本日は、高橋 伸典さん著作 三笠書房知的生き方文庫出版「定年後自分らしく働く41の方法」を紹介します。
高橋さんは、34年間製薬会社で、営業、人事、社員教育を担当後、57歳で再就職。
その後独立し、研修講師として定年活動、セカンドキャリアのサポートを行い、5000人の受講者の行動変容につなげてきたそうです。
私は例によって、井上新八さんのXでのご紹介を通じて、本の購入に至り、読み進めるうちに、シニアのキャリア/生き方について、様々な事例を踏まえ、きわめて、網羅的に書いていると感心し、紹介させていただいた次第です。https://x.com/shimpachi/status/1823104342939013571?s=12&t=fgK1alCEi2OBd0de2ThLeA
はじめに 定年後は「人生を楽しむ」ために働く!
1章 「定年後に輝く人たち」の成功例に学ぶ
2章 自分らしい「幸せな働き方」を考えてみよう
3章 そもそも「あなたに合う仕事」って何?
4章 「客ら棚卸&発見シート」で本当の適職が見つかる
5章 「働く不安」が「希望」に変わる考え方
6章 定年後は、この「マインドチェンジ」が武器になる
7章 セカンドキャリアをさらに充実させるために
①定年後の働き方を「疑似体験」してみよう
この本では、まず定年後の働き方の事例、人が実際に体験し、体を張ってマナ案出来た「生きた知恵」をコンパクトにまとめたものとして、8つの事例紹介をしています。
どれを読んでも少し信じがたい異業種への方向転換を紹介しています故、興味があれば本書を手に取って読んでみてください。
1.製薬会社の営業、マーケテイング、人事
→給食の「調理員」へ(学生時代のアルバイト経験)
2.新聞記者
→地元商工会議所開催「創業塾」
→行政書士/家庭裁判所の調整委員
3.信託銀行 資産運用
→仏教の勉強
→寺での人生相談/資産運用の記事投稿
4.マーケテイング会社 社長秘書
→公務員
5.大手製薬会社 営業、採用職担当
→保育園運営会社 人事担当、業務委託 再雇用支援
6. 大手百貨店 人材ビジネス
→胃がん
→グリーフケア(様々な不幸に打ちひしがれた方々に寄り添う)
7.大手銀行 海外勤務
→NPO法人「ワールドランナーズジャパン」、「一般財団法人」日本山岳スポーツ協会
8.大手自動車メーカー 人事 役職定年者兼業制度創設
→兼業先での経営改善対応
②自分らしい「幸せな働き方」を考えてみよう
この章では、幾つもの働き方の事例を示しています。
その事例についても詳しく解説されていますが、取り急ぎこの書評ではタイトルのみ列挙します。
1.再雇用‐「自分の強み」を活かして、活躍する
今までの仕事で培ってきたスキル・経験を如何に自分の商売道具にしていくかを考える
2.業務委託契約‐会社にいながら「リスクなし」に独立する
「個人事業主」として個人で独立することで、厚生年金を受け取りながら、契約金額を受け取り、勤務時間や場所が自由になるといったメリットがある
3.再就職①‐先輩のツテを頼り、例えば関連会社に勤める
4.再就職②‐まったく違う業界にチャレンジするー自治体/人材派遣会社の活用
5.公務員への道‐本当の意味での年齢制限枠がない官公庁への募集枠に応募する
6.小さな独立‐「自分の好きなこと」を仕事にする(例 飲食や人に教える)
オンライン副業でプチ独立を準備、経験する-
商品を売る、オンラインで教える、相談する、動画、資料、画像制作の代行、知識を売る など
7.社会貢献‐「世のため、人のため」に働いてみる
8.農業を始める
上記の事例とともに、それに関わる様々な行政団体、企業を紹介しながら、説明しています。
気になる方はぜひ本のほうをご覧ください。
③そもそも「あなたに合う仕事」って何?
