本日は、検体検査市場における血球計数検査機器世界シェア5割超のSysmexを紹介します。この会社も、柳下由紀さんに紹介いただいた企業です。
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以下2024年度決算

私自身は、先日横浜で開催されたTICAD-9にて、Sysmexがアフリカ市場を意識して、展示しているのを初めて見てみました。
アフリカでは、フランス企業から買収したブルキナファソの拠点が一番の収益頭だそうです。
Sysmexが出来たのは、1968年。
非常用業務放送設備で有名な兵庫県に本社のある東亜特殊電機株式会社(現TOA)が医用電子機器業界へ進出方針を決定し、当時血球計測装置に関して特許を持っていたアメリカ企業のライセンスを得ようとしたのが、失敗。
TOAの持っていた拡声器技術(声を電気信号に変換して微弱な信号を増幅する)を応用し、日本初の血球計測装置の実用化に成功。
その後メンテナンスや営業体制を整え、1980年代には日本でシェア70%を握るようになったそうです。
また、1980年代には、アメリカ、ヨーロッパに進出。
1990年代に、東南アジア、インド、ブラジルへ進出。
2000年代に、中国、台湾、アフリカ、そして欧米各国に次々と拠点を立上。
2010年代には、ドイツParteⅽ、Inostic、米国Labcorp、理研ジェネシスなどを買収していきます。
まず、Sysmexのビジネスの中で、最もシェアが高いのは、ヘマトロジー 血液検査分野となります。
この分野に加え、尿検査機器、血液凝固検査機器も世界シェアNO.1だそうです。


また、特徴的なのは、検査機器販売のみならず、試薬、サービスを合わせたワンストップでのサービスを提供するため、単なる機器売りではなく、ストック型ビジネスがグローバルで出来ていることが大きな点です。

また、以下の売上高を見てわかる通り、アメリカ、ヨーロッパ、中国など、グローバルな主要国をしっかり押さえています。

では、このSysmexが営む事業領域、検体検査市場ですが、柳下さんによると予防、診断、治療に関わる機器は5-60万品目に及び、市場は大きいが細分化されたマーケットなんだそうです。
つまり医薬品同様研究開発がキャッシュフロー創出の肝である一方、医療機器は用途も形状も機能も全く異なり、別領域同士で技術シナジーが見出しにくい分野だそうで、従って、事業領域を得意領域に絞り込む企業が多く、ニッチトップが効きやすいのだそうです。
Sysmexは、その中でも検体検査領域にて、予防、診断、治療のの全てに於いて必須な分野で事業を営んでいるそうです。

また、グローバルな生産体制(機器生産拠点9、試薬生産拠点14)、研究開発拠点24拠点、そして直販による販売拠点(63拠点 190か国)を整備しており、今は特にインド、中東、そしてアフリカに向けた活動を強化しています。


なお、以下のレポートは2025年のものですが、短期、中期、長期目標が網羅され、Sysmexが何を求めていくかを明確に打ち出しているまとまった資料でした。
改めて、柳下さんの分析によると、Sysmexが獲得したフランチャイズバリュー(参入障壁の高さ-何故血液検査分野でグローバルニッチ企業となり、企業価値(利益)を高め続けられるか)は以下なんだそうです。
①創業当初、検査機器の販売がメインであり、従来検査機器メーカーと試薬メーカーは分かれていたものを、検査結果を保証することが大事と考え、専門試薬の生産と販売を早い段階で始めたこと。
そして、機器の精度管理のサポート体制を充実化させ、ビッグデータ活用、ネットワーク化を念頭に機器製造+サポート体制を築いたこと
②全世界の機器ネットワーク化と遠隔管理によるサポート体制の構築。
2000年には、海外約25000台、日本約12000台をつなぎ、装置の分析精度管理、稼働状況のモニター、故障予知などの緻密な顧客サポート体制を築き、2時間以内にエンジニアが駆けつける体制を作ったこと、
この競争優位な体制をヘマトロジー分野で確立済であるとともに、中期計画では、
①既存分野の強化
血液検査の自動化による検査時間短縮など。
但し、アルツハイマー病検査試薬(脳内アミロイドβの蓄積状況を、微量な血液から調べる試薬)から免疫検査分野への大きな拡大を狙っているようです。

また、血液凝固分野においては、Simensとの地域ごとの販売協定を見直し、機器、試薬ともに直販体制にて、売上を伸ばす戦略をとっているそうです。

②新興国市場での拡大
新興国、特にインド、中東、アフリカを念頭に拠点の拡充を図っているようです。特にインドは一大市場になると見越して、生産拠点の拡大、そして一部機器生産もインド国内での生産体制を確立し始めたようです。



③新規事業の拡大
Sysmexの新規事業の定義は、ある程度見通しが経ったものを新規事業という括りで出しているように見えます。

特にこういったロボットについては、機器販売だけでなく、その後のサービス、消耗品で儲けるビジネスが収益面では非常に大事になってくると思いますが、既に売上のうち、40%超がアフターサービスとなっているそうです。

2025年度は製造販売を担う株式会社メディカロイドも黒字化への転嫁を見込み、安定的に収益を生み出すフェーズへと移行していくようです。
足元の株価は、この数年間何故か低調。

柳下さんの説明では、この数年間のROICの低下が株価にも影響しているとのことでしたが、会社側も以下の数字を15%まで上げるべく各部門、地域と対話し、不採算事業、一部研究開発の取りやめなどを進めているそうです。

上記も踏まえ、2033年に売上1兆円、営業利益2000億円を掲げるSysmex,面白いと思いませんか。
私は、会社の掲げる目標が非常に明確に開示されており、投資してみたくなりました。


