本日は、大江 英樹さん著作「となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」」を紹介します。
大江さんは、60歳まで大手証券会社で勤務した後に独立。
今では経済コラムニストとして、様々な書籍や講演、更には直近までテレビにまで出演されていました。
この方の「知らないと損する年金の真実」知らないと損する年金の真実 – 2022年「新年金制度」対応 – (ワニブックスPLUS新書) | 大江 英樹 |本 | 通販 | Amazonを読んで、信頼できる方だと感じ、その後何冊か読み進める中で、紹介しようと思ったのがこの本です。
尚、当時書籍が発刊された時には、いまいち自分の知見が追いついていませんでしたが、最近改めて真面目に株式投資に向き合うことを決めた中で、大江さんが書いている話が、極めて説得力があると感じました。
目次
第1章 「億り人」とはどんな人たち?
第2章 億り人の思考と行動
第3章 投資のパターン
第4章 「となりの億り人」インタビュー
第5章 「億り人」素朴な疑問Q&A
➀「億り人」とはどんな人たち?
他の欧米諸国に比して、日本の給料がこの20年間上がっていない。
これは、厳然たる事実だとして、実は個人金融資産の20年の推移をみると、2001年に1394兆円だったものが、2021年に1968兆円と4割以上も増加している。
近年の株高による資産増ではないかという推測に対して、大江さんは、日本人の持つ有価証券の比率は16%以下で、別に要因があると推定しています。
それは、今の若い人が本当に真面目で熱心に貯蓄に励んでいるのではないかということ。
つまり昨今のように給料が上がらないのが普通になってくると、将来に備えてたくわえを持っておかねばというのが、若い人の常識になっているのではないかと想定しています。
また、「億り人」と共に流行となっている「FIRE」。
つまり「経済的な自立を得て、早期に退職しよう」という考え方。
このFIに当たる「速く経済的な自立を図って会社に頼らなくてもよいようにしよう」という考え方は大切だと大江さんも考えるそうです。
ちなみに仕事が苦行な理由は、自己決定権がないため、社長にならない限りは、どこまでいても自分の意見は否定されることは起こり得ると言い、サラリーマンのコントロール感を得られないことに理解も示しています。
尚、そのFIを達成するために、大江さんが影響を受けた本として「となりの億万長者」というアメリカの本で、全米純資産が100万ドル以上ある人達を20年間にわたって調査し、彼らが一体どんな人たちで、どうやって資産を築いたか研究し、その内容を纏めた本があるそうです。
その結果「億万長者」と言われている人たちの現実の生活は、一般的なイメージと全く異なり、立派な家に住み、仕立ての良いスーツを着て高級車に乗っている人は、寧ろそれほどお金を持っているわけではなく、本当のお金持ちというのは、とても地味で堅実な生活をしているということだそうです。
その本で記載したお金持ちになる7つの法則は以下です。
➀収入よりはるかに低い支出で生活する
②資産形成のために、時間、エネルギー、金を効率よく配分している
③お金の心配をしないですむことのほうが、世間体を取り繕うよりもずっと大切だと考える
④社会人になった後、親からの経済的な援助を受けていない
⑤子どもたちは、経済的に自立している
⑥ビジネスチャンスをつかむのが上手だ
⑦ぴったりの職業を選んでいる
大江さんは、この中で共感するのが、➀、②、③と⑥だそうで、その内容について本書で書き下ろしています。
まず収入よりも大事なのは「収支」という考え方だそうで、億万長者に共通するたった一つのことを上げろと言われたら、「収入以上に使わない」こと。
誰にでもわかる話ですが、実際にはやれていない人が多いからこそ誰もがお金持ちになることができないそうです。
さらに、億万長者にとって「10万$から20万$の収入があれば」いくら稼ぐかよりも「持っている資産をどう運用するかのほうがずっと重要だ」ということが書かれています。
大江さんは、この「運用が大事」というフレーズが多くのサラリーマンにとって役に立つことを上げています。
リスクを取る覚悟と勇気を持って投資をするのであれば、きちんと勉強した上で、投資はおおいにやるべきだと思っているそうです。
尚、お金持ちの個人投資家の特徴として、トレーデイングで成功して資産を作っていった人は少なく、株式投資で資産形成した人の多くは成長企業や優良企業の長期投資であること。