定年後の仕事を選ぶ基準は、若いうち多くの人が「給与」を基準にしていたのに対して、より自分らしい働き方ができる基準が望ましい。
その選び方に次の3要素を満たしているかを著者は問いかけます。
①好き、②出来る、③役立つを基準に考える。
まず仕事を選ぶ際に、規模の大小ではなく、「好きな仕事か」「楽しいと思えるか」を自分に問いかける。
つまり「好きな仕事でないと続かない」からなんだそうです。
なお、好きには、二つ考え方があり、
1.仕事の進め方・プロセスを自分の好きなやり方で行う。
2.仕事に意味づけして人に喜んでもらう仕事に変換できる。
ということだそうです。
更にはその仕事はできますか?
言い換えると、自分の強みを自覚し、その強みが人からお願いされるレベルのものかどうかを考えてみる。
最後にその仕事は人の役に立つか。
シニアは孤独がリスクになるため、人の役に立つことをすることは人としての温もりが生まれるので望ましく、人や社会の役に立っているかを視野に入れると良いそうです。
④その仕事は「自分の価値観」に合っている?
リクルートワークス研究所の「シニアの就労実態調査」によると、日本人が働く価値観は以下の6つに纏められるそうです。
「他者への貢献」「生活との調和」「仕事からの体験」「能力の発揮」「体を動かすこと」「高い収入と栄誉」
また、例えば今55歳だとして少し先の将来、たとえば75歳に「どんな自分になっていたいか」を考えてみる。
「たくさんの子供や孫に囲まれて笑っている自分でいたい」とすれば、価値観は「家庭を大切にする」
「充分な貯えがあり余裕のある生活をして、子供たちにも財産を譲れる自分でいたい」なら「お金持ちになる」
「多くの人を喜ばせることができる自分になりたい」なら「人に優しくする」
と言える。
まずどんな自分でいたいか「What to Be」を考えてみると良いそうです。
価値観が「人を大切にする」なら、人を育成する仕事や人に教える仕事、または介護など。
「お金持ちになる」なら、お金が稼げる仕事。
「自由な時間を大切にする」なら自分のペースで進められるフリーランスのような仕事。
一方で、60歳以降は、自分の時間が増えることが非常に大切で、長い間のサラリーマン生活で多くの時間を会社にとられ、やりたいことも我慢してきたという思いをかかえている人が多い中、本当にやりたかったことに力を注いでいいのではないか。
例えばある方は、大手IT企業で働いてきたが、60歳の定年を前に早期退職され、昔から興味を持っていた日本の歴史や文化に関わる活動をはじめ、それも古代から大陸との交流が深い九州北部でやってみたいという思いがあった。
偶然ネットで福岡県久留米市の東京事務所があることを見つけ、地域活動起こしとしてセカンドキャリアがスタート。
神社の神事伝統行事をはじめとする多くの歴史文化を知るうち、その魅力を多くの人にアピールしていこうというモチベーションが高まったそうです。
様々なところを訊ね、様々な人と話すことで、「隠れていた歴史」に出会い、地域の方とのつながりもでき、都会に住んでいては絶対体験できない高揚感を覚えるようになった。
自分の好きなことを、自分のペースで仕事をすることで、新しい出来事や出会いが起こってくる。
これが大切だといいます。
⑤キャリア棚卸&発見シートで本当の適職が見つかる
自分の強みを知り、その強みを活用することができれば、50代以降の「セカンドキャリア」がより自分らしく、充実したものになる。
では、その強みとは一般的に知識、スキルをイメージする人が多いですが、仕事のみならずご自身の趣味やプライベート上での知識やスキルもその人が持っている強みと言えること。
更に性格上の強み。
人脈が広いなどの人との交際力があることも強みになる。
更にその人が長年培ってきた仕事上の知識、スキル、経験が宝だといいます。
そのために、
ステップ1 これまでの経験を振り返る、
ステップ2 強みを棚卸する、
ステップ3 自分に合った仕事を考える
といった手順となります。
例えば、「営業の販売計画を達成した」ことが上手くいったことだった場合、
①あきらめないで、最後まで顧客訪問した、
