本日は、確定拠出年金アナリストの大江加代さん著作「新NISAとiDoCoで資産倍増」を紹介します。
大江さんご夫妻は、夫の英樹さんも、物書きで、主に金融系の本を中心に40冊以上も書かれており、両者共に金融関連の本を書かれていることが、なかなかない形だと思います。
この本の著者、加代さんは大手証券会社に22年勤務し、2015年に確定拠出年金教育協会の理事にもなり、今回のNISAの大幅拡充の際には、「資産所得倍増分科会」の構成委員として関わったそうです。
目次
Chapter1 老後資金づくりにおけるNISA、iDeCoの役割
Chapter2 始める前に知っておくべきこと NISA編
Chapter3 始める前に知っておくべきこと iDeCo編
Chapter4 投資信託+株で資産を積み上げる
Chapter5 世代別のNISA&iDeCo活用法
Chapter6 こんな時どうする?Q&A
①NISA,iDeCoが出来た理由とは?
NISAは、少額で投資をする人に対して税制優遇という便宜を与えることで、投資を通じて資産形成をする人を増やしていくのが目的だそうです。
一方のiDeCoは、国の年金制度を補完するための私的年金制度の一つとなり、企業が運営する「企業年金」が勤めていた会社から退職後に年金として公的年金に上乗せする形で支給されるのに対して、この企業年金がある恵まれた会社はごくわずかであることから、老後の生活を支えるための年金を自分の力で準備する制度という建付けだそうです。
従い、年金という老後の為の資産作りをする制度だからこそ、所得控除というメリットがあるのだそうです。
また、NISAについては、日本の個人資産における投信比率が少なく、資産増加の伸びが鈍いので、株式や投資信託に投資することのみに税金がゼロという理屈だそうです。
更にNISA,iDeCoは、公的年金を補完する意味で非常にメリットの大きいもの、実はそれ以上に大きな意味として「個人のライフプランや生き方の選択肢を広げる」という効用があることを大江さんは指摘しています。
未だに定年が60歳という会社が多いため、60歳までは働くという人が殆どですが、その後の生き方や働き方は実に様々です。
60歳で完全にリタイアする人、65歳まで再雇用で働き、年金を受給し始める人、起業などして65歳以降も働き70歳から年金受給を始める人。
つまり働くことと年金受給の時期には多様なバリエーションがあると言います。
その際、できるだけ早いうち(40-50台からでも)からNISA,iDeCoを使って資産形成を進めておけば、一定の金融資産を準備でき、老後の選択肢を広げることができる。
これが誰にでも当てはまる2つの制度を使う最大のメリットだと大江さんは言います。
②老後資金づくりにおけるNISA、iDeCoの役割
老後の不安を解消するためには、まず何よりも実態を「見える化」することが大事だそうです。
自分の場合は、どうなるかを明らかにしておくことが、安心老後の第一ステップで、この作業は本来なら、60歳までの準備期間が十分に取れる40代のうちに行うのが理想だそうです。
尚、老後の支出は、平均的に現役時代の7掛けだそうですから、まず自分の現在のお金の「出」を把握するところから始めると良いそうです。
次に、その必要額を賄う原資となる「入り」の方の確認。
リタイア後に働かなくても入ってくるお金としては、➀公的年金、②会社の退職金や企業年金、③自分が保有する金融資産からの資産所得だそうです。
このようにして、現在の支出から老後の支出のおおよそを割り出した上で、自分自身の退職後の収入を計算し、足りない分があるようなら今から投資や貯蓄で準備をするという手順になるそうです。
会社員や公務員の場合は、労働収入も老後生活を支える柱の一つになること。
一方、最も頼りになるのは公的年金となり、会社員の場合は厚生年金に加入しているので、金額も多く、物価変動で終身支給のため、最大の柱になるそうです。
更に、企業年金制度がある会社は、企業型確定拠出年金若しくは確定給付企業年金の2種類を貰えます。
そして最後の柱となるのが、iDoCoだそうです。
ちなみに、NISAは老後資金づくりを目的にした制度ではなく、必要に応じて変幻自在に活躍してくれる助っ人だそうです。
仮に企業年金がない会社に勤めているのなら、iDoCoはたくさん積み立てておく必要がある。