中には投資信託の積み立てで資産を築いた人もいるが、共通するのは、日常の生活の中で無駄な支出を無くすことで、投資するための資金をこしらえていることだそうです。
更にいうと、個別企業に投資している場合でも、積み立て投資している場合でも、一定額の現金、すなわち待機資金を用意しておき、市場が大きく下落した時に買い増しするということを実行できた人が成功しているそうです。
資産作りに成功した人の多くは、普段の積み立て投資以外に、大幅な下落時をチャンスと捉え、それまでに準備していた待機資金を投入したことで、長期的には大幅な収益を得ることができたそうです。
尚、億り人になる三つのパターンとして
①代々資産家の家に生まれ、相続によって自分も資産家になる
②自分で事業を興して成功する
③普通に働きながら投資で資産形成をする
を比べると、
➀については、何代も続けて資産家でいることは難しく、ある近江商人の方は『代々自分の子供に対して事業を大きくしようとか発展させようなんていうことを考えず、今の商売を、そのまま維持することを考えろと言い伝えてきたそうです。
それでも何代も続くと中に非常に商売の才能に優れた奴が出てくる。
そういう奴が何代かに一人現れれば十分との考えだったそうです。
尚、多くの一般人にとってはこのような考えは参考にならないと言います。
また、自分で事業をする人も自分達が作る製品やサービスを広げる事業欲は強いものの、お金に対してあまり関心がなくただ金儲けしたいわけでは無い人が多いようです。
つまり、億り人になりたい人がお金儲けだけを目的としても上手く可能性は限りなく低く、更に言えば、起業と言うものは『強い情熱』『経営を成功させる才覚』『リスクを取る覚悟』。
更に「運」だって大きく左右することから、資産家になりたいために、自分で事業を興して成功すると言うのもあまり参考にならないと大江さんは言います。
従って普通の人には、働きながら投資で資産形成するのがのが大切だと言います。
仕事をせずに株式投資や不動産売買で利益を得るのは非常に難しいと考えるべきですし、サラリーマンの収入だけでは億り人にはなれない。
働きながら得た収入から出ていく支出をできるだけコントロールし、そのお金を何らかの形出投資することが資産家になるためには必須だそうです。
②億り人の思考と行動
資産家になる人にも2つの種類に分かれており、企業オーナーや医者、フリーランスといった自営業や企業家の人たち、もう一つは普通のサラリーマンだそうです。
尚、自営業で資産家になる人には3つの特徴があるそうで、
①約束は必ず守る、
②結論を出すのが早い、
③部屋や机がきれいだそうです。
特に個人事業主の場合、信用を失うことは致命的であること。
また、特にオーナー経営者は全ての決定権限と責任が集中するため、何事も直ぐに決断せざるを得ないこと。
そして決断が早いことで儲けるチャンスを、失わずに済むことで、一方、失敗したと分かった時点で早く止めれば被害が少なくて済むことが、メリットだと言います。
次にサラリーマン編です。
サラリーマンにとって節約が大切だと一般に言われますが、大江さんの考えでは、天引きの習慣だと言います。
また、天引きしたお金は必ずしも投資に回さなくとも構わなく、単に貯蓄でも良いそうです。
更に生活パターン自体で考えるとお金とは『稼ぐ』『使う』『貯める』『増やす』そして『守る』ものだそうで、これをどうやってコントロールしていくかが重要と言います。
「稼ぐ」はサラリーマンでは急に収入は増えず、『使う』『貯める』『増やす』のうち貯めるから始めるべきだと言います。
ちなみに本多清六さんと言う巨額の資産を築いた人は、月々の四分の一を天引きで貯蓄、賞与などの臨時収入は全額を貯蓄に注ぎ込んだそうです。
尚、一定の生活費を貯める基準として大江さんは生活費の2年分を推奨しています。
従って先ず天引きで一定額まで貯めたら、貯めたお金には手をつけず、それまで天引きしていたお金を増やすために貯蓄ではなく投資に回す。
このパターンを早い内から確立することで、40.50代で億り人になった人は財産をこしらえているそうです。
更に何でも自分で考える。
資産を作るために投資をするのであれば、絶対に自分で考えて判断しないと駄目だそうです。
更に安易に人の言うことや勧めを受け入れるのではなく、何事も疑ってかかる。
例えば保険とローンは資産づくりの大敵であり、日本は社会保険制度が発達しているため、限定的に利用すれば良いと言います。
また、ローンは借金であり、家を建てるためにもローンを使うことは分かるにせよ、それ以外は無駄遣いと言います。
