、会社の資産である

12.相手の気持ちもわからない者が、人に強くなれるわけがない