一方、公務員や企業年金がとても手厚い会社に勤めている人は公平性の観点から低く抑えられているそうです。
特に自営業、フリーランスの場合、毎月の掛け金の上限は6万8千円と会社員・公務員の3-5倍になっているそうです。
③NISAという制度がなぜ生まれたのか
昔は銀行や郵便局に預貯金をした場合に、元本300万円までは利息に税金がかからない「マル優(少額貯蓄非課税制度)」というものがあったそうです。
同制度が始まったのは1963年。
日本が高度成長の時代に入るころ、まとまった資金を基幹産業に回して企業を発展させることが個人の所得をあげていくためにも不可欠だったそうです。
このマル優の正式名称が「少額貯蓄非課税制度」であるのに対して、NISAは「少額投資非課税制度」なので、文字通り貯蓄奨励ではなく、投資奨励策といえるそうです。
この投資奨励策を必要とする背景としては、2000兆円もの豊富な金融資産を持つ個人の資金が十分に活用されていないため、投資を促進する施策が取られたのは良く知られているそうですが、英国で、1999年に国民の貯蓄率の向上を目的とした資産形成の税制優遇制度であるISAが始まったのをきっかけに、日本版ISAを作ることが2009年から検討され始めたそうです。
英国のISAは開始当初から非課税期間は当初10年という期限があったそうですが、この制度が広く国民に普及し、特に低所得者層や若年層に関しても普及していることから、制度自体が完全に恒久化されることになったそうです。
日本では、NISAスタート時は非課税期間が5年、またジュニアNISA,つみたてNISAの誕生といった経緯を踏まえて、今回、利用期間も非課税期間も恒久化された新しいNISAの誕生となったそうです。
貯蓄優遇策から投資優遇策へ変化してきた歴史は、国の成長戦略として投資という直接金融の仕組みが欠かせないと考えているからだそうです。
つまり、成長が期待される企業や未来に必要とされる産業に直接的に多くの資金を流し、経済の活性化を図るとともに、それを応援した個人の資産も増える。
そういう社会をつくっていくのが目標だそうです。
③2024年NISA大幅リニューアル
2024年から、これまで存在していた「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」のうち、ジュニアNISAが廃止され、一般NISA、つみたてNISAが一つの新NISAとして統合。
同じNISAの中で「成長投資枠」「つみたて投資枠」の二つの枠が設けられ、どちらの枠も使えるそうです。
更に新規投資期間も非課税で利用できる期間も定めがなくなり、無制限となったことで、真の長期投資による資産形成が可能になったそうです。
また、年間の投資可能額が成長枠で240万円、つみたてNISAは120万円。
新NISA合計で360万円の投資が可能となるそうです。
更に非課税保有期間の恒久化に加え、非課税保有限度額が取得金額ベースで1800万円。
成長投資枠として1200万円が上限となったこと。
非課税保有限度額の範囲内であれば、資産を売却した分はその取得価格相当の枠が復活して再利用が可能になるそうです。
尚、NISAの目的は、中長期の資産形成であるため、揃えている商品は、例えば信託期間が20年未満の投資信託は対象外など、日本で個人が購入可能な投資信託のうち4%程度に厳選しているそうです。
④NISAを利用した方がいい人、しない方がいい人
NISAを利用した方がいい人は、投資を通じて時間をかけて資産形成を考えている人すべてだそうです。
一方で、利益が出た場合のみ、税金が得となるため、NISAを利用して損した場合、利益がでていないために運用益非課税メリットを受けられず、「ただ損しただけ」という状態になる。
投資初心者は、負けない運用を実践することを本書では勧めています。
一方、株式の短期売買を中心に投資する人は、NISAを利用メリットがなく、且つ課税口座での損益通算も使えないことから、これまで通りのやり方が理にかなっているそうです。
普通の人が投資を通じて資産形成をする際に、大事なのは、投資して利益を上げるには、「時間が掛かる」そして「将来は常に不確実である」という大前提を正しく理解し、そのリスクを許容するだけの覚悟を持つことが肝要だといいます。
⑤iDeCoに加入できるのはいつからいつまで?
