商談期間中の一つ一つのやり取りが顧客からの信頼獲得に繋がる!

受注件数の多い優秀な営業の方は、顧客との商談から工事契約成立、更には工事期間中や納入後の対応の仕方まで一貫してイメージが持てます

これは、経験則のなせる技といった側面が強いですが、一つ一つの内容を丁寧に簡潔にわかりやすく説明し、顧客と合意形成を図っていく過程にこそ、強い信頼関係が生まれる要因があります

今日は、そんな一つのプロジェクトの成案化の成り立ちの流れを説明していきます。

①顧客の考える将来展望と仕様のすり合わせ

設備メーカーにとっては、与えられた諸元に基づいて仕様を確定していくことになりますが、この顧客が考える展望/商品設計が相手にとっては最も重要な要素となります。

例えば私が担当した顧客には、同じ国にもかかわらず、メッキ鋼板の板厚を薄い仕様にしたい顧客、一方出来るだけ厚い仕様にしたい顧客がいました。

この違いは、製品を提供する市場が従来の屋根壁材、特に輸入品も意識しているのか。

はたまたスチールハウスなど新しい市場を開拓していくための用途なのかによって異なっていました。

この生産する板厚の違いによって、生産ラインの長さなども変わってくることから、設備メーカーとしては、極力早めに顧客に仕様を固めてもらうよう依頼しますが、一方、顧客の立場からすると、この決定が何十億円もの設備投資をした上で、将来の売上を決める商品の市場投入そのものに繋がるため、簡単には決められません。

そこで、私の方では、例えばベトナムや中国、日本等で起こっている市場と各顧客がどのような設備投資を行っているかという情報を提供して顧客の判断材料を提供しました。

②ライン仕様の協議と顧客との工事範囲の協議

顧客が作りたい製品が決まったら、ラインの主仕様や業務範囲を固めていきます。

一般的には、機械/電気計装関連品の提供は、サプライヤー側が行いますが、例えば工場建屋、必要な水、電力、ガスの供給体制の整備などは、顧客の供給範囲とすることが多いです。

しかし、そのような協議をする中でも、顧客が対応できるのか、供給元を知らなかったりする場合には、サプライヤーを紹介したりなど様々な人脈、知見を活用して顧客の課題を解決する方向で協議を継続します。

サプライヤーにとっても、案件が成案化するか否かにかかわってくるため、社内に知見がなければ、社外と様々な情報を一生懸命収集/提供します。

③商務条件の提示もサプライヤー側から

技術仕様がある程度固まり、詳細な詰めに入るところで、私は商務条件に関する協議も行っていました。

通常契約書のひな型を渡して、相手にコメントをもらうのが一般的だと思いますが、私は契約書協議にに入る前にA4 1~2枚の表(Term Sheet)にまとめて、商務条件を一項目ずつ説明していました。

その中には、例えば代金回収方法(銀行信用状付きLetter Of Credit)や設計変更、契約不履行時の対応、係争となった場合の対処法なども当方の考え方を説明し、相手の考えを確認します。ここで大切なのは、会社として絶対に譲れないところは伝え、その他の先方が譲れないところは、協議するという姿勢です。このように分かりずらい内容もしっかりとかみ砕いて相手の理解を促すことで、契約に向けた準備を整えます。

④最後のトリガー 当社ライン見学

ある程度顧客との協議事項が完了したところで、顧客が検討している生産ラインの見学をし、投資に向けた更なるイメージを持ってもらいます。

ここでは当社が提供した生産ライン、そして提供した相手へのヒアリングを通じて、顧客が当社ラインへの信頼性を持つことに努めました。

このための下準備として、当社が提供した生産ラインに関する納入先との使用時の課題感の共有、問題解決を納入後も丁寧に図ることで、納入先にとっては、将来の競合他社となりえる顧客の生産ライン見学にこぎつけることが出来ました。

そして、この見学が決定打となり、当社がそのまま契約の成案化に結び付けることになりました。

⑤纏め

顧客との商談の際に、商談の流れを理解した上で、一つ一つの課題に取り組み、顧客の信頼関係を構築していくことで、競合他社に付け入る隙を与えずに、契約の成案化まで進めることができます

今日は、その一連の流れを紹介しました。

  • 顧客の求める将来展望に対する対話と希望仕様の引き出し
  • ライン仕様と両社の業務範囲決め
  • 商務条件の提示
  • ライン見学