②お客様の話をしっかり聴き取ってからそのニーズに合った利点を説明した。
③顧客の世代に関するニーズ把握のためにデータベースを活用して分析した。
これをキーワードに変換すると、「行動力がある」「忍耐力がある」「傾聴力がある」「ITリテラシーが高い」「分析力がある」といえる。
大切なのは自分の経験から引き出すことなんだそうです。
なお、著者は、
1.対人関係における強み(会話力、傾聴力、アドバイス力、主張力、紹介力、ファシリテート、共感力、パーソナリテイ力、競争心、社交性)、
2.物事に取り組むときの強み(慎重、思慮深い、好奇心、行動力、理想を追求、自主性、責任感、メンターシップ、考える力、自己受容)、
3.課題解決における強み(課題発見力、課題解決力、未来予想力、アンラーン力、目標設定力、計画性、目標達成力、分析力、論理的思考力)
に分類しています。
この中から5-8つ自分があてはまるものに絞ってみます。
また、小さな強みを沢山持つ。
そしてその一つ一つの強みを掛け合わせる。
まず9マスの真ん中にテーマとなる「自分の強み」を書き、残りの8つのマスに自分の強みを埋めていく。
例えば、①採用業務に精通している。②英語が堪能。③プレゼンテーション力がある、④人を育てるのが得意、⑤デジタルツールを駆使できる、⑥文章作成力がある、⑦介護経験がある、⑧旅行の知識が豊富とします。
次に「強みを活かした仕事」と書き、残りの8つのマスを埋めていく。
その際に、
①×②×⑥=中小企業における外国人労働者の受け入れ、
①×③×⑤=採用ホームぺ―ジで使用する動画の企画、撮影など。
このようにして8つを埋めると、できる仕事を継続的に考えられるようになるそうです。
⑥あなたの強みを活かせる仕事とは?
また、強みを大きな枠組みに分けて、それに合った仕事を考えるのも有効なんだそうです。
以下著者がまとめた区分を羅列します。詳しくは本書を読むとさらに事例含めてよく理解できます。
1.資格の強みを活かす
⇒社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、行政書士、キャリアコンサルタント、不動産鑑定士など
2.人に教える強みを活かす
⇒セミナー講師、研修講師、顧問、コンサルタント、オンライン講師など
3.顧客対応の強みを活かす
⇒コンビニ定員、飲食店店員、カフェ経営、家電量販店販売員、コールセンター
4.コミュニケーションの強みを発揮する
⇒営業業務、講師、キャリアコンサルタント、カウンセラー、サロン経営
5.自宅にてオンライン操作の強みを発揮する
⇒オンライン代行業、スキルシェア、セミナー開催、マニュアル販売
6.時間を選べる強みを活かす
⇒アルバイト全般、マクドナルド等ファストフード店員
7.物を作る強みを活かす
⇒オンラインフリマでの販売
8.問題解決スキルの強みを活かす
⇒コンサルタント、顧問、スポットコンサルなど
9.人に寄り添う強みを活かす
⇒カウンセラー、キャリアコンサルタント、介護士、保育士
10.デジタル操作の強みを活かす
⇒映像編集、写真アルバム編集など
11.趣味を活かす
⇒記念写真撮影、プロフィール写真撮影、音楽楽器指導
⑦あなたの強みを「さらに強化する」法
自分が得意とする分野をより広く深く探求する専門家、加えてどれだけ自分の考えを持っているかでオリジナリテイが出てくる。この強みを深める方法を著者は挙げています。
そのためには、
1.情報収集する
2.専門家の意見を聞く
3.体験する
4.人に意見を聞き触発される
5.質問に答える
さらに、他人はその人の強みを客観的に見ることができるため、自分の強みを積極的に聞いてみると良いそうです。
また、「ターゲットを変える」だけで、競合がいないところを選び、自分の強みを発揮するという考え方もあります。
⑧自分の所感‐アイデア、事例の詰まった本
思わず、自分自身には様々な可能性があるのではないかと妄想してしまう思考を広げられる素晴らしい本でした。
やはり沢山の事例を聞き、キャリアコンサルタントとして行動変容を促してきただけあります。
この本は、定年前にこれからの人生を検討されている方は、一度お読みになることをお勧めします。