iDeCoに加入する要件は、国民年金被保険者、つまり国民年金の保険料を払っていることだそうです。
国民年金保険料の納付は働き方によって、会社員や公務員は給与や賞与から厚生年金保険料の中に含まれて天引き。
第3号被保険者(専業主婦や主夫)の人は、国民年金保険料を収めている者として扱われるのでiDeCoに加入可能。
自営業やフリーランスも国民年金保険料を自ら収める必要があるそうです。
国民年金保険料の納付は原則は20歳以上60歳未満なので、会社員や公務員の場合、60歳以上でも引き続き給与やボーナスから厚生年金保険が天引きされる場合は、65歳までiDeCoに加入して積み立てを続けられるそうです。
また、iDeCoでの積み立ては月額5000円以上、上限が最少1万2千円から最大6万8千円までと幅があるそうです。
尚、iDeCoでも公務員及びDBのある会社員は、2024年末に限度月額1万2千円から原則月額2万円に引き上げられるそうです。
一方、充実した金額(5万円超)を会社で積み立ててもらっている会社員はiDeCoでの積み立てができなくなるそうです。
また、iDeCoには、積立額の全額を「所得控除」することができるので、課税所得が下がって所得税や住民税が軽減されるそうです。保険に関しては、年間最大4万円分、住民税は同2万8000円分しか所得から控除できない一方、iDeCoは年間12万円積み立てたとすればその12万円全てが控除可能なため、所得税や住民税の負担軽減効果は大きくなるそうです。
現役時代の暮らしに無理のない金額で、なるべく早いうちから時間をしっかりかけて老後資金を準備する器がiDeCoだと国が位置づけているそうです。
尚、iDeCoは原則60歳以降75歳までの間で積み立てを終了した後に受取始めることが可能だそうで、一括受取、若しくは年金として最短5年、最長20年から選べるそうです。
尚、一時金として一括で受け取る場合には、加入年数に応じた退職所得控除を差し引いた金額の2分の1が分離課税の対象となる事。
年金として受け取る場合は、年齢と所得に応じた公的年金等控除を差し引いた金額が総合課税の対象となるそうで、年金形式の方が税負担が小さくなる制度となっているそうです。
尚、会社員が40歳でiDeCoに加入。
65歳までの25年加入、毎月2万3000円を積み立てて年率4%で運用ができたとすると、65歳時点での資産残高は約1182万円。
それを5年間で受け取ると、年額236万4000円、月額にすると約19万7000円となるそうです。
一方で、65歳以上の高齢者無職世帯の消費支出は約23万7000円だそうで、iDeCo年金を受取ながら、公的年金を5年間繰り下げることが十分に視野に入るそうです。
5年繰り下げれば、65歳でもらうはずだった金額の1.42倍ペースとなるそうで、公的年金と受取タイミングをずらすことで、課税額を減らせるそうです。
⑥投資信託+株で資産を積み上げる
投資で一番やってはいけないことは、「自分が投資している先のことを知らないこと」だとウオーレンバフェットの有名な言葉があるそうですが、投資信託の積み立てであっても、その投資対象である株式や債券などの基本的な性質は最低限理解しておくべきだといいます。
更に、短期で売ると、大きな上昇の流れを取り逃がすことになる。
投資信託や株式でお金を投じた企業が行っている事業も、短期的に結果が出るものも中にはあるとは思いますが、多くは色々な紆余曲折を経て世の中に商品やサービスとして出され、沢山の人や企業に知ってもらい、必要とされ、感謝されるものであれば、大きな売上となり、時間を掛けて企業収益という結果に結び付く。
そして今後も利益を生み続けると見込まれる会社には、資金が集まって株価が高くなるそうです。
そうした大きな上昇な流れから短期で降りてしまうと、次に来る相場上昇、株価上昇のチャンスを幾つか捨てることになります。
また、過去数十年のデータを検証してみると、10,20年といった期間に定額積み立てをした場合、どの年から投資を始めても殆どのケースがプラスだそうです。
ただ、10年間の積み立てでは、積み立て終了の時期がリーマンショック、もしくは3年間は元本割れでしたし、その資産残高が元本割れのまま売らずに、マーケットが暴落から少し回復するまで1年または数年待てる余裕が投資には必要だそうです。
⑦所感-国の施策に乗ろう!
NISAの存在は多少知っていましたし、私は現在長期での個別株式投資を行い始めたので、今回の成長投資枠を使いたいと思っています。
一方、iDeCoの存在は、あまり知りませんでしたし、積み立て投資の対象となる投資信託は更に詳しくありません。
しかし、今回の制度導入の意図はよくわかりましたし、日本が投資を通じて豊かになることができることは凄くいいことだと思いました。
皆さんも長期投資の銘柄選びから始めるとよい気がします。
課題はやはり長期投資に資する株式投資銘柄もしくは投資信託を見つけられるか。
先日から株式投資をしている人達と対話しましたが、ご自身が関わってきた人生で見つけたやり方で、投資をしており、誰一人私と同じ考え方で投資をしていませんでした。
ただ、私が勧める方法は結果を出している人を見つけて、その考え方に納得出来るまで確認し、思い切って投資をする。
例えば、米国長期株式投資であれば、エルさんの本なども参考になりますし、他にも参考になる方はいます。
私は、過去の営業キャッシュフロー、その背景を類推し、参入障壁を築いた企業を推奨する柳下 裕紀さんの個別株式を紹介するセミナーを受けるのが、自分の投資銘柄を決めるのに、手っ取り早いと思っています。
何れにせよ投資を国が推奨する時代になっており、その流れになって、しっかり自分で勉強して稼ぐ時代だと感じました。
個別株投資からでも投資信託からでも是非始めてみてください。