サラリーマンで億り人になった人は
➀保険は加入した方が良い。
②欲しいものがあればローンで手に入れればいい
と言う一般通念に安易に乗っかるのではなく、本当に必要かしっかり自分の頭で考え抜いているそうです。
③億り人に共通することとは
ロバートフランクさん著書の「幸せとお金の経済学」を読むと地位財と非地位財と言う考え方が紹介されており、地位財は他人との比較によって初めて価値の生まれるものとしています。
例えば収入、社会的地位、評判、住宅や車などだそうです。
一方非地位財とは休暇、自由、家族への愛情や友達への友情、働く環境の快適さだそうです。
資産家の人は非地位財に価値を見出していて、この点が多くの一般の人と異なるそうです。
では一般の人が資産家の人たちが共通してやっていることを真似するとすると、収支を管理することだそうです。
地道に支出管理しながら貯めたお金を少しずつ投資に回す。
その際、削っても全くストレスがなく実効性の高いものとして保険があるそうです。
サラリーマンで資産を築いた人の多くは自動車保険や火災保険に入っていても生命保険や医療保険に入っている人は、今までの取材でほとんどいないそうです。
また、保険以外にもクレジットカードローン。
リボ払い金利、スポーツクラブの会費、スマホのオプション等無駄な支出を無くし、月に1-2万円捻出し、30年間で捻出3%で回せば、3千万円近くになるそうです。
④億り人の意外な発想と行動とは
実際に資産家の人たちに取材をしてみると寄付を好む傾向にあるそうです。
先程の本多清六さんは定年退官とともに殆どを公共の関係機関に寄付したそうです。
その理由として非地位財としての心の豊かさを求める、つまり人のためにやったことが自分の満足を高めることになっているかもしれないと言うこと。
そして税金の使い道を指定できる事で、自分の好む人々を支援することに使われているのであれば大いにやるべしと考えているのでは無いかと大江さんは分析しています。
また、資産形成のノウハウを教える活動をするのも特徴的で、自分でブログを書いて資産の中身や運用まである程度公開しているそうです。
情報発信する億り人たちは、一般の人たちへ常に自分の考えや情報を発信することで、ヒントを与え、励まし続けているそうです。
これも自分なの思いを共有してくれる人を増やしたいという非地位財を好む傾向の現れと言えるのでは無いかと大江さんは推測しています。
⑤投資のパターン
億り人になるための方法を考える際、大江さんは、再現性を意識すること。
つまり同じことをすれば結果のバラツキが少なく、同じような結果になるということを資産形成でも言えるそうです。
つまり
➀働いて稼ぐ、
②稼いで得た収入を貯める、
③貯めたお金を増やすの3つに分けられると考え、
➀については、特にサラリーマンにとっては、一定のルールや手法に沿ってやれば、一定の地位を得ることは困難ではないという観点から、再現性はあること、
また、②については、給与天引き、そして支出監理をすることで、貯めることの再現性があります。
実は、一番難しいのは、③の貯めたお金を増やすことで、その方法は有価証券か不動産への投資となります。
株式投資の場合は、「億り人」になった人の中には、トレーデイングで成功した人もいるようですが、短期トレードでずっと儲け続けるというのは、幸運が続いた場合か、ごく稀な才能を持った人でしょうから、再現性はあまりないと考えるべきだそうです。
では、投資で再現性のある成功方法は一体何なのか。
大前提は「長期の運用を再現すること」そして「取るべき時にリスクを取る覚悟」そしてそれを実行できるメンタルの強さが必要だと言います。
⑥株式投資で大事なこと
株式投資で大事なことは、まず収益を上げるといっても、二つの考え方があること。
一つは「積極的にリスクを取って儲ける」という考え方。
もう一つは「投資の収益によって自分のお金の購買力を維持する」という考え方に分かれるそうです。
ちなみに、守る投資の場合は、投資信託を長期に積立で国産分散投資をするか、物価変動型国債などのインフレに体制の強い安全資産にほおっておくだけでもほぼ大丈夫だそうです。
一方、億リ人を目指すのであれば、自分の持っている資産を大きく増やさないといけないため、「積極的にリスクを取って儲ける」やり方を目指す必要があります。
その際代表的なやり方としては、2つ考えられるそうです。
➀トレーデイングによって売買を繰り返し、利ざやを取る、
