本日は奥野一成さん著作「ビジネスエリートになるための教養としての投資」ダイヤモンド社を紹介します。
奥野さんの本は、既に「ビジネスエリートになるための投資家の思考法」を一冊紹介しており、この本は投資家の思考法が続編となった最初の本です。「ビジネスエリートになるための投資家の思考法」を読んで – アイアンマンブログ (ironman1977.com)
前回の本では、投資家の思考法であるインベスターシンキング(①俯瞰、②動態的、③斜めから見る)を使い、
1.企業が稼ぐ力があるのかを推察する(付加価値、競争優位性、長期潮流)。
そしてその視点を会社員自身にも当てはめて考えることで、
①自分の付加価値は何か―顧客が抱えた真の課題を見つける、
②競争優位性-2つ上のポジションから仕事現場のあるべき姿を探し、より本質的に必要な能力を掘り下げる姿勢、
③長期潮流-自分の事業に関する仮説を立てる
この3つを考えれば、やるべきことが見えているといった、自己投資と自分の付加価値を最大化するといった内容の本でした。
今回の本では、「株式会社の長期投資に関する考え方」を披露している本で、私自身は、著者の投資に対する考え方が受け入れやすく、今後の人生の株式投資をこの考え方に基づいて投資したいとさえ思っています。
その内容を紹介していきます。
1時限目 投資家の思想が人生を成功に導く
2時限目 私の投資家人生
3時限目 日本人はなぜ投資が苦手なのか?
4時限目 「投資」と「投機」は違う
5時限目 売らない株を買えばいい
6時限目 ファンドマネジャー流株式投資で成功するコツ
①労働者2.0を目指せ
著者が目指すべきものとして、今のサラリーマンの考え方は、労働者1.0としてますます貧乏になるだけだといいます。
従来の上の指示に従って日々の生活を支えるために働く指示待ち、使われる側でしかなく、受け取った資金は貯蓄のみという「労働者1.0」
それに対して、お金を出して他の人を働かせる「資本家」、この間には大きな違いがあること。
アメリカ人と日本人で資産がこの数十年で大きく開いたが、その差が上の労働者と資本家の思想の違いだと著者は言います。
そこで、会社員は、まず「労働者2.0」を目指すことを提唱しています。
その働き方とは、自分で働いているというマインドを持ち、「行動」する力を持ち、接点も自社全体、顧客、業界と幅広く持つこと。
更に自己投資をしっかりすることに加え、株式等の長期投資を行い、他人を働かせる発想を持つ必要があるといいます。
そのためにも「時間」という有限のリソースを有効に配分することを意識し、若いうちからきちんと考えることが、「自分が働く」にしても、「自分以外を働かせる」にしても、その効果を増幅する変数であると考えるべきだそうです。
若い間は、まず自己投資をし、「自分が働く」という最も着実な土台を整え、将来の選択肢を獲得することを優先する。
そして余ったお金は株式投資で自分が務める会社よりも素晴らしい企業に稼いでもらう。
更に投資先企業の事業性や産業について自分なりに考えるようにする。
そのことが、ビジネスパーソンとしての思考力を格段にアップし、自分が働くという投資にも良い影響が現れるそうです。
②構造的に強靭な企業の条件
筆者は、高い付加価値、高い参入障壁、長期潮流を持った企業が構造的に極めて強靭であり、長期的に投資できる企業と定義しています。
必要性が高ければ高いほど良い、その会社が存在する意義はどこにあるのか(筆者はその一例としてデイズニーを上げています)。
今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて誰も思わないほど圧倒的に強いかという高い参入障壁。
更に、長期潮流。
例えば、人口動態など30年前に50億人だった人口が現在70億人となり、更に増えていくこと、その中で長生きしたいというニーズ、民主主義国家の中で国家財政は悪化するというのもその一つだ考えているそうです。
一方、参入障壁というのは、何もしなければ、崩れるのに1年もかからない。
例えば日本企業の参入障壁といえば、大量生産のモノづくりでコスト優位性を追求するものが多かったため、日本以外の国でも真似をしようと思えば出来てしまうと分析しています。
海外でも通用するような参入障壁による強靭な構造に支えられた企業であれば、日本企業にも未来がある。
更に東京圏のみのスーパーマーケットであれば、人口はまだ増え続けており、日本においても長期潮流に乗っているといえる。
筆者はそう分析しています。
③長期投資の長期とは「永久」のこと
筆者の考える長期投資とは、参入障壁がなくならず利益を出し続けている間はずっとと持ち続けることだそうです。
従って買う時も2-3年かけて買うそうですし、相場のサイクルで複数回に分けて投資をすると、5-10年単位になるそうです。
また、保有した株式を売却する際には、高い参入障壁を持っている会社に対して、その参入障壁をむしばむ競争相手が出てきたら、その時点が売るタイミングと判断しているそうです。
④自分の所感-株式投資に対する概念が変わりました。
今回も、ほぼネタバレに近い形で本の概要を紹介してしまいました。
何故なら、これまで40数年、このような参入障壁やら持ったら持ち続けるという発想をもって株式投資をしてこなかったため、私にとって極めて新鮮だったため、ついつい紹介したくなりました。
この本には、更に長期投資に適する具体的な会社を紹介したり、筆者のキャリアの過ごし方から、何故このような考えに至ったのかという思考の原点、ファンドマネジャーの株式投資術などについても、記載しています。
ちなみに農林中金バリューインベストメンツが運用するファンドを見ると、この本の内容に沿った考え方で実際に投資がされていることがわかります。
NVICのファンド(投資信託) | 農林中金バリューインベストメンツ株式会社
今回、いかに日頃の株価という表面だけを見ていたか反省させられるとともに、投資について、改めて考えなおす良いきっかけになりました。
また、アメリカ株を含めたグローバルな視点でのものの見方をしている点も、勉強になりました。
興味がある方は、ぜひ本書を手に取って読んでみてください。