②将来の成長を期待できる個別企業の株式を長期保有する。
そのうち、大江さんとしては、「ウオール街のランダム・ウオーカー」を個人投資家のバイブルと言って推奨しており、株式の短期的な動きはランダム・ウオークでどちらを向くか分からず、全く予想出来ない。
それは一番多くの人が美人だと思った人を当てるため、人がどう思うかを洞察し、読まなければならないから困難なのだと言います。
従って、再現性という点で難があり、高い実績を挙げられるのは、②の成長株の長期保有だと言います。
尚、この成長する企業の長期保有が良い理由は以下の理由だからだそうです。
株式投資が唯一是体正しいことは何かというと、「株式の価値は、その企業が将来にわたって生み出す全てのキャッシュフローの合計」。
つまり「稼いで利益を生み出す力」であり、「将来にわたって継続することができるかどうか」であるがために、株価は長期的にその企業の利益の増え方と一致してくるため、長期に保有して成長性を享受することが大切だと言います。
尚、この基本的な知識が書かれた本として、大江さんは
➀「ビジネスエリートになるための教養としての投資」(奥野一成さん著)
そして
②「真のバリュー投資のための企業分析」(柳下 裕紀さん著)を勧めています。
また、成長株は必ず戻るため、暴落した時に売ってはいけないのが鉄則だそうです。
投資信託については、個別株への投資に比べて、分散投資をしてリスクを低減させるという側面があるため、積極的にリスクを取るというよりもコツコツと積立をして、資産形成を図るという事になります。
従って、大きく資産をふやしたいのであれば、投入する金額を多めに入れ、可能な限り投下原本を増やして積立をすること。
そして暴落した時に普段の積立金額よりもかなり多くの金額を投資することだそうです。
実は、投資に関する書籍で不朽の名作のひとつと言われる「敗者のゲーム」という本には、1982年から2000年までの18年間にわたる値動きを詳細に調べると、18年間のうち、最も株価が上がった上位30日だけで上昇幅の4割近くを占めるそうです。
つまり、その30日間市場に居なかったら、収益の4割は失われていたことを意味するそうです。
従って、常に市場に居続けることが大切なんだそうです。
不動産投資については、大江さんご自身は手を出していないものの、
➀不動産投資は誰でもできるけど甘く見てはいけない。
つまり、大事なのは収益性(投下した資本に対して家賃がどれくらい入り、利回りが幾らになるか)、
②投資対象の選別が最も大事-不動産投資においても、物件の選定が何より大切、
③割安なものを買う、
④購入の相談は業者に相談しないなどだそうです。
また、長期に保有していて結果的に値上がりして売却益を得られることよりも、家賃収入が主な収益となることが、不動産の特徴だと言います。
いずれにせよ、好きこそものの上手なれだそうです。
⑦の所感-この本を読んでからまともな株式投資に変わっていった!
私は、この本を最初読んだとき、「なんだ、原則しか書いていないじゃないか」と感じたのが、最初でした。
当時私自身5年以上の長期投資という概念がなく、儲けても数年で売っていたこと。
そして持っている株もあまり上がらず、株式投資そのものへの興味も失いかけていた頃でした。
しかし、この本に書いてあった奥野さんと柳下さんの著書を読んだこと。
「ビジネスエリートになるための教養としての投資」を読んで | すがわら あつし (ironman1977.com)
「ビジネスエリートになるための投資家の思考法」を読んで | すがわら あつし (ironman1977.com)
「真のバリュー投資のための企業価値分析」を読んで | すがわら あつし (ironman1977.com)
更にお二人の推奨し、実際に運用している個別株の論拠などを伺い、正に目が開かれる事になりました。
また、この本には実際に億り人になった四人の方をインタビューしていますが、その方々もXなどで積極的に発信しており、すごく参考になります。
私が考える名著とは、様々な古典から選りすぐり、その考え方を発展させている本です。
また、そういった本は親切にも誰の本が参考になったかまで記載している為、更に深掘りが出来ます。
最後に、実は大江さん、奥様の加代さんとカラオケに行ったことがあります。
本同様サービス精神満点で、替え歌、著名人モノマネレパートリーと芸も多彩でした。
今は少しお身体を崩されていますが、またお元気なる事を心からお祈りしています。
という事で、ここまで書評読んだ方は、本を買って下さい笑。